「……えと、初めまして。ボクはナギ。九月からホグワーツに入学する、んだ」
「一緒だね! ボクはリーマス・ルーピン。よろしく!」
「ああ」
「ねえ、君のファミリーネームを聞いてもいいかな?」
やはりないとだめなのだろうか。ダンブルドアからの手紙では特に何も書かれていなかったので必要にかられなかったのだが、そうか、ボクの名前を呼ぶ時に困るのか。
しかし、だ。
ないものはないのだからどうするべきか。ネーミングセンスはないが、自分で作ってしまおうか。考え込むボクを見て、ルーピンは困ったように笑った。
「えと、困らせてしまったらごめんね。君の名前をちゃんと覚えたいんだ。そうしたら、ホグワーツで会える気がするからさ」
「……クロフォード。ナギ・クロフォード。よろしく…ルーピン」
「リーマスでいいよ。僕もナギって呼ばせてもらうから」
「…分かった」
自己紹介が済むと、リーマスは先ほどのように笑ってくれた。ボクも笑おうとするが、上手くできない。ボクのぎこちない喋り方に対して、リーマスは何も言わなかった。
おかげで少しずつだけど、スムーズに話せるようになってきた。会話が弾んで先ほどまで微笑んでいたご婦人は、急に人が変わったかのように「動かないで!」と怒鳴った。どうやら必要以上に動いていたようだ。ほんわかとしていた人が急に怒鳴り出すと、意外と怖いことに気づいた。怒らせないようにしよう。
しかしそんなことを思っていたのは最初の数分で、気がついたら再び怒られていた。一体何がどうしたと言うのか。リーマスと顔を見合わせると、何がおかしいのか分からないが笑っている。
リーマスも気づかない内に随分と動いていたらしい。どうにかしてなるべく動かないようにしながら、リーマスと会話を弾ませる。後で話をすればいいのに、ボクらはそれをしなかった。おかげで仕立て上げるのに随分と時間がかかり、ご婦人も「全くもう!」と怒りながらも、どこか笑っていた。二人別々に料金を払い、ずっと同じ体制で疲れた身体を伸ばした。
「ナギって、結構面白いね」
「そう、か?」
「うん。だってさ、すごく格好良いのに、ちょっと恥ずかしがり屋だよね!」
「え、ボク、恥ずかしがり屋、だったのか…?」
「そういう自分で聞いちゃうところも面白いね!」
ボク自身、自分が恥ずかしがり屋だったことに今気づいたのだから仕方がない。リーマスが笑うたびに、心臓の部分が何だかむず痒くてたまらない。友達って、こういうものなのか。
もっと話をしたいところだが、あまりハグリッドを待たせてしまうのも申し訳ない。そろそろと思っていたら、誰かが店内に入ってきた。
「リーマス、終わったかい?」
「父さん!」
「終わったならそろそろ帰るぞ。母さんも待ってるからな」
「父さん、ちょっと待って」
父さんと呼ばれた男性はよく見るとリーマスに似ている。親子って本当に似るものなんだなとしみじみ思った。リーマスは内緒話をするように男性に耳打ちし、男性も話を聞いて頷いている。なんだろう。
「ナギ、余計なお世話かもしれないけど、頬の傷を手当してもいいかな?」
「傷?」
「気づいてないの? ここに引っかき傷みたいなのがあるよ」
リーマスは自分の頬を指差して教えてくれた。そういえば、こっちにくる前に弾丸が掠ったんだった。触ると傷口がガサガサしている。今更ズキズキ痛むなんてやめてほしい。痛みに顔をしかめると「その様子だと本当に気づいてなかったみたいだね」とおかしそうに笑った。
「ちょっと動かないでね」
そう言うや、リーマスは慣れた手つきで鞄から薬やガーゼなどを取り出した。テキパキとボクの頬の傷を手当してくれる姿はさながら医者のようだった。
「よし、これで大丈夫だよ。なるべく濡らさないように気をつけてね」
「リーマス、えと、その、ありがとう」
「いいんだよ。僕もほら、結構怪我したりするから。ちゃんと手当しないと僕みたいに跡が残っちゃうよ」
「せっかくきれいな顔しているんだから、もったいないだろう?」と、リーマスは顔から火が出るくらい恥ずかしい言葉をしれっと言い放った。ボクはと言うと、生まれてこの方そんなことを言われたこともなくて、思わずポカンとしてしまった。リーマスの言葉を頭の中で反芻し、意味を理解するのに数秒。かあっと茹でダコのように顔に熱が集まるのが分かった。リーマスに見られる前に俯き、自分でもびっくりするくらい小さな声でありがとうと伝えた。
「うん! それじゃあナギ、ホグワーツで会おうね!」
