平凡で素敵なこれからを

親戚の集まりも終わり、
ふらふらとひとり散歩しているとそわそわしながら
辺りを見回す恰幅の良いおじいちゃんを見つけた。

「う〜〜〜〜む、
 家を出た時は右にまがり、そのあとすぐ左へ…
 いやまっすぐだったかもしれんなあ」

なにやら道に迷っているようだが
いかんせん、語学力の乏しい私は声を掛けるか迷っていた。

「ンン?」

ジロジロ見ていたのが気づかれたのか、
外国人のおじいちゃんは此方に目を向けた。

「あ、はろー…、です」

「おぉ!お嬢さん!
 ちょうどいいところに!」

拙いハローの挨拶に気にも留めず
こちらへズイズイやってくるおじいちゃん。

「君は地元の人かね?」

「え、まあ、はい」

話を聞くとジョセフと名乗ったこのおじいちゃん、
近くの遊水地へ散歩に出たはいいが道が分からなく、
彷徨っていたら余計迷子になってしまったらしい。
(普通に日本語を話してくれて助かった)



暇していた私も一緒に案内がてら遊水地へ行くことにした。

「お嬢さんの着ている服は
【きもの】というんじゃろ?」

「はい!親戚の集まりでしたので。
 これは【振袖】というものなんです」

「着物にも種類があるのだな。
 どういうものなんじゃ?」

「未婚の女性が着るのですよ」

物珍しい着物に興味を示すこのおじいちゃん、
明るくてとても話しやすいのだが
どこかで会ったことがあるような懐かしさを感じる

「だれだっけ…………?」

そうつぶやくと同時に聞こえる声。

「薔薇子じゃあないか?」

振り返るとそこには、同級生の2人が立っていた。

「やあ」

「花京院君!空条君も!」

「こんにちは」と言いかけた私の横から
数歩前に出るおじいちゃん。

「承太郎〜〜!
 お前、何処に行っとったんじゃあ!」

承太郎に指をさしながら悪態をつく。

「お前が勝手に家を出ていくから
 ホリィが探して来いとうるさくて
 わざわざ探しに来てやったんじゃぞ!」

「やれやれ
 日本の正月気分を味わいたいからと言って
 餅を買わせに行かせたのはどこのどいつだ?」

「ン?そんな事言ったか、わし」

「ジジイ…ついにボケやがったか」

「ジョースターさんはいつまで日本に滞在されるのですか?」

「うーむ、まだ決まっておらん。
 【まめまき】という日本の謎の儀式も見てみたくてな…」

「おい、1か月も居る気か、じじい。」

華麗に進む会話にあっけを取られる。

「あの、お知り合い…?」

控えめに質問すると空条君とおじいちゃんは
何故か押し黙り、横から花京院君が答える。

「ジョースターさんと承太郎は親戚だよ。
 承太郎の祖父なんだ」

「えっ!」

「お正月の時期に日本へ来るのは初めてらしいんだ。
 ついでに承太郎へ会いに」

「いやあ〜、
 可愛い我が娘のお願いは無視できんからの」

「…ちっ」

深く帽子をかぶり直す空条君の肩をバシバシ叩くおじいちゃん。
何だかんだ仲が良さそう。

「あれ、でもさっき遊水地へ行くって…?」

「遊水地、ですか?
 ジョースターさん」

「…」

私の言葉を聞きおじいちゃんへ顔を向ける空条君と花京院君。

「着物を着た綺麗なお嬢さんが、
 声を掛けてくれたんでなあ。つい…」

「この…、じじい…」

「ジョースターさん……」

あきれ顔の空条君と何とも言えぬ顔の花京院君。

「まあ、そんなことより!
 早く家に帰るぞい!
 花京院、お前も来い、
 ホリィが料理を作って待っている」

「お邪魔させていただきます」

いつもこんな感じでわいわい賑やかに
おしゃべりしているのかな、とほほえましく思ったとき
前を歩いていたおじいちゃんがくるりと後ろを向いた。

「お嬢さん、君も来なさい!」

にかっと歯を見せ豪快に笑って見せた
おじいちゃんの笑顔が眩しくてきゅんと胸が弾む。

家路につくまで、
先程と変わらず賑やかな会話が繰り広げられていた



(あらぁ、女の子を連れてくるなんて!誰のガールフレンドかしら?)
(ふっふっふ、わしじゃよ)
(えっ)(え!?)(やれやれ)
(なーんちゃって!)

end...