08.隠秘もこれで終わり
人の前で泣くなんていつぶりだろう、名前を抱きしめてひとしきり泣けば誰に許されたかったわけでもないが心が少しだけ軽くなった気がした
呼吸を整え名前にお礼を言い離れれば彼女もまた泣きそうな表情で僕を見詰めていた
やはり初めて見るその表情に僕は名前のことをあまり知らないのだと改めて思い知らされた
エンシャントダークとアンミリテッドシャイニングというチームの選手で作られたチームゼロが天馬たちのチームと戦う日がついに来た
名前はこちら側のベンチで試合を見ているだけといういつもと何一つ変わらぬ状態で、強さこそが全てだということを天馬に証明させる時が来たんだ
ピー、とホイッスルが高らかに鳴り響く
化身同士を合体させたり教官がフィールド選手と交代したり、それに触発された天馬のチームの監督たちがフィールドに入って若くなったりとあの時代では考えられないことばかりだ
僕と白竜の合体した化身と、天馬たちの合体した化身がぶつかったとき天馬が口を開いた
「シュウ! サッカーは人の価値を決めるものじゃない! サッカーは俺たちに元気をくれたり支えてくれる、絶対に楽しいものなんだ!」
天馬のその強い眼差しの中から僕に向かって風が吹き抜けてゆく、その風が僕の心を揺らして、僕の中でゆっくりと広がっていく
僕はサッカーに強さだけを求めていた、強くなければ妹一人すら、好きな女の子一人すら守れないのだと
けれど今天馬たちとフィールドで競い合っている僕の中には強さを求める今までのものとは違う感情が存在していた
天馬たちのシュートが僕らの化身を破りゴールを決めた、サッカーを楽しいと初めて感じられた
ベンチに座っているであろう名前を見やれば彼女は興奮気味に立ち上がっている
名前が何かに興味を示しているところを僕は初めて見た、それほどまでにサッカーを楽しいと感じてくれているのだろう
名前に何かを応援されたことも初めてならばあんなに嬉しそうな表情も初めてだ
「シュウがんばって!」
笑顔とまではいかないがどこか満足げなその表情と声援は僕を奮い立たせるのに十二分に効果があった
試合の結果は同点という教官たちからすれば敗北と同意であるみたいだが、僕の心は満たされていた
天馬の隣に寝転び荒い息を整えていると名前が駆け寄ってきてただ一言、言ってくれた
「シュウ、お疲れさま」
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