「自然災害や人身事故といった大きなものから探し物や迷子ポケモンの保護といった些細なものまで。救いを求められたら手助けをする人たちだよ」
「……なんとなく分かったけど、なんでまたそんなところに?」
「そこなら2人の安全を守ったうえで家族を探してくれるだろうからね」
「え」
カルアから行動を共にすることを提案することに驚いたのか。それとも別の人に託そうとしていることにショックを受けたのか。2人は目を丸めて意味を成さない声を零す。その反応が予想外だったカルアは首を傾げて説明を付け加える。
「さすがにここではいさようならとはしないよ。事情も聞いちゃったし、そこまでは面倒見るよ」
「あ、いや、その」
「わ、私たちはカムグゥ」
「これからどうしようって話をしてたところだからとても助かる。ありがとう」
「そう? ならよかった」
星が声を張り上げようとし、月はすかさず止める。手で口を覆うとしたのだが、勢い余ってべちんっと痛そうな音が鳴る。案の定、星は口元を両手で覆ってしゃがみこむ。身体をぷるぷると震わせ、目に涙を浮かべる。泣くほど痛かったのかと月は慌ててしゃがみこみ、星の口元を確認する。
痛みに堪えながら星は頬に添えられた月の手をがしっと掴む。突然のことに目を丸めていると星は月の手を引っ張り顔を近づける。
「どうしてカルアちゃんと行きたいって言わないの? そうすればわざわざ救助隊に寄る必要もないじゃん」
「星、冷静になって考えてみて。カルアは一人旅を想定してセイショウ地方に訪れたのよ」
「う、うん。夏休みっていうながぁいお休みの間だけ一人旅しようと思ったって言ってたもんね」
「だから一人分を想定した食料とお金しか持ってないと思うの。そこにポケモン2匹分の面倒見る余裕ある?」
「そ、それは……」
「何も考えず水族館に連れてきてもらったけど、良く考えればあれも痛いと思うのよね」
目の前で始められたひそひそ話。内容は聞こえないがカルアに聞かれないようにしていることがあからさまで察しはついて苦笑いを浮かべる。救助隊の拠点に到着すればそういう考えも取り下げたくなるだろう話に割り込むことをせず、話を終えるのを待つことにする。
その間、膝下に並ぶふわふわとした水色の髪とさらさらとした桃色の髪を観察する。星は編み込みが似合いそうだし、月はミニお団子とかかな。地下鉄に乗ったら遊ばせてもらおうとおしゃれが大好きな女子高校生らしいことを考える。
「だから救助隊のところに行くまでの道のりでカルアと仲良くなる」
「……なるほど! 仲良くなって情に訴えるんだね!」
「そっちの方が可能性はありそうでしょう。最終手段として星の泣き落としも使えそうだし」
「えっ、私?! う、うーん……がんばる!」
見切り発車をしたはいいが、どうすべきかと頭を悩ませていたときにタイミング良くやってきた好機。カルアからもうしばらくの間は行動を共にすると確約してくれたのだから逃す手はない。月は小さくガッツポーズをするように握り拳を作る。その話を聞いた星は納得した顔で頷く。
話がまとまったところて2人は頷いて立ち上がる。ヘアアレンジの方法を調べていたカルアはスマホから目を離して「ひそひそ話は終わり?」と。からかうように尋ねる。カルアと仲良くなることにやる気を出した星はふんすと鼻を鳴らす。分かりやすい態度に月はこれは企みがばれるのも時間の問題かもしれないと頬を引き攣らせながらもカルアと向き合う。
「うん、終わった。お言葉に甘えてもうしばらくお世話になります」
「なりまぁす!」
「はい、お世話しまーす」