水を得れない魚
眩しい、そう思った瞬間に俺は1人になっていた。
「...へっ?...あれ?」
気の抜けた声と共に敵に殴りつけたはずの傘は何も無い地面へと叩きつけられた。
周りを見ても誰もいない。敵も味方も突然消えてしまった。周りが消えてしまったというよりは自分があの場所から消えてしまったと言うのが正しいか。今日は仕事で央国星の重役さんの護衛をしていたところ、こちらの読み通り深夜襲撃してきた敵と戦っていたはずなのに何故だか今は雲ひとつない清々しいほど晴れた空の下だ。
三下だと思い舐めてかかったら痛い目を見た、考えずとも原因はここに飛ばされる前に敵に向けられたあのよく分からない光るカラクリのせいだろう。
ただの目くらましだと思ってそのまま突っ込んだらこのザマだ。なにが宇宙最強の戦闘民族だ、聞いて呆れる。今度からは気をつけよう。でも、誰が想定しだだろうか、ピカっと光って突然ワープだなんて 人を転送させるカラクリなんて聞いたことがない。そういえばさっきまで夜中だったのに今はどう見ても真昼間だ。違う星に飛ばされたとか?そうだとしたらすごい技術だ そんな技術あったらどこかの某宇宙海賊さんが大喜びしていろんな星侵略しまくりじゃん。宇宙壊滅じゃん。
俺がいなくなってあのおじさん大丈夫なのかなーなんて呑気に呟きながら、地面に刺さった傘を抜き肌に照りつける太陽を傘で隠した。
夜兎は陽の光に弱い。夜兎を知らない人からすれば四六時中傘を差してる奴なんて余程の美白マニアか少し頭のおかしい奴かのどちらかだと思うだろうが、四六時中傘を差してる理由は陽の光に弱い身体を守るためだ。ある程度陽の光に当たってても平気な夜兎もいるから個人差はあるが、陽の光にしばらく当たってると皮膚が剥がれ落ちたり日射病になったり弱ってる時だと死んだりするって話も聞いたことがある。
ちなみに俺は遺伝の影響なのかは分からないが、陽の光に滅法弱い。個人的には太陽は嫌いではない、むしろ天気の中では晴れが一番好きだ。いい匂いがするし心が暖かくなる。よく仕事で一緒になっていた同族のやつにお前は物好きだよなと言われていた。だけど俺の肌は10分ほど陽の光を浴びると肌が剥がれてちょっとしたR-15指定の映画みたいになってしまうのだ。
それを分かってた上で俺をこんな晴れた場所に飛ばしたのかは分からないが、もしそうだとしたら悪質すぎる。晴れは好きだが関係ない。何がなんでも見つけ出してあの光るカラクリ野郎をボコボコにしてやる。そう心に決め 草木の香りが混じった風の匂いを頬で感じながら、歩き始めることにした。
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数時間散策して分かったことがある。町が無けりゃ人もいない。その結果今日俺は野宿が確定したということだ。まあ、町があったとしても財布も何もかも宿泊先の部屋に置いてきたため無一文、それに顔や手に血が付着したままだ、どの道野宿は免れなかっただろう。下手したら歩いてるだけで通報ものだ。端から端まで見て回った訳じゃないが一旦落ち着きたい。日も傾き始めたし なによりお腹がすいた。燃費の悪い身体がエネルギーを補充しろと胃を使って唸ってくる。このまま散策を続けるにしろ野宿をするにしろこの空腹を何とかして鎮めなければどうにもならない。央国星のご飯も悪くはなかったが、こんなに疲れてお腹がすいてる時には地球のご飯が恋しくなる。そんなこと考えても食べれないのは分かっているからお腹を満たすため、先程見かけた川の方へ足を運ぶ。
野宿は慣れてる 俺の仕事は主に用心棒を生業にしているんだけど、たまに傭兵として雇われて紛争地域へ行ったりだとか、人を襲う巨大エイリアンを討伐しにエイリアンハンターとして壊滅状態の街へ行ったりだとかで宿泊施設とは無縁の場所に行くことが多かった。そのため長期戦になったりすると当たり前のように外で寝泊まりすることになる。どこかに所属していたらテントなりなんなり支給されるんだろうが、俺は個人で仕事を貰っていたため眠たくなったら空いた時間を見つけては瓦礫の済とかで寝たりしていた。紛争地域や壊滅状態の町に比べたらここは天国だ。ふかふかのベッドで寝れるに越したことはないが、近くに綺麗な川があるし身の危険を感じるようなエイリアンの気配も無い。それにここは草木も多い。とりあえず落ち着けそうな場所で火を起こして魚を捕獲しよう。木の葉の隙間から漏れた光がキラキラと川面を照らしてる。靴を脱ぎながら水の中を覗くと傘の影のおかげでまるまる太った魚が沢山泳いでいるのが見える。逃げられないようにそっとつま先から足を水に入れこれから食べる分だけ捕まえる。
「それにしても綺麗なとこだなぁ。」
川の水で手と顔を洗った後、拾った枝を串替わりに魚を突き刺しながら焼いていく。パチパチと木が軋んで弾ける音を聞きながらこれからの事を考えていた。もしここがあの星じゃなかったらどうやって戻ろう地球か央国星に近いところだといいな。小型艇は央国星に泊めてあるし、お金も宿泊先と地球で借りてある家だ。今回の仕事はダメになったけど来週から別の仕事が入っていたはず。連絡手段も持ち合わせてないから連絡なんて取れないし、町さえ見つかればなんとかなるだろうけどもしこの土地に誰も住んでいなかったら...。
色々考え出すと変な気分なってきた、たまにくるマイナス思考モードだ、こんな時こそポジティブにいかなきゃ。思考を変えよう。そういえば炎ってヒーリング効果あるって地球人の友人から聞いたことあるんだけどぜんぜん癒されないぞ。あれは地球人限定なのか?あー地球人になりたい。いまだけなりたい。なんでもいいから癒されたい。こんなに変な気分になるのもきっと腹が減ってるせいだ、そうにちがいない。お腹を満たしていつもの俺に戻ろう!そして散策を再開させてさっさと帰る手段をみつけよう。
そろそろ焼けたかななんて呟きながら手を伸ばした瞬間正面の林からなにか大きな者が動く音がした。
大きさからして人じゃないな動物か?この方角はまだ俺が散策してなかった方角だ。気にはなるがお腹は減ってる。少しだけ気配を気にしつつホクホクに焼き上がった魚を口に入れ塩があったら100点だなとかお米が欲しいなとか考えてる間にも大きな気配はどんどんこちらに近ずいてくる。そしてその気配は5mほど距離のある木の後で止まった。
魚を咀嚼しながら視界を遮っていた傘を少し上げ音の方へ目をやると、そこには涎を垂らして物欲しそうに魚を見つめる大きなシロクマがいた。
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