牛乳とチーズがたっぷりと絡まった野菜とパスタで腹を満たし、野菜の旨味がしみこんだスープで身を温める。心身共に満足したカルアたちは話に本腰を入れる。
「……というわけで、私と星は巨大なポケモンから逃げている最中に地球へ落ちた片割れを探すために地球まで来たってわけ」
「双子で仲良しなんてすっごーい」
「この話を聞いて感想はそれ?」
「家族と離れ離れになって不安や悲しみに押し潰されそうなのかなとか。思うことはなくはないけど……だから地球まで降りて探しに来てるんだっつーの、話聞いてれば分かるだろって感じじゃない?」
「確かに」
「にしても、大きくて長くて緑色のポケモンねー。ろとったら出るのかな」
「ろとる……?」
「ロトミィ。宇宙にいるポケモンを教えて」
「……ああ、ロトミィに聞くってことか」
スマホに問いかけるカルアの姿を見て月は言葉の意味を理解する。可愛らしい声で「お任せロト!」と。了承した後に画面に表示されるのは宇宙に住んでいると言われているポケモンの一覧。月は背伸びをしてスマホの画面を覗き込む。
月が述べた特徴に該当するポケモンは見当たらず、2人して首を傾げる。そもそも提示されているポケモンが少ないのだから該当するポケモンがいなくても不思議はない。未知に溢れる宇宙についてだから明らかになっていることが少ないだろう。
「あ、これ私」
「え、どれ。このピッピ?」
「そう、ピッピ。それでこのメテノが星」
「メテノ……え、何そのポケモン。ピッピは知ってるけどメテノは知らないよ」
「あ、ここに書いてある。現在、メテノはアローラ地方のホクラニ岳ってところでしか発見されていないって」
「アローラ地方かあ。行ったことないんだよね」
そりゃ知らないわけだと納得する。分からないポケモンを探すより目の前の2人について知ろうとピッピの詳細ページを開く。
指通りの良い長い桃色の髪にきらきらとした粒子を浮かべる黒い瞳をして可愛いさの塊のような少女。月は愛くるしい姿をして多くのトレーナーを魅了するピッピ。背にはやした小さな翼に月の光を集めると宙を浮かぶようになると言われている希少なポケモン。冷静な性格と可愛い容姿というギャップなんて高校だとえぐいくらい人気が出そうだとカルアは笑う。
「むやみに見せびらかすと泥棒に盗られることがあるんだって。月、自分の種族隠した方がいいんじゃない?」
「出生も種族も隠さないといけないなんて大変だ」
「残念ながらそういう悪いことを考える人間もいるのよ」
地球生まれの人間代表として謝るね、ごめん! と軽いノリで謝罪を口にすれば月に「そこまで偉くなれる人間だとは思えないけど」と。手厳しい返しをされる。冷たい月の態度にカルアは嫌な顔1つせずに確かにーと声をあげてメテノの詳細ページに変える。
ふわふわとした水色の髪に星が浮かぶ白い瞳という特徴的な容姿をした少女。星はナノ粒子が突然変異して生まれたメテノ。7種類の色があるらしく、星は水色のコアをもっているということだろう。画面をスライドしていき、説明を読み込んでいく。ふと、性別不明の文字を見かけて首を傾げる。
「どう見ても女の子だよね」
「ああ、特殊な体質なのよ。あの子は」
「特殊な体質?」
「説明すると少し長くなるんだけど……」
「月ちゃん、見てみて! あれが海のポケモンなんだって!」
「ちょっと星。今、大事な話をしていて」
「ねえねえ、カルアちゃん。次あっちに行きたい!」
壁にもたれて会話をするカルアと月のもとに星が駆け寄ってくる。ぴょこぴょこと小さく飛び跳ねてはしゃぐ星に月は深い溜め息を吐く。はてと首を傾げてみるものの、月の考えてることがよく分からないのはいつものことだからと言って2人の手を引っ張る。