◇四日目
昼過ぎ、自室にて。………結局あれからムラムラが治ることは無く、一睡も出来ないまま夜を明かしてしまった。魈さんは布団に入っている間ずっと抱きしめて背中をたまにとんとん優しく叩いてくれてたけど、触れられると意識してしまうし魈さんの匂いや呼吸音を身体が拾ってしまって心臓がドキドキしっぱなしだった。
折角気を遣ってくれたのにうまく眠れなくて本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだ……。人間の寿命の倍ぐらいを生きてきたのにこんな事は初めてで、どうしようと思う反面これを作り上げた異国の人々に関心する。どうしてこんな事を思いついたんだろう。眠れない程相手のことを意識してしまうって相当凄いことだと思う。ま、まあ、ただ欲求を抑えられない私がはしたないだけかもしれないけど……。
書籍でも読めば眠くなるかなと自室で読みかけの本を開いてみたが全く頭に入ってこない。えーと、これは隣国モンドの貴族と平民の女の子の恋愛小説かな……うん、……だめだ、全然集中できない。万文集舎にお勧めされたから買ってみたけど、今読むべきじゃないな。
ぱらぱらとページを捲って眺めていると物語の終盤、主人公たちのキスシーンが目に入る。触れるだけのなんて事ない、恋愛ものによくあるキスの描写だけど、欲を持て余している私に着火するには十分すぎた。
き、きす。今朝、眠れていない私に魈さんはお前は寝ていろと言ってくれたが我儘を言っていつものように洞天から出て行く彼を見送らせてもらった。その時にされたキスの唇の感触と、腰に回された逞しい腕やふわりと香る魈さんの匂いをしっかりと思い出してしまって顔が熱くなる。ぱたりと本を閉じて自分の唇に触れてはぁーっと深呼吸。ううう、やっと引きそうだった熱が完全に呼び覚まされてしまった。
魈さんとキス、したいしその先も……。でもまだ魈さんが帰ってくるまで暫く時間があるし、始める前からこんなに出来上がってたら引かれちゃうかも。それに下着が愛液で染み付いて気持ち悪いから出来れば先にお風呂にしておきたい。……どうせお風呂に入るなら、一回だけ自分でしてもいいかな……だめかな……。異国の本には自慰禁止なんて書いてなかったから、一回だけなら許してもらいたい……。
ほぼ無意識で服の中に手を入れて下着に触れると、部屋に水音が響いて誰もいないのに恥ずかしくなった。
「はっ♡ぁ、……ッんぅ〜〜♡」
自分で指先をそこに沈めて、入り口辺りを出し入れするだけで今まで我慢させられていたそこは私の細い指でも精一杯締め付けてそれだけでかなり気持ち良い。ゆらゆら揺れる腰に気付かない振りをして、愛液を絡めた指を引き抜いてぷっくり膨れたクリトリスを撫でつける。昨日、魈さんにされたみたいにゆっくり……♡ぁ、これ力抜けちゃう。
魈さんに触られる感覚を思い出して触れるだけで、とろとろと愛液が溢れてきて音を立てる。
「……ッ♡しょ、ぅさん……♡ぁ♡」
ぬるぬるになったクリを指で挟んで扱けば、自分の意思とは関係なく身体に力が入って絶頂が近くなる。もうすぐイけそう、視界がチカチカしてきたところでナカに指を入れて自分の指でも届く弱いところをぐっと押せば一瞬ふわっとして白む思考。ナカがびくつくのを感じながら、乱れた呼吸を整える。イッちゃった……けど、魈さんの太くて長い指でされたらもっと気持ちいいのにな。キスされながら、手を握ってされるとどう頑張っても抵抗出来ないのを思い知らされてもっと濡れちゃうのにな。クリと弱いところを攻め立ててやっとイけたのに、魈さんのが欲しくなってしまってたまらない。
自分の指じゃ届かない私の一番奥を魈さんの熱で叩きつけられる快楽に比べたら……。
思考が熱に浮かされたように、魈さんで暴かれることばかりを考えてしまう。今ここで欲しくなってもなんの解決にもならないのに。分かっているはずだけど、熱にぼーっと浮かされた身体は目の前の快楽を欲しがって両手をひくつく膣の入り口に伸ばす。下着を下ろしてそこがよく見えるようにかぱりと脚を開いた。
「魈さんの、どれぐらい大きかったっけ……」
疼く子宮に応えるように、自分の入り口に浅く指を掛けてぐいーっとゆっくり広げる。広がった入り口から空気が少し入り込んできて膣内を撫でるのが気持ち良い。とろとろ溢れる愛液を気にせず、締めようとひくつくナカを無視して魈さんに挿れられた時のことを思い出す。
うーん、充てがわれたり繋がってるところをまじまじと見たことが無いからよくわからない。
しかも私は魈さんしか知らないから基準も何もない。体感的には熱くて硬くておっきいのがお腹を掻き乱してくる感じだけど、具体的にどれぐらいと言われると悩む。
まあ、多分このぐらい、かな? ぐっと入り口を広げて明日にはこれがはいってくるんだと考えると子宮と心臓がきゅんきゅんする。はしたなく脚を広げて自分の入り口に指を掛けて広げ、ここに魈さんの熱いのが……♡と考えるだけでナカから涎が垂れてくる。
はやくはやくと待ち侘びる膣がひくつくのを感じて、あぁこのまま突っ込まれたら挿れられただけで間違いなくイッちゃうだろうなと考える。
