愛しさに溶け込み、心地良さに身を委ね

 潔の頬にパンくずがついているのを見て言咲が笑いながらとっていると、言咲の唇にチョココロネのチョコがついていることに気付いた潔が仕返しだと舐めとる。
 恋人としてそれなりの長さ。夫婦となってからも何年か経ったというのに未だに不意打ちで唇を奪われると頬を赤らめる言咲に「相変わらず慣れないな」と。からかわれた言咲は頬を膨らませ、かぷりと甘噛みするように口付け「どーだっ」と。
 世間に注目されている存在故、外でも周囲の目を気にしなければいけないのだから自宅内でくらいはとでも言うように甘ったるくじゃれる2人。昔の言咲であればこういうことは私にじゃなくてホモで行ってほしいとさぞかし怒っていたのだろうなと潔は目を細める。対する言咲も、付き合う前の潔であればこんな風に無防備な姿を見せればこちらの静止など聞く耳持たず手を出していたのだろうなと考えながらぴっとり寄りかかった。

「満腹になって眠くなったか?」
「んーん。そんなことない」
「そう言うわりに瞼が落ちかかっているけどな」

 うつらうつらと上下する瞼を指先で撫でる。くすぐったさに身じろぎをし、指摘されると同時にあくびを1つ零す。
 シャワーを浴びて得た爽快感。美味しい食べ物で満たされた身体。蜂蜜入りのホットミルクと潔の体温で温められた身体。カチコチとリズミカルな時計の音と外から聞こえてくる街の声。これだけの要素に包まれ、一息ついてしまえば昨晩の疲労も相まって眠気がどっと押し寄せてくるのも当然だ。

「……せっかく2人揃ってのオフなのに寝るのもったいないじゃん」
「珍しく2人揃っての連休だから1日目くらい寝過ごすのもいいだろ」
「うー」
「それにどうせ今日外に出るつもりもなかったろ」
「…………でも潔は眠くないでしょ」

 潔は1つに束ねられた青い髪をくるくると指でいじる。確かに、髪を普段のツインテールにしなかった時点で外に出るつもりはなかったけれどと口籠らせた言咲はちらりと不安げな目を向ける。もしも言咲がイワンコだとして、耳や尾をはやしていたらしょんぼりと垂れていたことだろう。
 寝起き、潔が隣にいなかったことが相当寂しかったことはその様子を一目見れば察せるもの。夜中にたっぷりと致した翌日は声をかけてもなかなか起きず、昼間まで眠っているから静かに出たのだがここまでの反応をするとはと優しく苦笑を浮かべる。その表情に言咲は「私だってここまで寂しくなると思っていなかった」と。

「……ちゃんと起きるまでいるから寝ろ」
「お腹が鳴って寝言で食べ物の名前を口にしているところを見ても?」
「笑って見守っていてやる」
「それはそれでなんかやだなあ」
「わがままだな」

 眠気を否定することはしないが、寝ようとする様子も見られない。これはいくら言っても素直に受け入れないだろう。ひっそり溜め息を1つ零し、潔はそれならばとにんまり口角を上げた。
 潔の肩に額をぐりぐりと押し付けている言咲は潔が浮かべている悪い顔に気付くことはできず。一緒に暮らす以前のときはここまで思うことなかったのに、結婚して一緒にいる時間が増えてからの方が寂しいと感じるようになるなんて全く予想外だと唸り声をあげていた。

「駄々こねて唸る元気があるならこのまま俺の相手してもらうぞ」
「ひぁ……っん、大人しく寝る、寝るからあ!」

 するりと服の下に手を潜り込ませ、太ももから臍へと指を滑らせる。それからくびれを撫で上げ、じわりじわりと胸へと手を這わせる。昨日の余韻を残す身体は言咲の意思に関係なく反応し、肩を揺らす。甘美を孕ませた吐息を零しながら服の上から潔の手を握り、赤らんだ顔で静止の声をあげる。

「……。素直でよろしい」
「潔。今の間、このままベッドに連れていくかって考えたよね」
「そんな格好でそういう反応されたらなあ?」
「……さすがに昨晩して。朝から、あ、もうお昼か。お昼から始める体力はまだ戻ってないからね?」
「まだってことは後でならいいわけか」

 にやにやと意地の悪い笑みを浮かべ、楽しそうに投げかけられた問いかけにぴたりと止まる。目を泳がせ、小さく頷く。想像していたものと違う反応が返ってきて潔は目を丸めるが、言咲は正面から抱き着き直して「……だから」と。寝室で言っていた通り抱き枕になれと言うことなのであろう。それならばソファーよりもベッドの方がお互いの身体のためだがとも思うが、言咲の眠気が限界に近いことを察して横になる。
 高いソファーを選んだこともあり、2人抱き合って横になっても幅に余裕があり、柔らかくてベッドに勝ることはなくても寝心地はそれなりに良い。潔の胸に顔を埋め、視線だけちらりと見上げてから幸せそうにはにかみ、言咲は一言口にする。

「なんか今良いホモの妄想閃きそうだから寝言で呟いてたら覚えておいて」
「言うと思った」

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