幻想的な空間を作り出す龍宮城を後にした3人。感動の余韻が残っており、星と月は恍惚とした表情を浮かべ足取りが危うい。カルアが声をかけてもぼんやりとした相槌しか返ってこない。これは重症だと判断したカルアは2人をベンチに座らせて一休みをすることにした。されるがままの2人は腰を下ろしてからもぼうっとし続けている。
 宇宙から来たばかりの2人には刺激が強すぎたかな、心ゆくまで余韻に浸らせてあげよう。そう考えてカルアは2人が我に返るまで放置することにした。その間、手持ち無沙汰となるため目に付いた店でソルトアイスを買って舌鼓を打つことにする。

「きれい、だったねぇ」
「地球が青いのは海が多いからって聞いてたけど……海の中はあんな風なんだね」
「はっ、つまり本物の海はもっともーっと綺麗なものがあるってことじゃ!」
「かもね」
「あー、でもカルアちゃんは海に行きたくないから水族館に連れてきたって言ってたし我儘は言えないよね」
「まあ、2人を見つけた後に海に行けばいいんじゃない?私たちよりも先に地球に来てるわけだし、いろいろなこと知ってると思うし」
「それもそうだね!」

 ベンチに座って一休みをし、しばらくしたところで2人はぽつりぽつりと会話始める。
 カルア曰く、水族館は人の手によって作られたもの。あの美しい光景だって海の一部分を切り取っただけにすぎないとのこと。では、本物の海の中はどれだけ美しいものなのか。そして地球には海以外にも美しい自然があるという。2人はまだ見ぬ世界への期待が膨らんでいく。

「それよりもこれからどうする?」
「え、カルアちゃんに付いて行って2人を探すんじゃないの?」
「いや……さすがにそこまで迷惑はかけられないでしょ」
「だけど断片的にしか地球のことを知らない私たちが安全を確保するためにはこれしか方法ないじゃん」
「それはそう、なんだけど……」

 きょとりとした顔で当たり前のように言う星に月は頬を引き攣らせる。なんていう図々しさ。それがなければ地球で生きていくなんてできないのだろうけれどと納得しつつも若干引く思いで一歩分距離を置く。
 その反応が不満を抱いた星は頬を膨らませ、一理あると納得したくなるようなことを言う。それでもさすがにと歯切れの悪い月の様子に星は畳み掛ける。

「私、脱出ポッドに乗ってきたから外殻は無事だけど何の拍子で剥がれるか分からないし、ポケモンバトルはできないよ。コア剥き出しになったら消えちゃうし」
「だから私が」
「ピッピは希少で盗まれちゃうことがあるくらいなんでしょ?」
「……水槽に夢中だと思ってたらちゃんと話を聞いてたのね」

 無邪気に遊び回っているようで抜け目がない。額に手をあてて深いため息を吐く。真剣な表情をしているが瞳は爛々と輝いている星。これは何を言っても意見を曲げるつもりはないのだろう。
 ベンチにもたれ、空を見上げる。地球に降りてきたときの空は白み始め、爽やかな水色に染まっていた。水族館で過ごしているうちに優しいオレンジ色に表情を変えている。星は海に夢中だけれど、私は空の方が面白いなあとぼんやり考える。
月が思考を放棄しようとしていることに気付いた星は「ねーねー」と。月の肩に手を置きゆさゆさと左右に揺する。

「2人の居場所に目星をつけてセイショウ地方を着地地点にしたとはいえ街1つでこーんなに広いんだよ。私たちだけじゃ限界があるよ」
「まあ、それはそうなんだけど」
「それに3人で旅した方が楽しそう!」
「それが本音だね」
「えへへ」


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