「ああ、ホグワーツで」
リーマスは見えなくなるまで手を振り続けてくれた。ボクも赤くなった顔を見られないように、フードを被って手を振った。リーマスのお父さんには気づかれたみたいで、うちの息子が申し訳ないと言うように、くすくす笑いながら一緒に手を降ってくれた。
制服を仕立てている最中、リーマスは元気がなかったように見えたけれど、帰り際は笑顔だった。少なくとも、ボクとの会話で気を悪くしたりはしていないはずだ。ボクといて元気になったのなら、いいな。
さて、ハグリッドの言う通り、随分長いこと時間がかかってしまった。この近くに喫茶店のようなものがないか探すか、それともハグリッドのような巨体を探す方が早いのかどちらだろう。ひとまず店を出て、それから考えよう。一仕事終えてご満悦なご婦人に礼を言い、洋装店を出た。
忘れていたわけではないが、ハグリッドがいたからあまり気にしていなかった。目の前でごった返す人の波を見て、歩き出す前から喫茶店で休憩したくなってきた。
喫茶店が近くにあったとしても、これではお店に近づかないと看板が目に入らないし、何よりも人の波に揉まれてどこまでも行ってしまう。ボクには大人の波に抗って泳ぐほどの力もないし、背も足りない。どうしたものか…。
こういう時、何か魔法があったらなと、ふと思う。魔法使いなのだから、ここで魔法を使うのは駄目なのだろうか。そこまで考え、魔法使いだからとて、杖がなくては何もできやしないのだと、ハッと気がつく。ダンブルドアも呪文を唱えてはいなかったが、杖を使っていたのだ。ハグリッドはなぜか傘だったが、柄の部分がもしかしたら杖なのかもしれない。あの傘が杖だとして、どうして隠さなければならないのか分からないが、ハグリッドはダイアゴン横丁の入口を魔法で出していたではないか。そうなるともう、本当に杖がなくてはできることはないのだな。マジで詰んだわ。終わった。
「ナギー」
幻聴だろうか。
ハグリッドの声が聞こえる。
「ナギ! おう、まだここにいたんだな! 制服はできあがったか?」
「ハグリッド! どうしてここに。喫茶店で休んでいたんじゃないのか?」
「そうなんだが、あんまりにも遅いから心配になってな。やっぱり制服を作るのは時間かかるから、先に作ってよかったな!」
ニカっと屈託のない笑顔を見せられてしまっては、ボクも思わず肩の力が抜けてしまう。どうしてこうもお人好しなんだろうか。もちろん、良い意味で言っている。
洋装店の前で話し込んでしまうとお店に迷惑がかかってしまうので、ひとまず教科書などを売っている書店へと足を運ぶことになった。
「さっきいた子と話はできたか?」
「ああ、ホグワーツで会う約束をした」
「そりゃよかったな! ホグワーツは面白えぞ! ナギは真面目っぽいから、レイブンクローに入るだろうな」
「レイブンクロー?」
「寮の名前だ。ホグワーツは四つの寮に分かれちょって、組分け帽子ってので寮が決まるんさ。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そしてスリザリンだ。詳しいことは今から行く本屋にも置いてあるから調べてみるとええ」
「おれは説明するのが苦手でな」と、苦笑しながらハグリッドはズンズン進んで行く。素晴らしい。ハグリッドがいれば、人の波が自然に避けてくれる。ここまで大きくならなくてもいいから人並みの背丈がほしいと、こんなにも思った日はない。
フローリシェ・アンド・ブロッツ書店に着くと、ハグリッドが店主と二、三言葉を交わし一年生用の教科書を持ってきてもらえることになった。改めて、魔法は便利で素晴らしい。わざわざ探し歩かなくていいのだ。
「教科書の他に何か欲しいものがありゃ、買っといたほうがいいぞ」
「だがハグリッド。そんなに持ち歩けないぞ?」
目の前に積まれていく教科書を見て、早くも腕の心配をしてしまう。どの教科も意外と厚みがあって重そうだ。紙の厚さがボクの知っているものよりも分厚く、どれも同じようなものはない。背表紙の部分がやたらゴテゴテしていたり、表紙に凹凸がある本もあった。とても持ち運びにくそうで、どう持てばバランスが取れるか考えてしまう。
真剣に考えるボクを他所に、ハグリッドは何がおかしいのか、大きな口を開けて笑い出した。
「ふくろう便で送ってもらえばええ!」
「ふくろう…便?」
ふくろうにあんな重たいものを運ばせるのか?
