生きてるあなたを
お互いに名前を教え合い仲良くなったベポと俺は、手ぶらで帰るのもあれなんで薬草探しをしながら歩いていた。
「流石は珍しい薬草だね、なかなか見つからないや。」
「だねぇ、でもユキトのおかげで何枚か見つけれたから良かったよ!キャプテン喜ぶかなー?」
「その前に迷子になった事怒られるかもね」
「えぇー、おれバラされたくないよー。」
「え?そんな怖い人なの?」
キャプテン怒ったら怖いんだと笑うベポは、ここに来るまでの間楽しそうに仲間の事や船での仕事の話しをしてくれた。ベポはハートの海賊団という所で航海士をしているらしくオレンジのつなぎのマークはその海賊団のマークらしい。俺の知る海賊と言えば仕事でたまに顔を合わせる事のある某宇宙海賊くらいしか知らないが、こんなに優しいベポもあの宇宙海賊のように悪事に手を染めているのだろうか、そう思うと複雑な気分になる。ふと仕事で鉢合わせるたびに勧誘をしてきた金髪の同族の顔が思い浮かんだ。それにしても航海士が迷子だなんて大丈夫なのだろうか、もしかしたら海と陸では勝手が違うのかもしれない。
「おれ自分の事ばっかりしゃべってユキトのこと全然知らないや」
「そうだっけ?ベポの話面白いからずっと聞いちゃってたかも。」
「じゃあ次はユキトの事教えてよ」
そう言われ応えようとすると俺達とは別の足音が聞こえた、西日で伸びた影がこちらへ近づいてくる。逆光で見えにくいが大きな刀が印象的な背の高い細身の男性がいた。何かを探してる仕草をしていたので、もしやと思いベポに声をかけた。
「彼はベポの仲間じゃないかい??」
「うわぁ!本当だ!キャプテンだ!キャープテーン!」
嬉しそうに手を振りながら駆け寄るベポの背中の後を追うと、じっとこちらを見つめる視線を感じ足を止めた。突然止まった俺に気がついたのかベポが不思議そうにこちらを見ている。傘をあげキャプテンと呼ばれた男と目を合わせると眉間に深くシワを寄せ刀の柄を握っている。
空気の変わった俺達にどう接すればいいのか分からなくなったのかベポは男に声をかけられると1歩2歩と後ろへ下がる。
血の匂いを指摘され水洗いだけじゃダメだなーなんて緊張感の欠けらも無いことを考えるのと同時に、心臓が興奮で大きく動いてるのを感じた。言葉では男に静止を求めるが、戦いたいという欲求が脳の奥を擽る。相手から伝わってくる緊張感が心地いい。
「安心しろ、痛くはしねぇ。少しバラして話を聞くだけだ。」
バラすというワードを聞いてベポとの会話を思い出した。まさか俺がバラされる事になるとは思いもしなかった。ベポの仲間を手にかけるなんてしたくないが背に腹はかえられないバラされるのは嫌だ。それに俺の夜兎の血が暴れたいと訴えてくる。目の前の強そうな男と戦いたいと、少なかった食事のせいかいつもより感情の制御が出来ない。忌々しいこの夜兎の血は理性が飛ぶと人間らしい考えが出来なくなる。そうなればベポの事まで手に掛けかねない。意識の端で聞こえてくるベポの声のおかげでなんとか正気を保っていられるが、いつまでまともな自分でいられるか…。
男が何かを仕掛けてこようとしたのが見え、傘を閉じ前へ足を踏み出した瞬間。目の前全体が白いモフモフになった。
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