◇二日目
夜、魈さんとベッドの上で抱き合ってから少し。
昨日も同じことをしたわけだが慣れるはずもなく、心臓のドキドキが魈さんに伝わりそうで緊張する。向かい合って魈さんの膝の上に乗せられて、じっと見つめられてはキスされるのを先程から繰り返している。昨日に続けて仙気が少しだけ流れ込んできて、まだ今日の分の時間は始まったばかりだというのにもう息が上がる。
魈さんはそんな私の呼吸が落ち着くまで必ず待ってくれる。本当に優しい。はーっと深呼吸して呼吸を落ち着けている私の手を魈さんにきゅっと握られて、なんだろう? と思いながら顔を上げると鋭い金色の瞳と目が合った。
「……お前はまた熱心に書物を読み漁っているな」
「はい……えっと、魈さんの事を色々知りたくて」
「………」
「え、えと……魈さんはあんまり自分の事を聞かれたり話したりするのが好きじゃないのかなぁって……思ったので、せめて記録だけでも知りたくて」
「……そうか」
「そうです……あ、そういえばこの間璃月港の書店に魈さんの伝説を集めた本を買いに行ったら、魈さんについて詳しい人と会って少しお話ししました。とても話すのが上手な人で、魈さんの事をよく知っているようでした」
お知り合いとか、ですか? と言い終わる前に握られた手に少し力が入った気がした。どうしたんだろう、とじっと魈さんの綺麗な顔を見ていると、魈さんは少し考えてから「さあな」と目を合わせて答えてくれた。わ、かっこいい。顔を見ていたのは私だがこんなにしっかり見つめ合うとは思っていなくてびっくりして目を逸らしてしまった。
咄嗟に逸らしたもののどこを見ていいか分からず先程から魈さんに握られている片手に視線を落とす。私が見ているのを知ってか、握っていた手の力を緩めてするりと親指で私の手の甲を撫でてゆっくりと私の指の間に魈さんの節くれだった指が入ってきて恋人繋ぎにされる。魈さん、いつの間に手袋外したんだろう。いつもしている筈の手袋は今日は無く、男の人にしては綺麗な手が惜しげもなく晒されていた。なんとなく目が離せなくなって、お互いの手がぴったりくっつくまで瞬きも忘れて魅入ってしまった。
手を繋いでいるだけなのに、そんなにゆっくり見せつけるみたいにされるとドキドキしてしまう。ぴた、と魈さんの手と私の手がゆっくりくっつくと反射で少しだけびくっと身体が震えてしまった。ばくばくと心臓の音が体中にこだましてうるさい。手を繋がれただけなのに、こんなに顔が熱い。
「……触れてもいいか、」
「ぁ……む、胸とかだけなら、だいじょうぶ、です」
「分かった」
今絶対顔赤いのに、魈さんに話しかけられてつい癖で顔を上げてしまった。繋いでない方の手で熱くなった私の頬を撫でられて流れるようにキスされる。ちゅっと音を立てて何度も唇に吸いつかれて、酸素を欲して口を開けた隙に魈さんの舌が口内に入り込んできて思わず声が出る。息が苦しくて、繋いでいた手に自然と力が入っていたのかぎゅぅっと握り返されながら舌を抜かれて少しだけ唇が離れた。うっ、顔が近い。キスしていたのを本当に少し離しただけの距離でじっと止まられて、私が上がった息を整えるのを待たれているみたいだ。
こ、こんなに近いと深呼吸もまともに出来ないんだけど……。まだうるさい心臓を落ち着けたいところだが、魈さんが近すぎて緊張して息を吸っているのか吐いているのかもよく分からない。なんとか呼吸を落ち着けているとそっと口付けられ繋いでいた手をゆっくり離された。名残惜しいのかすりすりと指先を撫でられる感覚に身を震わせていると、寝間着の裾から先程まで私の頬を撫でていた魈さんの手が入ってきて腰の辺りを感触を確かめるようにじわりと撫でられる。
そのまま下の方へ行きそうな手つきだったのでまだだめですよ、と声を上げたかったのだが触れるだけのキスをされていてくぐもった声しか出ない。魈さんの腕に手を乗せると腰を撫でるのをやめて背中を伝ってやんわり胸を触られる。魈さんに胸を触られるのが久しぶりで、まだ軽く撫でられただけなのに身体が反応してしまう。
「んぅ、」
「……ん……、」
「ぷぁ……しょ、ぅさんッ」
「苦しかったか? 悪い」
「あっ♡ ち、ちがっ……ンっ」
やっと唇が解放されたかと思ったのも束の間、親指の腹でまだ寝ている乳首をすりすりと撫でられると嫌でもたってきてしまう。うぅ、魈さんの指に当たる感覚がどんどん固くなってきてすごく恥ずかしい。その間にも魈さんは顎や耳元、首筋に唇を落としてきて欲を煽られる。
こんなの声でちゃうよ……! 布が擦れる音と魈さんの吐息に私の声が混じって完全に雰囲気が出来上がりかけている。まだ二日目なんだから、我慢しないと……。