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「点を取るんだ、僕が……」
みんなの輪から外れトイレへときた僕は蛇口を捻り顔を洗った、さっきキャプテンに頑張れと肩を叩かれたときに思い出してしまった、あの日の記憶
「ねえねえ、俺のハットトリック、凄かったでしょ!」
吹雪く視界の中、僕たち家族を乗せた車が走っていた、その日もいつものようにサッカーの試合があって、活躍した僕たちを両親が褒めてくれる
本当は名前も一緒に試合の話をしたかったけど勝利のお祝いとかでおじさんたちと一緒にご飯を食べに行くらしく今日はいなかった
「それにしても中止にならなくて良かったわね、三人共大活躍だったじゃない」
「えーっ、兄ちゃんも名前も全然駄目だったよ! ミスったじゃん」
「あれは敦也が邪魔したからろ、FWなのに無理してボールを取りに来てさ、MFの名前も驚いてたもん」
「士郎もアツヤも、勿論名前ちゃんもよくやったよ、失敗のひとつやふたつは誰にでもあるさ」
そんな優しい父さんの言葉に僕たちは笑みをこぼす、それが気に食わなかったのかアツヤは、サッカーは自由に楽しくやれば良いんだ、と顔を背けた
それからはいつもと同じちょっとした言い合いが始まる、いくら点をとってもDFがしっかりしてないと駄目だとか、シュートを決めるのが一番かっこいいとか
今思えばものすごく子供染みたその喧嘩に終止符を打ったのは父さんの何気ない、けれど僕たちにとっては大きな言葉だった
「そうか、士郎が守って名前ちゃんに繋いで敦也がシュートを決める、三人そろえば完璧だな」
「そうか、三人そろえば」
「もっと、強くなる……、もっと強くなって、完璧になる!」
「よぉし! 俺と兄ちゃんと名前で世界一になろうぜ!」
「あぁ、明日名前にも伝えよう!」
ぱん、と手を繋ぎあった、ここから先は思い出したくも無い、轟音と共に雪崩れてくる大量の雪、母さんの悲鳴、そして……
「FWも、DFも、ちゃんとやらなくちゃ」
僕がボールを取って名前につなげて敦也がシュートを打つ、それが最高であり完璧なんだ
感傷に浸っている暇は無い、僕は完璧にならなくちゃいけないんだ、そうすれば名前に悲しい思いをさせなくて済む、ずっとそばにいてあげられるんだ
気合を入れなおしてベンチに戻ればもうすぐ後半が始まるらしくみんな集まっていた
ちらりと名前を見れば視線に気付いたのか目が合いにこりと微笑んだ、僕が完璧になればこの笑顔が崩れることは無いんだ
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