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ウギョルの収録で連れて来られたのは、何故かさっきまで僕が居た場所…。
そう、僕自身が所属する事務所だ。

どうせ戻ってくるのなら、最初からここに集合させてくれたら良かったのに。
番組も面倒なことをさせてくる。



「ミッションカード…。えーっと、…は?」

「…?どうした?」

「テグンにライブの練習を手伝ってもらう?」



案内された、練習生が頻繁に使う練習室。
やることも解らずそこでボーッとしていると、ミッションカードが手渡された。

書かれていたのは、"レオさんにライブの練習を手伝ってもらいましょう"というもの。
テグンに手伝ってもらえるものなんてあるとは思っていないし、そもそも練習なんてものはグループで行え(おこなえ)ば良いのだ。

それになにより…もう半日ほど(もしくはそれ以上に)練習をし終えたばかり。
これ以上踊ると身体を痛めるだけのような気がしたから、あまり乗り気にはなれない。

でも意味は解らないにしろ、このミッションに抗うことなんて不可能なんだろう。
いったい何を手伝ってもらうと言うんだか…。



「ん?またカードかい?」

「………。」

「なに、テグン。読み上げてよ。」



何を手伝ってもらうんだか、と思っていると、今度はテグンに向けてスタッフからミッションカードが手渡される。
テグンはそれを見た瞬間硬直したから、何が書いてあるのか僕には解らなかった。

読み上げてよ、と言えば、表情が歪む。
そんなに難しいものなのかと思ってカードを覗き込むと、そこには驚きの文字が書いていた。



「ミンスさんはTrouble MakerのNowをヒョンスンさんと披露します。ヒョンスンさんはスケジュールの都合で当分練習出来ないので、経験者のレオさんがミンスさんの相手役を務めてダンス練を手伝ってあげましょう…だって?」



ミッションカードの内容に、僕も目を見開く。
テグンがNowを踊っていたということにも驚かされたが、ヒョンスンのスケジュールの都合で当分練習に参加出来ないというのも、初めて知った(番組の嘘かもしれないけど)。

しかもこれ、ネタバレになるんじゃ…。
いやでも放送スパンで言えばもうライブで披露したあとだから…良いのか?

思わず舌打ちをしたくなったが、それを我慢して大人しくストレッチを始める。
戸惑うテグンにもストレッチをするように視線で促せば、テグンも諦めたようにゆっくりとストレッチを始めた。

僕とヒョンスンのTrouble Makerはライブだと安定のもので、僕がヒョナのパートを務める。
ヒョナから教えてもらっているから、完璧と言ってもおかしくはないのに…。
何故こうなるんだか。



「じゃあ、練習でも始めようか。」



充分に身体を解してから、いよいよあの問題であるTrouble MakerのNowの練習が始まる。
テグン、ヒョンスンのパート踊れるのか…?

曲が流れ出し、僕だけは歌の練習も兼ねて歌入りではあるけれど、軽く歌う。
テグンはヒョンスンの歌声に合わせて、ただひたすら踊るだけ。

至近距離に戸惑いを感じるものの、相手をヒョンスンと思えばなんとかならなくもないと思ったのに、それは無理そうだ。
テグンを必死にヒョンスンだと思い込んでその場を凌ごうとするが、テグンも戸惑いを感じているようでヒョンスンとはまた違った。

相手が違うのだから、ヒョンスンだと思い込めないに決まっている。
動きからして違うし、そのタッチが遠慮がちだからこそ戸惑いも大きくなるんだ。
…僕自身が戸惑っているからこそ、テグンに大きく出ることは出来ない。



「ごめんなまえ…多分、ちょっと忘れてる。」

「いや、良いよ…。」



1曲分を流し終えてテグンが僕に謝ってくる。
きっとテグンのことだ、僕にまた文句を言われるとでも思っていたんだろう。
だからそれについて触れないで流すと、テグンは驚いたように目を丸くした。

どうして、なんだろうね。
ヒョンスンが相手なら普通に演技でもして色気なんかも出せるのに、テグンになるとどうしてこうも無理なのか…。

番組の内容が内容だからなのかな。
今まで異性として見てきたのなんて、正直あいつしか…居ないから。
いざ異性で恋仲となると、感情も狂うらしい。
それが例え演技で偽りの関係であっても、だ。



「突然のこれは、さすがに心臓に悪いよ…。」

「……………。」

「…なに、テグ、っ!?」



結婚だなんて当たり前にしたことないし、恋愛経験だって豊富なワケでは…ない。
だから突然夫婦関係になっても上手く演じることが出来なかったし、今もこうして、距離感をきちんと掴めていない。

それなのに、急にこんな至近距離なんて。
番組も酷な内容を考えるものだね。

それに対してボヤくと、痛いほど僕に視線を向けて来るテグン。
「なに」と反応するとほぼ同じタイミングで、テグンは僕の身体を包み込んだ。

それに慌てないほど、僕は落ち着いていない。
突然のアクションに思わず身体を固くすると、耳元でクスクスと笑い声が聞こえてきた。



「…なんだよ、テグン。」

「いつも余裕ななまえも、焦ることもあるんだな…と思って。」

「煩いな…僕だって、いつも余裕があるワケじゃないんだよ。離して。」



なるほど、つまり…。
これはテグンなりの反撃、というわけか。

からかったり叱ったり、いつもテグンを攻めていた僕に対して、まさかテグンが反撃して来るとは思わなかった。
だってBEASTのメンバーも、約1名を除けばとくに何もして来なかったし。

ああ、油断していた。

離せ離せと僕がもがいてみても、テグンは僕のことをまったく離してくれない。
馬鹿集団(BTOB)の話じゃ、テグンはこんなことをするような奴じゃないはずなのに。

しばらく足掻いてから、ようやく解放される。
はぁ、と溜息を零すと僅かにテグンの表情筋が緩んだ…ような気がした。



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