4部:承太郎
よく晴れた空の下、再び杜王町の駅前。
前から歩いてくる二人の少年に、思わず緊張する。
『仗助くん、億泰くん!』
数日前、私はこの二人に不審者扱いを受け、警察の元へお世話になった。
しかし被害者がいないこと、動機がなく犯罪的不審な行動もしていないことを理由に釈放された。
「妄言女」としてのレッテルは貼られたがとにかく舞い戻ってこられたのだ。
「おー、この前の…」
「おい、またオメーかよ!?」
仗助と億泰は私を敵対視していないものの、関わりたく無いオーラ全開でストーカー妄言女の私へ不審な視線を送る。
前回はあまりにも突拍子のないことばかりゴタクを並べたのがよくなかったと反省した。
すこし事実を交え、信憑性を高めた方が良さそうだ。
ただし「露伴先生」にピンときていなかった仗助を見るに、ここはジョジョ4部序盤のようだ。
『この前はごめんないさい、ちょっと気が動転していて。』
わざとらしく、しおらしげに俯きながら言葉にすると二人は怪訝な顔をした。
さて、億泰と仗助が二人揃っているってことは、「二人が戦って仲間になった後」だ、これは確実。
しかし露伴戦の前というとだいぶ限られてくる。
康一くんが居ないのが気になるが、音石明あたりから徐々に前へ刻むのが良いだろうか。
『どう切り出せば良いか分からなくて、色々しゃべってしまったんですけど、
二人には、ちゃんと本当のことを話そうと思って。』
神妙な顔で語り出す私に「なにか事情がありそうだ」と察してくれた二人は怪しみつつも私の話を聞こうとしてくれている。
ほら、ヤンキーだけど二人の根は優しい!ファンはちゃーんと見抜いているんですからね!
『……音石明ってご存じですか?』
一か八かでその名を口にしてみる。
二人は聞き馴染みのない名前に顔を見合わせている。
「ジョセフさんは今、いらっしゃいますか?」
こちらもやはりピンとはきていないようだった。
それならもう少し前か、などと考えているとふいに頭上から低い声が降ってきた。
「……今、ジョセフと言ったな」
反射的に振り向くと、帽子を深くかぶり鋭い眼差しで私を見下ろす長身の男が立っていた。
『……!』
「あ、承太郎さん」
承太郎…!!空条承太郎の存在をすっかり忘れていた!
聞き覚えのない名前についてハテナを浮かべる仗助と億泰を余所に
承太郎は私の目をしっかり捉え、「なぜその名を知っている」と詰め寄る。
「お前、音石明の仲間か? それともジジイの隠し子か…。」
『えっ!?』
予想もしていなかった承太郎の言葉に心臓が飛び退く。
こんな複雑でややこしい勘違いをされてはこのあとの展開に支障が出る。
ヒジョーにマズイ展開に!
「……仗助、億泰。お前らは帰れ」
「え?でもよ、承太郎さん……」
「心配いらねえ。こいつのことは俺が調べる」
二人は少し気まずそうな表情を浮かべながら、去っていく。
待ってくれ、ここで承太郎と二人きりになるのはヤバいぞ!
『あの、じょうたろう…さん?私、用事があるのでここらへんで…』
強行突破で帰ろうとしたものの、上着の襟を力強く握られ行動を阻止される。
もしかして…オラオラ…ですか…
「……場所を移すそう。詳しく聞かせてもらう」
なんだかヤバい空気を感じながら、私は承太郎の泊まるホテルへ連れて行かれた。
レッドホットチリペッパーの正体を掴むためにジョセフを日本へ呼び寄せるのは、
「音石明」戦が始まってからの判断だ。
仗助と億泰がまだ音石明を知らないのならば、承太郎のホテルへ電話がかかってきたあたりだろうか?
(あの電話で名前を名乗っていなかった気はするけど、承太郎の異常な調査で音石の名前を知ったか?)
そんな状況で二人の名を口にしてしまっては怪しまれるのは当然だ。
どちらも今は「承太郎しか知らない」のだから。
高級そうな家具が揃えられたホテルの一室へ連れられ、座らせられる。
テーブルを回り込んだあと正面に立った承太郎は静かに椅子を引き、私を見据えながら着席した。
仗助や億泰とは桁違いの圧倒的威圧感をビリビリと肌で感じながら額を伝った汗が服の袖に消えるのを見届けた。
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「どうやって知った?」
「誰から聞いた?」
「他に誰と繋がっている?」
「お前の目的は何だ?」
あれから尋問は三日三晩続いた。
妄言ストーカー女の称号を手にした私は新たに「ジョセフの愛人・隠し子、または音石明の仲間」としての
なんともややこしいキャラを確立させ、承太郎の監視下で日々を過ごす羽目になった。
1日目で仗助&億泰と友達になれていればこんなに話が拗れることは無かったのに、と
自分の作戦力・実践力・演技力の無さを悔いながら横でタバコを蒸す承太郎を睨みつけた。
こうしてわたしの「転生したらジョジョ4部だった!?仗助&億泰とマブダチになる」は失敗に終わった。
ちゃんちゃん♪
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