君が命を食べる音



「…魚、……食べます…?」

と言葉に出すと木の後ろから顔だけ出していた第1村人ならぬ第1シロクマさんは真ん丸な目を大きくさせていいの?と聞いてきた。 目が大きくなったことにより眉毛も耳も上に上がってる 。

「うん、足りなったらまた捕まえればいいし。」

どうぞとシロクマさんが座りやすいように少し左へズレると目にも止まらぬ速さでシロクマさんは隣へ座った。

「お兄さんありがとう!おれすっごくお腹すいてたんだ!」

ニコニコと笑いながら明るく弾んだ声でいただきますと言うと、器用に大きな手を使い細い串を両手で一本づつ持ってムシャムシャと魚を食べはじめる。それを見届けて、こちらも中断していた食事を再開させる、やっぱり塩とお米が欲しいなぁなんて考えていると、シロクマさんが魚をどうやって捕ったのか聞いてきたので軽くジェスチャーを交えながら教えたり、2人で食べてる魚の種類を考えたりとさっきまで一人で落ち込んでいた気持ちが、なかなか楽しい気分になってきた。ふと足元を見ると、シロクマさんが着ている濃い目のオレンジ色のツナギに 口から零れたであろう魚の破片が ぽろぽろと落ちていたので、服汚れてるよと言いながら手で払ってあげると、また弾んだ声と陽だまりのような笑顔でありがとうと言われ、さっきまで萎えていたことを忘れるくらい気分が明るくなっていくのを感じた。こんなに明るくてフレンドリーな天人は地球人以来だ。俺が普段関わっているのは見た目が特殊で下品な奴。もしくは、見た目はいいけど中身がサイコパス。の2択だ、どちらもフレンドリーとは無縁だがそれに比べてシロクマさんは明るくて見た目もかわいい。白くてふわふわだ。テレビでシロクマは可愛い見た目とは裏腹に凶暴だとテレビでやってるのを見たことがあるが、あれは嘘だった事が今判明した。テレビの情報なんて当てにならないな。

「いえいえどういたしまして。シロクマさんはこんなところで何してたの?」
「この島にしか生えない怪我にも病気にも効くって言われている薬草があるって聞いて、ログが溜まるまでの間暇だったから探す事になったんだけど…、その薬草がすごく珍しい種類みたいで夢中になって探してたら仲間とはぐれちゃったんだ…。」

じゃあシロクマさんは迷子なんだねと言うと先程までの明るい声とは一転耳と眉毛を下げてしょんぼりした声でうんと頷いた。あぁ、可哀想に気持ちは分かるよ、俺も迷子みたいなものだ。何本目か分からない焼き魚を飲み込んでシロクマさんの背中を撫でる。

「俺もシロクマさんと同じで迷子なんだ。」
「え!お兄さんも迷子なの?じゃあおれ達一緒だね!」

迷子がもう一人増えて心強くなったのか元気を取り戻したみたいだ。コロコロ変わっていく表情を見てるとなんだか気が紛れる。やっぱり誰か話し相手がいると違うな、とはいえ迷子が増えただけで状況は変わらない。だがシロクマさんのおかげでここが島だという事と、シロクマさんの仲間がいるという事が分かった。ログがたまると言う意味はよく分からなかったが、少しでも情報が入るのはありがたい。迷子は動くなと言うけど、こんな所にずっと居たって迷子同士仲を深めるだけで、シロクマさんの仲間が見つけてくれる確率は低いだろう。もう少し見晴らしのいいところに出たほうがいい。そろそろ日も傾いてきたし、暗くなって探しにくくなる前に早く仲間と会わせてあげたい。それにシロクマさんが来た方角はまだ俺が散策してないエリアだ。そうなったら話は早い。腹ごしらえも終えたし時間ももったいないので火の始末を始める。

「あれ?火消しちゃうの?」
「うん、あと1時間もすれば日も落ちるだろうから暗くなる前にシロクマさんの仲間を見つけなきゃね。力になれるかどうか分からないけど俺にも手伝わせてよ。」
「えっ!でっ、でも悪いよ!ご飯も沢山食べさせて貰っちゃったし、おればかりなにかしてもらうのは...。それにお兄さんも迷子なんでしょ?きっとお兄さんの仲間も心配してるよ」

なんて謙虚で優しい子なんだろう。俺の周りには確実にいないタイプだ。

「俺の事は気にしなくていいよ。元々腹ごしらえを済ませたらシロクマさんが来た方面へ行こうと思っていたんだ。それと俺は一人でここへ来たから仲間はいないよ。」

1度断った手前了承しづらいのか、食べ終わった串を手で弄びながらモジモジしている。そんな姿もかわいいなと思ってシロクマさんの方へ身体をむける。

「それに一人でいるよりシロクマさんが居てくれた方が楽しいし、何より俺が君と一緒に居たいんだけどダメかな?」

そう言うとシロクマさんは最初俺が声をかけた時のように真ん丸目を大きくさせたあと、俺の手をにぎってあの陽だまりのような笑顔と明るく弾んだ声でありがとうと言った後よろしくねと言ってくれた。


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