第一印象。
端正な顔立ちで女の子が恋焦がれるようなフェミニストっぽい。この場合、その対応は男にも適応するため、男女ともに篭絡していそう。本人に悪意や他意があるわけでなく、勝手にそうなった者たちが信者と化して暗躍しているような。
第二印象。
誰にでも人当たりが良く、何をしても様になる。思わずイケメンだと叫びたくなるが、彼女自身をよく見れば男性的というわけでもなく。むしろパーツ1つ1つに注視すればとても見悪的な女性に見える。そしてやはり彼女は落とせない者なんて存在しないのではないかと思うくらい人を惹きつけていた。
その姿を見た誰かが、劣等感や嫉妬心を抱いて種族上当然のことだろうと言いかねないが。もし、敵意を抱いて言われたとしても彼女は傷ついて避けるのではなく、それでも丁寧に対応して落としていくのだろう。と、勝手な想像。
総評。
それはもうとても好みなタイプであった。顔もだが立ち振る舞い含めて内面全てが。ぜひともお近づきになってその顔を堪能し、できる限り甘やかしてみたいと思うくらい。甘やかされたところでその厚意を無下にせず、やんわりと受け取って気付けば甘やかす側に戻っていそうなタイプだけれども。そこを押し切ってべたべたに甘やかして鳴かせてみたい。
以上。puÅが抱いた蓮実に対する印象である。そしてプライベートで出会った相手なら捕らえる以外の選択肢はあり得ないとアピールするのだが、同じ業界で働く相手は禁忌としているものなので避けなければと決意した。この場合の好みとはポケモンとしてではなく、性的にという意味合いになってくるので当然だ。puÅは自分がレズビアンであるのを隠すために恐ろしくて大嫌いな男に媚びを売って男好きで業界に名を馳せるくらいのことをしているのだ。可能な限り同じ仕事を避け、もし交流する場があればできるだけ嫌われるようにしなければと思うほど。
それくらい、蓮実という女性モデルは魅惑的で愛らしいと思ったのだ。
「……まあ、本人の意思と世間の需要と制作陣の思惑は一致しないんだけどねえ」
「ん? 何か言ったかな?」
「素敵な王子様役のお相手を務めるの、緊張するなあって」
人生とは予定通りにならないものである。嫌というほど知っていることであるが、何もここまで試練を課さなくてもいいじゃない。と、信じていない神様を憎たらしく思いながら、puÅは隣で休憩している蓮実に愛らしい笑顔を向ける。一言、二言交わしてから沈黙する。
撮影スケジュールは順調すぎるほど進んでいる。これならば予定していた時間より早く終わるのではないだろうかと思うほど。悩みの種であった休憩中も蓮実がスタッフと会話に花を咲かせることはあれど、puÅとの会話は少く済んでいる。これならば、内に秘めている思考をうっかり零すこともなさそうだと安心したくらい。
小さく息を吐き出し、背もたれに身を委ねて今回の企画を思い浮かべる。王子系 コーデ、姫系コーデの特集。ジェンダーレスファッションが普及しているご時世だから、どちらも総取りできるなんともまあ美味しいもの。それはよかった。可愛いを全面的に出して売っているpuÅとしても、姫系の枠に選ばれたことは光栄だ。が、よりにもよって避けて通ろうとしていた蓮実が王子系枠で選出されるなんて! 相月に仕事内容を伝えられたときには思わず頭を抱えたものだ。
「えー! 蓮実さん、今日がお誕生日なんですか?!」
1人のスタッフの声に思考に沈めていた意識を戻す。どうやら今日は蓮実の誕生日らしい。人気者の彼女の誕生日なんてネットで調べれば1発で出そうなものだし、当然知っているスタッフもいたのだろう。いつの間にか蓮実の両手に抱えられたプレゼントの小山を見て、改めて彼女の人気を確認する。
そのやりとりを眺め、黙り込んでいたpuÅは意を決し、ようやく言葉を口にする。
「日中にお仕事をされているということは……夜に彼氏さんといちゃらぶに過ごすんですかぁ?」
「うーん。そもそも彼氏がいないかな」
「あれ、あの人は違うんですか? 俳優の空木さん。とても仲良さげに一緒に居るのをお見かけしますし、距離が近いからてっきりお付き合いしているのかと」
場の空気が急速に冷え込むのを肌で感じる。蓮実の誕生日を祝うスタッフたちの顔は和やかな笑顔で固まる。その中で、唯一puÅだけが無邪気に、好奇心と悪意をごちゃ混ぜにしたような笑顔を振り撒かれている。
なぜ、地雷の上をタップダンスするようなことをしたのか。誰しもが悲鳴をあげたくなる状況。その理由を知るただ一人、puÅが説明を付け加えるようなことをするわけもなく。蓮実はpuÅの言葉に対し、笑顔を返して告げる。
「puÅさん」
「はぁい?」
「そういう話は嘘や噂だとしても真に受ける人がいるものだし、彼にも迷惑からやめてね」
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