コンテナ街の一件から度々連絡を取り合うようになったSWORDトップ達。ITOKANで定例会議というなの雑談会が行われていたそんなある日のこと。

本来なら主催者側であるコブラが遅刻してしまい、ITOKANには各トップとヤマト、店長であるナオミ、そして麗依がいた。

「…あのさ日向」
「あ?」

カウンター席でスマホ片手に唸っていた麗依は意を決して、ソファに踏ん反り返って座る日向におそるおそる声をかけた。

「あの、あのさ…」
「あ?なんだ」
「その…ID教えてください!」
「教えるわけねぇだろ」

バッサリと切り捨てた日向にですよねーと麗依は席に戻った。

え、いまの何?IDってなんの?
…メッセージアプリのIDのことじゃないか?
あれか……というか日向よくわかったな、俺はわからなかった

突然のやり取りに日向を除く3人が目で会話をし、どういうことか納得してから約5秒。

「………いや、日向ちゃんなんで断んの?というか麗依ちゃん日向ちゃんのID知らなかったの?まじで?」
「何回聞いても教えてくんないの…盾ちゃんも教えてくれないし」

項垂れてため息を吐く麗依に何回も聞いてんのかと驚く村山、スモーキー、ロッキー。ナオミとヤマトはいつものことかと全く気にしてない。どれだけ断られ続けているのか…。少なくともIDと聞いてすぐわかるレベルには聞いているんだろう。

「日向、それくらい教えてやればいいだろう」
「何があろうと女泣かせんなら俺が許さねぇ」
「はっ、てめぇらには関係ねぇだろうが」
「えー、IDぐらいいいじゃん減るもんじゃないし。麗依ちゃんかわいそー」

麗依の味方をする三人の目を受けながらも日向は態度を変えることはない。そして村山ははっと気づく。別に日向ちゃん本人じゃなくても俺が教えれば良くない?うん、それならいいよね、と麗依に声をかけようとしたそのときぶわりと殺気が向けられた。恐る恐る殺気の方向を見るとそこには1匹の狂犬。

「………そんなにか」

教えれば殺すと言わんばかりの殺気にスモーキーとロッキーは呆れた。何が理由でそこまで教えたくないのか彼らにはさっぱりわからない。ロッキーがカウンターの向こう側にいるナオミを見るがその目は仕方がない諦めろと語っていた。

「教える必要なんざねぇんだよ」
「えー、世間話とかするじゃん?」
「意味ねぇだろ」
「そんなことないとは思うが…」
「連絡するほどのこともねえ」
「そういうことじゃねぇよ…」

教える気が全くない日向にロッキーは何言っても無駄か、と諦めかけあることに気づいた。俺たちはIDを交換した。だからコブラは確実に日向のIDを知っているはす、なのにコブラは教えてくれないと言っていた。あのコブラが教えないなんてことがあるのか。かと言って麗依が嘘を言っているとも思えない。あのコブラが教えないのには何か理由があるんじゃないか。

「悪い遅れた」
「コブラちゃんおそーい!」
「悪かったって言ってんだろ」
「盾ちゃんおつかれ〜」

コブラが来たことで思考は一旦中断。この問題はロッキーの頭のなかに仕舞われた。





気だるげな態度はそのままに狂犬が小さく吐き捨てるように呟いた言葉は無名街を守る守護神にはしっかりと聞こえていた。

「………人は見かけによらないな」
「どうしたのスモちゃん?」
「いやなんでもない」