09.しらないことをしる
村での競技だったときもシュウたちの練習を見ていたときもサッカーに対して何も感じなかったけれどこの試合だけは違った
ただがむしゃらにサッカーを楽しんでいるシュウがそこにいて、私もサッカーがこんなにも楽しいものだと初めて知った
化身同士がぶつかって、それと同時にお互いの負けたくないという思いもぶつかり合い男の子が少し羨ましいとさえ思えた
結果は同点だったけれど客席で見ていた全ての子達が喜び歓声を上げていた、その中に見知った女の子が一瞬見えた気がするがきっと気のせいではないのだろう
シュウも天馬くんも、もちろん他の子たちも頑張った上での結果だからみんな満足していた
興奮冷めやまぬままシュウの元に駆け寄りお疲れさまと声をかける
うん、と荒い息で短い返事をしたシュウの表情は晴れていて、まだ妹のことも何も無かったあのころのシュウの笑顔だった
「天馬、これがサッカーなんだね、こんなにも、楽しいものだったんだね」
顔を綻ばせるシュウに対して天馬くんも力強く頷いて、シュウにお礼を言った
シュウがおもむろに左手首に巻いていたミサンガを外し、天馬くんに差し出した
「君に、知り合えた証だ」
「いいの?」
ミサンガを受け取った天馬くんがシュウを見詰めればシュウは笑みを浮かべたまま頷いた
「この試合をありがとう天馬、本当にいい試合だった!」
「ああ! いい試合だった!」
天馬くんはミサンガを握り締めるともう片方の手を差し出した、シュウはその手を力強く握りしめた
私とシュウはこの島から出て行くわけには行いかなかったのでチームゼロの子たちやエンシャントダークのみんなと別れなければならなかった、もちろん天馬くんたちとも
「カイ、白竜、それにみんな、色々とありがとう」
シュウに続いて私もお礼を言えばみんなそれぞれお礼や別れの言葉を口にする
きっとこのチームだったからこそ、強さを求めていたシュウを天馬くんに引き合わせたのだろう
「名前も、じゃあね」
「カイ、ありがとう」
そう言えばこの島に戻ってきて初めて会ったのはカイだったなあと彼の手を握って思いだした
それからはカイに何かとお世話になった、私とシュウの面倒を見てくれて本当にありがとう
それから私たちは崖の上から天馬くんたちの乗った船を見送った、船が小さくなくまでずっと
松風天馬という少年と出会ったのは私にとってもシュウにとってもきっと良いことだったのだろう
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