そもそも、ふくろうは…そこまで考えてから、そういえばここは魔法の世界だったとそれまで考えていたものを全部ふっ飛ばした。ボクの中の常識と、魔法界での常識はかけ離れているのだと忘れた頃に思い出す。
「ふくろうにあんな重たい本をたくさん持たせるなんて平気なのか?」
「心配しなくても大丈夫だ! お前さんは案外優しいな!」
優しいという言葉に首をひねる。ボクは優しくなんてない。優しかったら、きっと今この場にいないだろう。
ハグリッドから運ぶ荷物に軽くなる魔法をかけてからふくろうにお願いしているのだと教えてもらい、安心したボクはこれで心置きなく本が選べる。
どんな本を選ぼうか考えたが、パッと浮かぶものがなかった。本を読む機会があまりなかったのだ。ひとまず、ボク自身の魔力が強すぎるとダンブルドアが言っていたのを思い出し、魔力を制御する方法が載っている本にしようと思った。
棚に並んでいる本を端から端までくまなく探し、それっぽいタイトルの『どんな魔法も無言でひょい』という本を見つけた。表紙には大きな三角帽子を被り、得意げな表情でこちらを見る魔女が杖を振っている。適当にパラパラと中をめくると『無言呪文を成功させるには、まずは心をからっぽにさせる必要がある。』と書かれていた。続きをそれとなく見ようとして、瞬きをする一瞬、文字が変化したように見えた。
いやいや、そんなばかな。さすがに魔法界の本の文字まで動くだなんて、本の意味がまるでないじゃないか。だがしかしここはマグルの世界ではなく、魔法界の本屋だ。そんなこともあるのだろうかと本を閉じて、今度は全体を見てみる。背表紙にも、表紙に書いてあったタイトルと同じものが書かれていた。よく見てみると、さっきと同じようで違う部分を見つけてしまった。
「ハグリッド、一つ聞いてもいいか?」
「おう、どうした」
「ボクは今、何語で話している?」
「なんだお前さん、おかしなことを聞くもんだ。本当にどうしたってえんだ」
「ハグリッド、真面目に答えてほしい」
「あーっと、すまねえ。ナギは英語で話しているぞ。だからちゃーんとおれにも伝わっている。安心しろ」
「そうか…変なことを聞いて悪かった」
腑に落ちない返答をされたからなのか、ハグリッドは首を傾げながらも「他にも色々と見てみるとええぞ」と当たり障りない話をしてくれた。
『Any kind of magic can be done without saying a word.』
背表紙にはそう書いてある。けれど、ボクには『どんな魔法も無言でひょい』と“日本語”で読むことができる。よく見なければ気づきもしなかっただろう。
これは一体どういうことなのか。ボクは簡単な英語しか話すことができない。難しい単語が出てくるとお手上げなのだ。昔、日常会話くらいのものを教えてもらっただけで、あとはほとんど独学だ。自ら進んで他の単語も勉強しようとは思わなかった。日常会話だけで普段は成立するため、必要にかられなかったからだ。
