ロムシティは森の中にある街である。森の中にある湖周辺の木々を伐採し、人間が住みやすいように環境を整える。建物のほとんどは伐採した木材を使用して作られたログハウス。唯一な大型施設であるロムジムだけはほのお技にも耐える必要があり、石造りとなっている。外観はハハコモリが葉を縫った装飾品を纏っている。自然に溶け込んだ街とはまさにこのこと。

「緑! 緑! 緑! 月ちゃん、どこ見ても緑だよ!」
「うん……なんかこう、落ち着かない」
「ミマイシティとそんなに違う?」
「地球は青いからまだ見慣れている感じあったけど、緑色はちょっと……」
「たまぁに見えてたけどほんの少しって感じで、緑がこーんなにいっぱいっていうのは初めてだよ!」

 カルアによって半ば強引にシオンと別れることになったことに星は頬を膨らませて拗ねていた。月はカルアの表情から何かを汲み取り表情に浮かべることはしなかったが、説明を加えてくれてもよいのではないかと不満を抱いていた。しかし、駅の階段を登って地上に出て2人の不満は霧散した。
 豊かな緑は2人にとって新鮮なものだったようで、地上に出るなり目に付いた木に走っていった。山の中に降りてきたのだから改まって驚くことではないのではと首を傾げたカルアだったが、月の「あのときはカルアに目撃された動揺が大きかったから」と。山を堪能する余裕はなかったことを指摘された。

「わわっ。なんか白いもの伝って上から降りてきたよ!」
「顔が2つあるなんて不思議ね」
「それ、どっちかは模様じゃない?むしポケモンは目玉模様でとりポケモンを吃驚させて食べられないようにしているって聞いたことあるよ」

 白い糸を口から吐き出し上の方の枝から降りてきたイトマルに3人は注目する。どちらが顔でどちらが模様なのか。イトマルの種族名すら知らない3人には判別できず、揃って首を傾げる。しばらく見つめているとイトマルは3人分の視線に耐えられずするすると糸を登っていく。葉に隠れるところまで見届け、ロムシティの散策を始める。

「ねえねえ、カルアちゃん。ロムシティには何があるの?」
「ん−、ミマイシティみたいに水族館とかそういう観光施設じゃなくて自然を浴びる感じかなあ」
「自然を浴びる?」
「こうやって森林浴をしたり、ポケモンたちを触れ合ったり……秋にはキャンプ場として土地を開放してるみたい」
「キャンプ場?」

 初めて聞く言葉に星はきらきらと目を輝かせ、月は首を傾げる。どちらも面白そうな気配を察知し、顔に期待の二文字が太々と書かれているような表情を浮かべている。予想通りの反応にカルアはからからと笑いながらキャンプ場とは何かを説明する。カルアの説明から想像を膨らませる。いっそう目を輝かせた星は両手を挙げて「やりたい! 私たちもやろうよ!」と。その隣で月は出会ってすぐにカルアが作ってくれたものが超簡単なキャンプ飯と言うのだから他にもっと美味しいものもあるのだろうと涎をたらし、腹の虫を鳴らした。

「月ってクールぶってるはらぺこキャラたよね」
「……そんなことない」
「そういう否定は腹の虫の合唱を終わらせてからにしようねー」
「はい、カルアちゃん! 私もお腹空きました!」
「これくらい欲に素直でもいいと思うよ」

 むっつりと不貞腐れる月の背中をぽんぽんと叩いて宥める。月の視線はちらりと星に向けられる。ぱちりと目が合うと星はにこにこと満面の笑みを浮かべて「あっちから甘い香りがするからお腹へっちゃうよねー!」と。食欲をくすぐる香りの方を指さす。
 確かにここまで分かりやすければ可愛げもあるだろうけれど、さすがにちょっと……私の柄じゃない。などということを考えていることが顔に出ており、カルアはからから笑って「月、それはどんぐりの背比べだよ」と。ことわざを知らない月は意味が理解できず首を傾げる。


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