「はぁ…日向かっこいい…」
ITOKANのテーブル席にて頬づえをつきながら頬を染め呟く麗依にダン、テッツ、チハルの通称DTCは理解できないと首をふった。
「毎回思うんやけど、あの日向のどこがええんかさっぱりわからん。」
「俺もっす」
「あの日向ですよ…どこがいいんすかね…」
麗依の言う日向といえばSWORD地区の一角を担う達磨に一家の頭―日向紀久のこと。MUGEN時代からの因縁が日向と山王連合会総長―コブラこと緋野盾平にはある。日向が出所してからおこしたSWORD狩りを含む騒動は山王連合会解散で幕を閉じた(結局元に戻ったが)。コンテナ街の一見から比較的落ち着いた関係にはなってはいるがMUGEN時代からコブラと付き合いがあった麗依はもちろんその因縁を知っているはず。
「……なんで、よりにもよって日向なんすかね」
「いくら落ち着いているとはいえあの日向や、山王である麗依を受け入れるわけないわなぁ」
コブラはともかく日向の憎しみは強い(とDTCは思っている)。いくら何でも山王の人間である麗依とは相容れないだろう。麗依が山王からぬければその未来もあるかもしれないが麗依は自他共に認める山王大好き、コブラ大好き人間だ。そんなことはあり得ない。よって麗依の思いは報われない。
「麗依さん……」
「……よし、ここは俺に任せとけ」
「え、何する気なんすか?」
「いいから見とけ、この男の中の男をな!」
自信満々に麗依のもとに近づくダンにテッツとチハルは嫌な予感しかしない。近づいてきたダンに気づいた麗依は何?と首を傾げた。
「麗依……日向はな達磨一家や」
「……いや、知ってるけど」
「そしてお前は山王や」
「そうだね」
「どうやったって無理に決まっとる。だからな他のやつにしとけ、それなら望みはある」
「他?」
「つまりな……諦めて俺にしとけ」
キリッと顔を決めたダンの言葉にITOKAN内で冷たい風が吹いた。一拍おいて何言ってんだこの人!?と驚くテッツとチハル。そんなこと言ったら怒るに決まってる!っと麗依を見て固まった。
「………」
怒ってはいない、怒ってはいないが何言ってんだこいつ、と冷たい目でダンを見ていた。ただ怒るよりよっぽど心に刺さる。
「………」
「………」
「………」
「………すいませんでした」
冷たい目に耐えきれずとぼとぼ戻ってきたダンにテッツとチハルは何と声をかければいいのかわからなかった。正直いえば全部自業自得ではあるがこのままは余りに可哀想でもある。
「あんな、あんな目せぇへんでもええやん…」
「今回はダンさんが悪いですって…」
「自業自得っすよ、コレあげますから元気出してください」
「俺はガキか!……くれ」
チハルとテッツがダンを慰めているとトントンとダンの方が叩かれた。振り向くとそこには先ほど言葉はなく、目だけで語った麗依が呆れた顔をして立っていた。
「麗依…」
「あのね、日向は日向、ダンはダンで、どうやったって自分は自分でしかない。誰かの代わりなんて誰もなれないの。だからねダンが日向の代わりなんて無理。これはどっちが良いとかの問題じゃなくてもっと根本的な問題。私は私で貴方は貴方、誰も自分にはなれないし自分は誰にもなれない。だからね、日向の代わりなんて間違ってる。」
わかった?と呆れながらも笑みを浮かべた麗依に感極まったダンは抱きついた。聞いていたチハルとテッツにも心に響くものがあったのか麗依に尊敬の眼差しを送っていた。
結局、根本的な日向を諦めさせるという問題の解決にはなってないことには誰も気づかなかった。
→