我慢できなくなってこれが終わったらお風呂入るから、と自分に言い聞かせてナカに指を這わせる。求めている魈さんのに比べたら長さも太さも足りないけれど、それでも無いよりはましだ。
「うぅ、……魈さんの、ほし……♡」
「今日までの辛抱だろう」
「はぃ、……え?」
反射で返事をしてしまったが、声のした方を恐る恐る見やるとそこにはしっかりばっちり魈さんがいた。な、なんで、どうして。まだお昼過ぎのはずじゃ、……ぱちりとゆっくり瞬きをしている魈さんの後ろは夕焼けに染まっていていつの間にか時間が過ぎていた事がわかる。あ、待ってこれがっつり見られた……。一息置いて状況が頭に追いついてくる。サァーッと熱が引いてどうしようどうしようと考え始める。
「えっ、と、……ご、ごめんなさい……」
「いや……せめて扉は閉めろ、もし我でなければどうなっていたことか」
「おっしゃる通りです……」
「……洞府の気が乱れていた、お前に何かあったと思って戻っただけだ。大事ないか?」
「だいじょうぶです」
指をそっと引き抜いたはずなのにくちゅりと水音が響いてしまって気まずい。さっと乱れた衣服を直したけれど、その間じっと魈さんに見られていて心臓がうるさい。こんな事してた私が悪いけど、出来れば目を逸らしてくれると嬉しいところだった……。
「入っていいか」
「ど、どうぞ」
目の前に座った魈さんが、私が先程膣から引き抜いた手をそっと握って口元に持っていったかと思うとそのままぱくりと口に含まれる。え、? と驚いて魈さんの顔を見るとばちりと合った目が熱くて息が詰まる。手首をぎゅぅと握られて、まだ少し指先に残っていた愛液を口内で舌に絡め取られる。魈さんの薄い舌が指にまとわり付く度に肩が跳ねる。う、さっきの一人でしてたのがバレた時に完全に冷めたと思った熱を呼び覚まされる感覚……。
汗かいてるからお風呂に入りたいのに、魈さんを拒むには理由が足りない。いや、どんな理由があっても魈さんだったら拒めない気がする。もしかしてこれこのままするのかな……、求められると拒めないとは分かっていてもお風呂には入りたい。だって臭いとか思われたら辛いもん。指先をぢゅっと吸われて、名残惜しそうに舌が離れて口内から指が解放される。指先と爪の間にちゅっとキスされると魈さんは満足したのか、手首を掴んでいた手とするりと繋がれて魈さんの膝の上に落ち着く。
「魈さん、あ、の……私、お風呂に……」
「……そうか」
そうかと言いながら全く手を離してくれる気配が無い。何をするわけでもなくただ座って魈さんにじいっと無言で眺められる。この間なんなんだ……。魈さん? と名前を呼んで様子を伺うも返事には至ってくれないみたい。……も、もしかして一人でしてたの引かれてるかな。ここへ来て嫌われた、とか? そうだったらどうしよう。
一度悪い方に振れるとどんどんそう思えてきて冷や汗が出て来る。魈さんに嫌われたら私、何処へ行けばいいんだろう……。洞天から出て、……それで、私の事を知っている人なんて誰も居ないから……えっと……。魈さんに嫌われた時の事を考えたらすごく怖くなってきた。死ぬ? 消える? どうやってこの世から居なくなればいいんだろう。人と同じようにあの世へ行けるのかな、
「人間と我らは違う、死んでも灰一つ残らないぞ」
「そうなんですか……というかなんで、」
「お前が考えている事など顔を見れば分かる」
「じゃ、じゃあやっぱり私のこと……」
「………お前はもう少し自分に自信を持て」
「えっと……」
それはつまり、そんなに嫌ってないってこと? はぁ〜っとため息を吐いて「人間の特性だと思っていたが、お前自身の問題だったか」と呆れ顔で魈さんに言われる。な、なんで私がちょっと怒られてるみたいになってるんだ。嫌われてないのは分かったけど、さっきまでの雰囲気がぶち壊しだ。まあ、……私のせいなんだけど。魈さんが珍しく元気付けようとしてくれたお陰で、怖くて悲しい気持ちに支配されていた心が晴れた。自分でもちょろいとは思う。
単純すぎるかも知れないけど、好きな人に自分に自信を持って! と言われたら誰でも元気になっちゃうと思う。雰囲気はちょっと怒られてるけど、魈さんは大体いつもこんな感じだ。なんだかんだこちらに気を遣って言葉を選んでくれる。本当に、どこまで行っても優しい。
「もし、魈さんに嫌われた時は何処へ行けばいいですかね?」
「……さあな」
「行く宛がどこにも無いので、出来ればずっと一緒に居てほしいです」
「フン」
「へへ、魈さんも一緒にお風呂入りますか?」
心がぽかぽかして小っ恥ずかしい事でもへらへら口に出してしまった気がするけど、魈さんに握られた手にきゅっと力が入ったのが嬉しくて返事がない事なんて気にならない。魈さ〜ん、お風呂はいりましょ〜と酔っ払いのようなテンションで絡むと「わかった」と返事をされて座っていた体勢から抱え上げられる。どうやらこのままお風呂場まで連行されるようだ。座ったところから事前動作無しで私を抱えて立てるって体幹すごいな。
脱衣所で下ろされた瞬間に、寝間着と変えの下着を持ってくるのを忘れたことを魈さんに話すと「お前が次に服を着られるのは寝る前だろうな」とサラッと予告をされながら浴室に押し込まれてごくりと生唾を飲んだ。