元々日本で生活していて、アメリカに行く機会があった。ただそれだけだ。唯一話せる日本語だってたまに怪しいこともある。
ボクがこうしてすらすらと英語を話せる理由の一つに、心当たりがある。あの男だ。初めて会ったダンブルドアにはすでに言葉が通じていた。それなら、その前に話していたあの男の仕業としか考えられない。
話せない言語を話せて、尚且つ読むこともできる翻訳的な魔法を使ったのだろうか。そもそも、そんな魔法があるのだろうか。魔法にだって、限界がないわけではないだろうに。
あの男のおかげで困らずに済んでいる、というのは些か気持ちの良いものではない。決めた。勉強しよう。あいつの世話になんてこれ以上なりたくもない。そうと決まれば話は早い。ここで買うものは呪文集や、魔法界での常識などが書かれている本に重点を置く。目を凝らせば日本語と英語の二通りの文字が見えるので、何かノートにでもとってひたすら書いて覚えよう。
店主にほしい本を探してもらい、カウンターに置かれた本は天井についてしまいそうなほど高く積まれた。本当に軽くなる呪文をかけてからふくろうに運ばせるんだよなと、若干疑心暗鬼になりつつもハグリッドに習い会計をする。
「君、そんなに本を買うの?」
不意に後ろから声をかけられた。敵意はなかったので油断していた。振り返ると、クセの強い髪とメガネが印象的な男の子が立っていた。
「ボクには全部必要なんだ」
「ふーん…もしかして君、マグル出身なのかい?」
下に積まれていた本の背表紙が魔法界の常識が書かれている本ばかりだったので、それを見てピンときたのだろう。なかなか鋭い着眼点だ。頷いて答えると、目をキラキラとさせてなぜか興奮しはじめている。なんで?
「ねえねえ、マグルって声だけ遠くに飛ばして会話ができるって本当かい?!」
声だけ遠くに飛ばす、会話ができる…なんだそれ。『近くの人や遠い人とも話ができるものってなーんだ?』っていうなぞなぞみたいな話し方…。目の前の男の子は至って真剣で、真面目な顔をして聞いてくるものだから思わず吹き出してしまった。
「僕、なにか間違ったこと言った?」
「いや、ちがう。間違ってはいない。答えが分かった。電話っていうもので話すことができるんだ」
「そうなんだね! マグルはやっぱりすごいや! 僕はジェームズ・ポッター。君は?」
「ボクはナギ・クロフォード。よろしく、ポッター」
「ジェームズでいいさ、ナギ!」
ジェームズがスッと手を差し出す。なんの悪意もない純粋な目に、ハグリッド同様警戒することさえばかばかしい。手を差し出すと力強く握手をされる。マグルに会うのがそんなに嬉しいのかな。ハグリッドが道中話してくれた内容では、マグルから生まれる魔法使いもそう少なくないはずだ。
握手したついでとばかりにズイッと前のめりぎみに、ジェームズはボクに一歩近づくと、先ほどよりも鼻息荒く目をらんらんとさせている。えと、何かヤバいものに手を出していらっしゃる方、なのかい?
