09
「無理なんだよ! こいつに豪炎寺の代わりなんて!」
僕のワンマンプレーを嫌う染岡くんが苛立ったのか本音を漏らし、その言葉にいち早く反応したのは名前だった
「染岡くん、それは違うよ」
「はあ? 基山は黙ってろ!」
「豪炎寺くんのことは知らないけど彼の代わりなんていない、それと同じように士郎にも代わりはいない、誰にも代わりなんていないのよ……」
僕に背を向けた名前の表情は分からなくて、でも声が震えているから怒っているのではなく泣きそうなんだということだけ分かった
染岡くんはばつが悪そうに小さく謝って、笑みを浮かべた名前が僕に、士郎は士郎だよ、と言ってくれた
思えば、僕はまだ名前の言った言葉の意味を理解していなかったんだ
それから僕に合わせてくれると言ってくれた風丸くん
「だったら、風になればいいんだよ」
「風……?」
「おいで、見せてあげるから」
みんなを校舎裏のゲレンデまで案内して、僕と名前はスノーボードの準備をする
久しぶりだね、と笑う名前に僕も自然と笑顔になった
二人で滑るのは久しぶりで、名前の手を引いて雪山を降りる、頬を滑る風が冷たくて気持ちいい
名前も同じように目をつむって風を感じている、それからゆっくりと開いて僕を見詰める、感覚を取り戻したみたいだ
僕は白恋のみんなに合図を送って雪玉を転がしてもらう、それを手をつないだ状態で避ける僕たち
気持ちいい、今僕は名前と風になっているんだ
「士郎、私たち風になってる」
名前も同じことを考えていたらしく、僕はさらに嬉しくなった
でもそんな僕をあざ笑うように雪玉が激しい音を立ててぶつかり木から雪が落ちてくる、怖い
「っ!」
「士郎!」
握った手に力を込めれば名前が即座に反応してくれて、スノボーをとめて僕を抱き締めてくれる
大丈夫だよ、雪崩じゃない、そんな魔法の言葉が僕を安心させてくれる、名前がいないと僕は何も出来ないんだね
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