類は友をなんとやら


私がこの杜王町にいる期間は毎年、約1ヶ月半。
暑い夏の時期だけだ。

かれこれ5年もこの町へいるが
遊びに出かけたことは一度もない。
行動するのは大抵が夕方から夜で食料を買いに出るか調査に出かけるかのみだった。

だから、こんな日差しの強い時間に、
ましてや男性と二人でお出かけするなんてありえないことだ。

「本当、ありえないわ。」

思わず溢れた独り言に鋭く視線を送ったのは
先ほど知り合ったばかりの奇抜な格好をした若者。

「何がありえないんだい?」

ちょうど1時間前、私は家にいた。
暑くてなんだかやる気も起こらず、ソファで横になっていると窓を叩く音がした。
気だるく起き上がると見慣れない若い男が立っており、
窓を開ければ「杜王町のことを知りたければついてこい」と言い放った。

「なぜこんな暑い中、
 知らない男と仲良くお出かけしなくちゃあいけないのよ。」

「僕は君を知っている。
 西園寺 薔薇子だろう?
 27歳、独身。
 生まれは東京都港区。
 ホラー小説家で毎年夏の間だけ別荘のある杜王町に来て
 小説を書いている。
 ついでに好きな飲み物はチョコレートソースがかかった
 ホイップクリームが乗っているカフェラテだ」

変態…、いやストーカー?

「私の書いているホラー小説とは違ったジャンルの
 恐怖を感じるわね。
 あなた、何者?」

ちろりと顔を伺えば彼は

「僕が君を誘ったのは、
 君がリアリティを重んじる小説家だからさ。
 リアリティこそ、重要なのだ」

質問に対する期待した回答は得られず、
代わりに何だか哲学じみた言葉を放つ。

「さては、あなたも芸術家ね」

「その通り、漫画家さ」

「それで、どこへ向かっているの?」

「まあ、行けばわかるさ」

頑なに教えてくれない行き先のことを考えるのはやめた。

「私のことはなぜ知っているの?」

「仗助から聞いたんだ。
 もっとも、僕はそれ以前から君のことは知っていたがね」

仗助?
といえばこの前バイクを貸してくれた少年のことかしら
それより前から知っていた、ってことはやはりコイツ、ストーカー?

「そうだな、君、
 【振り返ってはいけない小道】は知っているかい?」

「知らないわね。
 …知らないけれど、なんだかとても惹かれるワードだわ」

そうだろう、と言わんばかりの自慢げな表情で
話を続ける彼に耳を傾ける。

まだ暑さも止まぬ8月下旬。
今年の夏は一味違う、そんな予感がした。

類は友を
なんとやら





(そういやあなた、岸辺露伴ね!)
(今頃気付いたのか)
(まさかこんなストーカー気質で奇抜な若者だったなんてね)
(ストーカーは余計だ)




end...




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