「お留守番してる子に語って聞かせてあげればいいじゃない」

 長いまつ毛をくるんとあげ、粒子の大きいラメで瞼を彩った女の子。化粧の仕方も相まって目力がとても強い。この目に見つめられたら隠し事はまずできないだろう。その中心にある黄色の瞳にぽつりと浮かぶ青色の三日月。オシャレに敏感なカルアは真っ先にその瞳に注目し、カラコン? 超可愛い! とはしゃいだ。その勢いに若干押されつつも「生まれつきなの」と。苦笑しながらも教えてくれたので、きっと少しばかり足癖は悪いけれど根はいい子なのだろう。
 白と黒が混ざった髪の色のせいか、それとも風月という名前のせいか。瞳の話題の次に国民的アイドルの風音に似てるねという話題を振ったら心底嫌そうな顔をして同族だからねと返されたので早々に切り上げたのは出会って30分も満たなかっただろう。

「え、何? 留守番の寂しさに拗ねているであろう子のために手伝ってくれるって?さすが風月。先輩の鑑だね」

 海のように濃い青色の髪と瞳をした1番背の高い男の子。桃色のウェリントン型フレームがよく似合っていた。この眼鏡を使う子は知的なイメージがあるし、宇宙センターに興味を持つくらいだからさぞかし賢いのだろうと思った。けれど、彼は良い意味で見た目詐欺である。気取ったインテリ系かと思いきや、友人にいじられる愛されるタイプ。根っからのいじられというわけでもなく、隙あらばこのように反撃をする。聞けば風月とはバイト先が同じで先輩後輩の関係らしい。
 風月の働き方はとても立派で尊敬すると彗は語っていた。その傍らで腹を抱えて笑っている麗月と修景がいたので、この場合の働き方というのは素直な意味ではないのだろうとカルアは察する。そして風月は呆れた顔で彗の鳩尾に肘鉄を入れていた。

「そーいえば! カルアは一人旅つってたけど手持ちのポケモンとかもいないの?」

 明るい薄緑色の髪をポンパドールにし、4人に比べると幼く見える男の子。澄んだ黒の瞳は湖畔を思い出す。麗月という綺麗な名前がよく似合っていた。身なりこそ整っているが、彼は故郷を再興しようと必死な姉を支えようと入ったお金は全て故郷に送るためかなりの貧乏人らしい。なんて健気な子なのだろう。
 カルアの直感が囁く。話題が原因で彗がいじられることが多いが、このグループで1番いじられるのは彼だと。表情がくるくる変わり、不穏な気配を察知すると慌てて別の話題に切り替えようとする気遣い。そして今も別な話題に転換しようとしなにも関わらず、風月が反撃に出て調子に乗ろうとする彗のにやついた頬を引っ張り、彗は更に煽ろうとしていた。一生懸命なのに空回りしてしょんぼりとする様子が可愛らしい。頭を撫で回したくなるし、ホウエン地方に行っても日焼けの痕を残していない白い頬をつつきたい衝動に駆られる。恐らく、そんな麗月の反応も分かっていて2人は言い合いをやめなかったのだろう。カルアに話題を振りながらもあうあうと慌てる様子を見て小さく笑っていた。

「トレーナーじゃなきゃポケセンも使えなくね? それで一人旅って度胸あんなあ」

 細長い尻尾をゆらりゆらりと揺らしてずっと笑顔を浮かべている男の子。今回の旅行を計画した主催者であり、面倒臭いからだのお金がないからだのと嫌がる面々に「よろしい! では俺が全額支払ってやろう!」と。強硬策に出て引きずり出したらしい。この話を聞いたとき、カルアは隠すことなく油性ペンで太々とドン引きしていますと書いたような顔をしていた。その顔に修景以外の3人は声をあげて、これが普通の反応だと修景を叱っていた。
 実家が金持ちが故に金銭感覚が狂いまくった修景。そのせいで高いコミュニケーション能力も暴発しがちらしい。何度目かの風月と彗の言い合いに参戦している様子を眺めていたら「あいつの打たれ強い心とねちっこいしつこさがなきゃ俺たちがつるむことなかったんだ」と。麗月がひっそりと教えてくれた。つまりこのグループの中心点らしい。


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