今そんなこと考えてる場合じゃないのに

 朝起きたら目の前に自分がいた、どう見たって自分だ、名前がいる、夢でも見ているようだ
 っていうかきっと夢なのだろうと再び目を閉じようとした時、目の前の私が目を開けた、私は寝よう

「俺がいる……?」

 目の前にいる私が喋った、しかも一人称が俺だった、意味が分からない、やはりこれは夢だと、もう一度目を閉じようとすれば目の前の自分に頬を抓まれる、痛い

「……痛い、だと?」
「やべえ俺がいる、夢? これって夢?」
「……痛いから多分夢じゃない」

 その証拠に頬が痛かった、と続けると目の前の私は、わりぃ、と手を離した
 とりあえず今の状況を確認すべく上体を起こしたのだが体が軽く感じる、胸元についている錘がないような、そんな感じ
 念のために胸元に手を当ててみるが何もない、ただの胸板だった、そりゃそうだ、私は今ベッドで横になっているのだから
 まだ寝ている頭を何とか回転させようとしていると私が起きた、そして私を見て一言

「お前、名前……?」
「そうだけど、」

 そういうお前は誰だ、そう返せば私の姿をした誰かさんが自分の名前を答えた、南雲晴矢、と
 南雲晴矢は私の恋人の名前なのだが、昨日は一緒にベッドでいかがわしいことをしてそのまま寝たのでこのベッドにいるのは私と晴矢だけのはず
 ということは私の体に入っているのが晴矢となり、私は今晴矢の体に入っているということになるはずだ
 念のために脳天に手を這わせてみると晴矢のトレードマークともいえるべきものがあった、チューリップがくしゃりと潰れた

「うおおおおっ!?」
「……私晴矢になったのか」
「お前冷静すぎんだろ! もっと慌てろ!」
「慌てたところで状況は変わらないよ」

 私が冷静に言うと、それもそうかと私の姿をした晴矢も落ち着きを見せだしたのだが、自分たちが全裸であることに気付いたのかふただび慌てふためきだした
 喉が渇いたので水を取りに行こうとベッドを出ると必死な晴矢に止められた、全裸で歩き回るとかいまさらじゃないか
 とりあえず今日が土曜日で良かったということにしよう



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