浮かれた足に忍ぶ

 スマホと睨めっこしてどれだけ経ったか。時間と比例して濃くなった眉間の皺はファンデーションのせいで痕が残っている。日頃、長時間スマホの画面を見ることのないpuÅがブルーライトカットメガネなどという現代人御用達のアイテムを持っているはずもなく、疲れ目そして頭痛に苛まれることになる。
 そこまでしても目的を達成できないpuÅは次第に唸り声をあげ、そして皺を伸ばされた水色のシーツに包まれたベッドの上にスマホを投げつけた。

「もう分からない!」
「2時間経ったのに?」
「だって、だってさあ!」

 察してよ! とでも言いたげに怒るpuÅはふかふかな桃色の布団に顔を埋めて足をばたつかせる。このカラーリングはアシレーヌイメージかな。相変わらず相方のこと大好きだなあと考えながら、ベッドを背もたれに雑誌を読み進める園香に目を向ける。要所要所赤ペンで目印つけているのはプレゼントの候補だろうか。どれどれと覗けばごついシルバーアクセサリーが多い。今の恋人は男であることを察したpuÅは日中三つ編みをして癖のついた緑髪に手を伸ばしながら問いかける。

「男の子ってそういうのが喜ぶのかなあ」
「人によるんじゃない?」
「そういうことを言う!」
「というかその人に似合うものを選ぶのは花華夢の得意分野でしょ」
「女の子はね! 女の子はこれつけてたら超可愛いとか一目瞭然じゃん! 野郎のことなんて知らないよ!」

 野郎が何を付けようがどうしようか興味ないもの。仕事に必要ならば頭にいれるけどさあ。
 この2時間スマホを投げ出しては嘆くと繰り返す親友の姿に園香は新鮮だなあと横目で観察しては自分の考え事に集中する。慰める様子も助言を与える気配も欠片ほど見せない園香にpuÅは頬を膨らませ「少しは相談に乗ってよ!」肩を揺らす。

「クリスマスデート大好きな子が今更何言ってるの」
「だってクリスマスに浮足立って服にも髪にもメイクにも力を入れて恋人を待つ彼女の姿とっても可愛いんだもん。それでプレゼントに頬を赤らめてお礼を言い、身に着けてくれる! 好きにならない理由がないじゃん」
「いつも通り過ごせばいいでしょ」
「私だってそうしたいけど、そうしたいんだけど!」

 今年過ごす相手、彼女じゃなくて彼氏だもん。
 布団に顔を埋めて、小さな小さな声で呟く。puÅの口から彼氏なんて単語が出てくると違和感しかないなあと思いつつ、聞きたかった言葉が聞けたため満足した園香は雑誌を閉じて振り返る。するとどうだろう。自分と付き合っていた頃には黄色い悲鳴をあげて騒ぐことはあれど顔色を変えてまで照れる様子を見せなかったpuÅが耳まで赤くしているじゃないか。
 園香は普段めったに変わらない表情を緩め、仕方がないなあとわざとらしく声をあげる。

「彼氏がだぁい好きなpuÅの相談に乗ってあげようかな」
「だっ、や、その」
「大好きなんでしょ? 彼氏が」
「や、だから、かれ、う……」
「プレゼント類には悩まず即決で選べるpuÅが2時間かけても納得できないくらいだもんね」
「そ、それはさあ! 女の子と男の子じゃ違うじゃん!」
「男の子相手に興味を示して、悩んじゃう姿を見れる日が来るとは思わなかったなあ」

 悲鳴があがる。真っ赤な顔でルガルガンのクッションを手に取り、ぽかりと叩かれる。からかいすぎたかと笑えば、こういうときだけ分かりやすく楽しそうにする! と頬を抓る。
 一通りじゃれた後、座り直した2匹は雑誌とスマホを再び開いて話を戻した。

「相手が彼氏ならリードを任せちゃうのもありじゃない?」
「そういうの嫌で私たち別れたでしょ」
「リードしたい派だもんね。あ、でも私今の彼氏なら別に嫌な気持ちじゃないかも。結局のところ、相手に身を委ねられるほど肩の力抜けるかどうかなのかなって最近は思うよ」
「え、なんなんだろう。この突然裏切られたような気持ちは」
「でもやっぱり主導権はほしいよね」
「あ、ぶれてない」

 きゃっきゃと女子会らしく恋バナに花が咲く。
 途中、楽しそうな声に釣られた伝依が顔を出したが、せっかく彼氏の話に夢中だった2匹の気が変わって伝依を着せ替え人形にしようと目を輝かせたので足早に撤退をする出来事があり、予想以上に時間は過ぎたがなんとか目星をつけたpuÅは深いため息を吐いてベッドに倒れこむ。

「私、今までで1番胃の痛いクリスマスになる気がして全然楽しくない」
「恋する乙女らしかぬ発言だよね、それ」
「プレゼントを決めてもさ、次々問題があるわけ。今までは彼女だったからクリスマスデートしていて、ファンに見つかっても仲の良いお友達でやり過ごせたけど、今回はさあ」
「頑張れ芸能人」
「ものすっごい棒読みな応援!」

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