高校2年生。それは学校に慣れ、友人たちと十分な親睦を深めた頃。将来を考えることはあれど受験はまだ遠い先に感じる時期。大人になってからあの日々が1番楽しかったと感傷に浸る者も多いだろう。青春真っ盛りとはまさにこの年頃のこと。
高校2年生の夏休みほど友人たちと存分に遊ぶのに適した時期はないだろう。……夏休みの友と書いて学生の天敵と読む多量の課題もついてくるが。
「へー。じゃあ皆でホウエン地方まで行って宇宙センターの見学に行ったんだ」
「そーそ。彗が宇宙に興味あるっつーからいっそ皆で旅行がてら見学しようぜって。ほら、もう時期人間の学校は夏休みに入るだろ? 混雑する前に旅行しちまおうって」
「確かに宇宙センターって小学生の人気スポットになりそうだよね。ほら、自由研究とかで」
「じゆーけんきゅー?」
「テーマを1つ決めて調べるの。それをまとめたものを夏休み明けに発表する小学生おなじみの宿題」
「うへえ、ちょーめんどくさそー」
だが、カルアはあえて青春真っ盛りの夏休みに一人旅をすることにした。何しても楽しいと言われる年頃だよ。こんなん運起爆上がりに違いないじゃん。それならいろんな人と縁を結ぶのもありじゃない? とかなんとかそんな軽いノリで。ポケモンコンテストやポケモンバトルで非常に優秀な成績を収めた2人の姉と異なり、ポケモントレーナーですらないカルアが一人で旅をすると言ったときには両親も反対した。が、今時ソロキャンプだって珍しくない。加えて、10歳になったばかりの子どもが冒険に出るような世界だ。いくらポケモンが連れ添ったとしても危険は伴うだろう。だったら高校生にもなる自分が旅に出てもいいじゃない! などなどそれらしい理由を並べて言いくるめた。ちなみに夏休みの友は夏休みに入る前に全て片付け、教室のロッカーに全て置いてきている。登校日に帰るつもりはないので、先に提出しなければいけない読書感想文やらポスターやらを置いたついでだ。
そうして準備を整えたカルアは待ちに待った終業式の日。一学期最後の号令を終えるなり走って帰宅し、制服を脱ぎ散らかして家を飛び出した。大荷物にすれば持ち運びが大変かもしれないが、高校生の懐事情を考えればお金のかかる現地調達は極力控えたいところ。軽量だが機能性豊かで見た目よりも物が入るリュックサックとアウトドアワゴンを持って出航間近の船に乗り込んだ。
「いいじゃない、自由研究。せっかく付き合ってあげたんだから彗もしなさいよ」
「将来の夢って作文にするのでもいいぞ!」
「待ってよ。1人で行こうと計画立ててたらキミたちが勝手についてきたんでしょ」
「払ったの修景じゃない」
「ぐっ」
「金は湯水のように湧くもの」
「貧乏人の俺を煽る台詞やめてくださーい!」
初めて乗る船の探索を開始して1時間経った頃。甲板で楽しげな笑い声をあげている派手な集団と遭遇しま。色彩豊かな髪と瞳に違和感を覚えることなく、整った顔立ちに馴染んでいる。その容姿から彼らが人間ではなくポケモンであることは一目瞭然であった。男の子3人と女の子1人。これが人間であったら何かしら邪推されかねないが、周囲の目は微笑ましい。ポケモンが故なのだろうなあとカルアが遠目に観察していると、視線に気付いた1人が「そこの可愛いこ子はおひとり様?だっあら俺たちと飲もうぜー」と。ナンパの常套句で声をかけてきた。その直後、紅一点に蹴り飛ばされていたが。