◇三日目
夕方、自室で例の異国の本に目を通す。確か今日から性器を触っても良くなるはず……あった、私の記憶通りだ。うんうん、挿れたらダメなのはわかってる、わかってるけど。昨日以上のことをしていいとなると、余計我慢するのが大変だろう。うううう頑張れ私! 今日と明日を乗り切れば明後日の夜には魈さんと物理的にも精神的にも繋がれるんだから……!
魈さんは我慢なんて朝飯前だろうけど、優しすぎるから私が欲しいと言うと二つ返事でなんでもしてくれそう。だから私がちゃんと理性を保たないとこの決まりは守られない。とはいえ今日なんて朝起きたら魈さんにじっと顔を見られていて瞼を開けた瞬間魈さんのあの澄んだ鋭い金色の瞳と見つめ合ってしまったし、洞天から出て璃月の民を陰ながら守りにいく魈さんを見送るときもいつもはされないのに腰を抱かれてキスされて早くもなけなしの理性を煽られてしまった。
これは魈さんに試されているんだろうか……。でも今日は三日目の折り返し地点、ここまでくれば我慢し切るしかない。がんばれ私‼ と自分を鼓舞して本を閉じたところで、音もなく部屋の引き戸が空いた。
「戻ったぞ」
「お、おかえりなさい!」
びっくりした……。咄嗟に返事が出来たからよかったけど、もう少しで悲鳴を上げそうだった。いつもは私の部屋まで来ることなんてそうそう無いのに、どうしたんだろう。前に女の人の部屋に入るのは気が引けると言っていたのに。もしかして魈さんのただいまを聞き逃しちゃったかな。そうだったら申し訳ない事をしてしまった。
お腹空いてますか? とご飯でも作ろうかと魈さんに再び目を向けると、左手に大量の清心の花を抱えているのが目に入った。
「どうしたんですか? 清心の花そんなに……」
「削月達からだ。祝いだと」
「祝い? 魈さんなにかいい事でもあったんですか?」
「……気にするな」
何か嫌なことでも思い出したかのようにはぁ〜っと大きなため息を吐く魈さん。どうしたんだろう? たまに仙人達で集まったりしてるみたいだけど、そこで何かあったのかな。「お前、日持ちする様に生けてくれ」と言われて大量の清心の花を渡される。癖のない澄んだ爽やかな匂いがぶわりと香った。気持ちがすーっと落ち着く匂いだ。
良く見てみると少しではあるが瑠璃百合も混ざっていて清心の白に瑠璃百合の淡い青がよく映える。さすが仙人……センスがいい。瑠璃百合と清心の組み合わせは、個人的に思い入れがあるのでなんだか少し嬉しい。
とりあえず茎を切って水に晒そうと自室を出る。隣を歩く魈さんに、どこに飾りますか? と聞くと少し悩んだ後に「お前に任せる」と言われた。うーん、どこがいいかな。