小さく口を開くと軽くちゅっとキスをされてから、ぬるりと魈さんの薄い舌が入ってきて私の舌を絡めとられる。舌を愛撫するように、お互いの舌のざらつきを擦り合わせたり魈さんに舌先を軽く吸われたりして心臓がどんどん熱くなってくる。いくら優しくてゆっくり目のペースとは言えディープキス、息が上がって苦しくなってきたので魈さんの肩に置いていた手を離して魈さんに苦しいですの合図を送ろうとするも、思ったより興奮しているのか魈さんに手を握られて動けなくなる。
まずい、このままだと流されてえっちなことしちゃわないかな。辞めないといけないのに、魈さんの唾液に混ざった仙気が流れ込んできてふわふわし始めてしまう。
「ん、……ッぅ、♡ふぁ……♡」
「……ん、」
「っぷぁ……! はぁ〜っ、いき、くるし」
「悪い……大丈夫か?」
「はぃ……大丈夫です、ちょっと、ふわふわしてるだけです……」
ゆっくり離れた唇を互いの唾液が繋いでぷつりと切れる。肩で息をする私の背中を魈さんが控えめにさすってくれて大分落ち着いてきた。いつもならこのまま首筋にキスされたりするが、今日はしっかり決まりを守ってくれている。キス以上のことは我慢してくれるみたいだ。
私が言い出したこんな決まりなんて魈さんの機嫌一つでどうにでもなるのに、私に合わせてくれているのがひしひしと伝わってきてほんとうに魈さんは優しい。あまり話すのが得意な人ではないから、言葉にしてくれる事は滅多にないけれどこうして行動一つ一つに証明されるようで長い時間を共にしてきたけど未だにきゅんとする。
うぅ〜〜さっきのでちょっと仙気を貰ってしまったのもある、魈さんの事で頭がいっぱいになってきた……。これあと三日も我慢できるのかな……。言い出したのは私なんだからちゃんと最後まで我慢しないととは思っているけどあんまり自信がない。魈さんにまた背中を軽く押されて、魈さんの首筋に倒れ込む。そのまま無言で頭を優しい手つきで撫でられて、抑えようと頑張ってる気持ちの蓋を取り上げられる感覚に陥る。……ずるい……。
「うぅ〜〜、……魈さん好き……です」
「………」
「私が言い出したので、ちゃんと最終日まで我慢しますけど……魈さんがかっこよすぎて出来ないかも………」
「我と結びを強めたいんだろう」
「はい……頑張って我慢します」
「……これは契約でも責務でもない、お前の好きにすればいい。我は付き合ってやるだけだ」
「なんでそんなに優しいこと言っちゃうんですか〜! 甘やかさないでください!」
魈さんは私に甘すぎですよ! と顔を上げれば、表情一つ変えずに「そうか?」と言われた。そうですよ。少しむっとしていると手を繋がれて湯船に沈められた。さっきからずっと密着してるからか、体温の低い魈さんの体もじんわり温かくなってきてる気がする。
確か本には最低一時間抱き合う、とあったけど今どれぐらい時間が経ったんだろう。これだけ湯船に浸かってもお湯は冷たくならないし、露天風呂で星空が見えるのにほんのり暖かい。洞天ってすごいなあ。魈さんに身を預けながらぼんやり星空を眺めていると体を抱え直されて静かに唇が降ってくる。
触れるだけのキスを角度を変えて何度かしてから、そっと唇が離れて鈍く光る金色の瞳と目があう。じいっと魈さんに見つめられて目が逸らせない。魈さんの緑がかった黒髪の毛先から雫がぽとりと落ちて私の肌を濡らした。色っぽいなぁ。きゅっと小さく生唾を飲み込んでいると、魈さんの私より大きい手が頬に添えられて親指でゆっくりさっきまでキスしていた唇をなぞられる。
「のぼせていないか?」
「だ、いじょうぶです……」
魈さんの顔がすごく近い。ち、ちか……。魈さんが喋ると息が掛かるぐらい近い。魈さんの目が伏せられて、あ、キスされると思うと同時に閉じた唇を魈さんの薄い舌でべろりと舐められて擽ったくて少し開いてしまった唇の隙間からぬるりと舌に侵入される。魈さんの舌が先程よりも柔らかくてよく絡む。
舌を掬われて二人で夢中になって絡め合わせて、魈さんの唾液がたっぷり送られてきて口の端から溢れる。飲み込みたいのに魈さんとキスしたままではうまく飲み込めず、勿体無いのと息が上がるのとで思わず声を上げてしまうとそれをきっかけに舌が解放されて、最後にちゅっと小さく音を立ててキスされて唇が離された。
「はっ……ん、ぅ」
「あまり長湯すると冷える。お前の呼吸が整ったら出るぞ」
「ぁ……はい、すみません」
「いや……我も調子に乗りすぎた、悪い」
「そ、そんなことないです! ……私は、嬉しかったです。魈さんにたくさんキスされるの」
今は仙気でふわふわしてるだけなので、と念を押すと少し考えてから「お前はいつまで経っても仙気の供給に慣れないな」と言われた。えっこれ慣れとかあるの?
不思議そうな顔をしていたんだろう、魈さんを見上げているとじいっと顔を見られた後に流れるようにちゅぅと唇に吸い付かれてから「通常であれば、」と話し始めた。私なんで今キスされたんだろう……。嬉しいからいいけど、全然。
「お前が我の仙気に馴染んだように、仙気の供給にも慣れがある。……お前の中で何が起こっているのかは知らないが直に慣れるときが来る」
「そうなんだ……でも魈さんに仙気をもらうと、毎回頭ふわふわして背中がぞくぞくして……あと、魈さんの事で頭がいっぱいになります」
「……俗世から離れた人間は、もう元には戻れない。思考を供給した者に侵されるのはその場に繋ぎ止めておく必要があるからだ」
そ、そうなんですね……。お前のそれは普通だと言われてほっとした気持ちと、私の魈さんに対する気持ちを少し否定されたような気持ちで複雑。んんん、仙気を供給されなくても魈さんの事大好きですけど……! いやでも仙気供給をこまめにしてくれてるってことは魈さんは私のことちゃんと考えてくれてるということ……では……。
そう思うとなんだかすごく恥ずかしくなってきた。照れる。一人でむっとしたり恥ずかしくなったり百面相をしていると、膝の裏と腰に魈さんの逞しい腕が回って何事かと思っている間にそのまま持ち上げられる。ばしゃばしゃとお湯が音を立てて湯船に戻っていく。
「えっ、と、」
「出るぞ」
「じ、自分で歩けます‼」
「……そうか」
そうか。と言いながら全然下ろしてくれる気配が無い。結局そのまま脱衣所まで連れて行かれたし、漸く下ろしてくれたと思ったら身体までしっかり拭かれた。されっぱなしも悪いし、背中を流せなかった悔いがあるのを思い出したので魈さんの身体を拭かせてもらったが散々キスされたお陰で変に意識してしまって手際が悪くなってしまった……。