その人は、とても優しい声だった。
さりげない気遣いでさえ優しくて、きっと普通に過ごしていたら、こんな人と巡り会えたのだろうなと思った。ずっとずっと表には出さなくとも、心の底では羨ましいと思っていたものだ。
とても眩しくて、妬んでしまうくらい、自分に縁のないもの。
今でも昨日のことのように思い出せる。
一切の静寂が保たれた白一色の空間で、キミは半透明な吐息を吐き出し、ボクを呼ぶ。
微笑んだ顔に嘘はない。
手を差し出して、再びボクの名前を呼ぶ。
おずおずと掴んだその手はあたたかく、ボクにはないと思っていた涙がこぼれた。
それからしばらくして、ボクはまた、独りになった。
最後に声を聞いたのはいつだったか
空にポツンと浮かぶ満月はきっとキミだ。