「ねえねえ、ナギの髪の色はとても珍しいよね。一部違う色の髪があるけど、その髪は染めたのかい? マグルの中にはわざわざお店に行って髪を染めるって聞いたことがあるんだけど、ナギもそういうところで染めたのかな? それとも魔法を使ってかい? どっちにしろ、ムラがなくてきれいに染まっているね!」
マシンガンなトークが炸裂し、ボクは手を握られていることも忘れてジェームズに圧倒された。だめだ。一番厄介な人物に捕まってしまった気がする。こういう人は周りの声などほぼ聞こえていないに等しい。カウンター越しに見える店主は他所でやってくれと言わんばかりの表情をし、我関せずだ。
仕方がないので質問に答えるとして、店主に購入した本をふくろう便で送ってもらうように頼み、邪魔にならないようハグリッドから近くにあるという――フローリアン・フォーテスキュー・アイスクリーム・パーラーという――お店を提案された。アイスクリームやサンデーを取り扱っているお店で、ハグリッドが絶賛するほど美味しいらしい。太陽の傾きを見て、時刻はお昼をだいぶすぎたくらいだ。空腹とまではいかないが、胃に何か入れたいと思っていた頃なのでちょうど良かった。
ジェームズは道中ずっと喋っていた。“くぃでぃっち”という魔法界のスポーツが面白いだとか、ペットがまだなら手紙を送れるふくろうがオススメだとか、ぺらぺらずーっと喋りっぱなしだ。しまいには、ボクがちゃんと聞いているかどうかたまに確認するのだ。頼む、勘弁してくれ。
フローリアン・フォーテスキュー・アイスクリーム・パーラーに着き、どうせだからとハグリッドがテラス席を選んでくれた。こんなに暑いのになんでテラスなんだろうなと不思議に思ったが、この時期は学用品を買いに多くのお客さんが店内にどっと押し寄せてくるので、逆に店内のが暑いのだとか。確かに、人の熱気と人混みでボクは一発アウトだろう。ハグリッド、グッジョブ。
ハグリッドはストロベリーナッツサンデーを頼み、ボクも同じものを選んだ。ジェームズはようやくお喋りがとまり、真剣な表情でメニューを選びはじめ、チョコサンデーを頼んだ。
テラス席は意外にも風通しの良い場所なのか、夏にしては涼しい。もちろん熱気がないわけではないが、日陰は絶大である。巨人のようなハグリッドがちょこんと座っている姿を見て、くすりと笑ってしまったのは内緒だ。
サンデーがくるまでの間、ボクはジェームズの質問に答えなければならなかった。書店で問われた髪の毛は地毛であると伝え、ボクが知り得るマグルの話をジェームズに話した。魔法よりも便利なものが世の中にあることが不思議なジェームズは、目を丸くしながら聞き入っている。この世に魔法があることを知ったボクみたいだなと思った。
お待ちかねのサンデーがきて、二人が食べている姿を見て、意を決して口に運ぶ。サンデーなんて生まれて初めてだ。スプーンで慎重にすくって口に運ぶ。ストロベリーのアイスは酸っぱくて、とても甘かった。酸っぱ甘いものに塩っ気のあるナッツはそれはそれは絶妙で、ハグリッドが迷わず選ぶだけある。小さく縮こまりながらサンデーを口に運ぶハグリッドと目が合い、最高だとぐっとサインを出す。まるで自分が考えたメニューのように「そうだろう!」と深く頷くハグリッドに、それを見ていたジェームズがケラケラ笑い出した。
「なかなか美味しかったね!」
「次は是非とも違うフレーバーを味わいたい」
「そんならピスタチオのやつも絶品だぞ。機会があったら食べてみるといい」
「そうするよ」
「やばい、もうこんな時間! ナギ、色々教えてくれてありがとう。またホグワーツで会おう! 絶対だよッ!」
「…約束する」
ジェームズは自身の懐中時計に目をやりつつ、人混みの中へと消えていった。誘ってよかったのかまずかったのか、どっちか分からない。誰かときていたとして、怒られていないといいけど。
「良いやつだったな」
「ああ、ホグワーツで会うのが楽しみだ」
「そんじゃ、残りの学用品も買いに行くぞ」
「よろしく頼む」
まるでジェームズが小さな嵐のように、いなくなるととても静かだ。あの騒々しさに慣れてしまっていたのか、ハグリッドと二人だけだと静かすぎて物足りないくらいだ。ハグリッドも同じことを思っていたようで、ボクを見下ろし言葉を濁しながら「あー、しっかりついてくるんだぞ」と、人混みを掻き分けていく。
買い物リストを眺めながら、次なるお店へと再びハグリッドを盾にしながらボクも歩き出した。
あの日のボクよ、おぼえているか
ボクにも友達ができるって知っていたか?