見た目とは裏腹に

「ユキトはもう傘は差さないの?」
「あぁ、もう日が落ちたからね。」

暫くして機嫌を治したベポは腰に差された傘を見ながら尋ねてきた。月明かりが強いおかげで2人の顔が良く見える。先程の1件で不穏な空気が流れていたがベポのおかげで少しづつ和らいできた。ベポ様々だ。船長さんがこちらを見ながら何かを言おうとしているのを感じて視線をむけた。

プルプルプルプルプル…プルプルプルプルプル…

電話のような音が船長さんのポケットから鳴り響いく。ゴソゴソとポケットに手を入れ何やら小さいカタツムリのようなものを取り出すとガチャと音がした。

「俺だ、合流したから今から戻る。」
『良かったー!ベポ無事だったんですねー!』

突然カタツムリに話しかけたかと思うとカタツムリが喋り出した。なにあのカタツムリ?とベポに聞くと不思議そうな顔で子電伝虫だと教えてくれた。電伝虫と聞いて何となく電話なのだろうと理解する。カタツムリ型の電話なんて今まで見たことが無い。いろんな星を回ってきたがあんな電話は始めて見た。どこの星の電話なんだろう とても表情豊かだ。携帯電話にも掛けれるならぜひ欲しい。全宇宙共通携帯があれば最高に便利なのになと考えていると、肝心なことをずっと聞いてなかったことに気がついた。

「あ、そういえば聞きたかったことがあるんだけど、ここはなんて星だい?」
「え?…地球、…だけど。」

ベポは一瞬びっくりしたあと、さっきよりもさらに不思議そうな顔で答えてくれた。自分でも変な質問だとは思うが仕方ない。道に迷うならよく有る話だが、星まで分からないほど迷ってるやつなんてなかなかいないだろう。俺も初めてだ。それもこれも光るカラクリのせいだ。でもへんぴな星に飛ばされてなくて助かった。不幸中の幸いとはこの事だ。

「よかった、急いで江戸に帰りたいんだけどここからだとどうやって帰るのが早いか分かる?」
「江戸なんてきいたことねぇ、どこの島だ?」

電話が終わったであろう船長さんが口を開く。

「日本だよ。ほら、地球で唯一ターミナルがあるところだよ。」
「んー。聞いたことないなぁ…。キャプテン知ってる?」
「日本って島もそのターミナルってのも知らねぇな。」

おかしい、江戸は地球で1番栄えてる場所のはず。それを知らないなんて余程の世捨て人か田舎者かどちらかだろう。さっきの電伝虫と言うカタツムリはどう見ても地球の生き物ではない。そうなると天人との関わりが全く無いわけではなさそうだ。それにベポも地球人では無いだろうからターミナルの存在を知らないのはおかしい。変な違和感を感じてしばらく考え込んでいると、難しい顔をしていた船長さんがこちらを向いた。

「…船に戻ったら海図を貸すからそれを見ろ。」
「え?」
「場所を知りてぇんだろ?もう夜だ、街で空いてる店は飲み屋しかねぇし、そんなところに海図があるとは思えねぇ…。それに、話も聞かずにバラしかけたからな、それの詫びとベポを助けてもらった礼だ。海図だけじゃ返したりねぇがな。」

びっくりだ、さっきまで俺は船長さんにバラされかけてたし、俺も危害を加えようとしていたのにどうやら彼は俺を船に入れてくれるらしい。海賊の船ということは彼らにとっては家のようなものだろう。そこに海図を見せるためとはいえ流血沙汰1歩手前まで行った相手をテリトリーに招くとは、彼の懐が広いのか俺の日頃の行いが良かったのか。どちらにせよ人の好意は受け取る派だ。

「ありがとう助かるよ…。えっと…」
「トラファルガー・ローだ。ローでいい。」
「分かったロー。俺の名前はベポが呼んでるから分かると思うけど雪兎だ。好きに呼んでくれ。」

あぁと返事をしたローは背を向け船に戻るため歩き始めた。まだいろんな考えがめぐる頭を落ち着かせようとこめかみを抑えるとベポが俺の腕を引っ張ってニコニコと笑顔でまだ一緒に過ごせると喜んでいた。



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しばらく進むと潮の匂いと共に賑やかな話し声がきこえてきた。街の灯りも近づき人が生活してる気配を感じて少し安堵する。

「あ!みんな外で待っててくれてるー!」

少し遠くに人影が見え、ベポが歩みを早める。どうやらこの声の持ち主達は2人の仲間のようだ。

「ベポ行くな。あいつらに説明するのが面倒くせぇ。」

何か呟いた後にドーム状の青い膜がローの足元から広がったのを口を半開きにして見つめていると右腕を捕まれた。その捕んできた手がローの手だという事に気がついたその瞬間、目の前の景色が一変した。

「え?どここれ?今の何?」
「俺の船だ。」
「なんとなく分かるけど、いや、そうじゃなくて、え?」
「キャプテンは悪魔の実の能力者なんだよ」
「悪魔の…実?」

色々聞きたいことがありすぎて頭が追いつかない。ビックリして少し早口になった俺にベポが笑いながら教えてくれたが理解ができない。悪魔の実の能力者と言うのはよく分からないが、今その質問を深くする時じゃない気がして言葉を飲み込む。1日に2回も瞬間移動するとは今朝起きた時には考えもつかなかっただろう。いまだに夢でも見てる気がする。「ついてこい」というローの後ろ姿をさっきも見たなとどこか冷静に思い、俺の手を引くベポと一緒に船の中へと入った。


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