03 ( 3 / 6 )
ウギョルハウスの中に入って、真っ先に向かうのはワガママを言って買ってもらったハムスターのぬいぐるみがあるところ。
そこに駆け寄って行くと、後ろからテグンの呆れたような溜息が聞こえた。
「ハム五郎、良い子にしてた?」
「…名前、付けたのか?」
「名前がないと可哀想だろ?」
「……………。」
この前買ってもらったこのハムスターのぬいぐるみの名前は、"ハム五郎"。
名前があった方が良いと思って名付けた名前だけど、どうやらテグンは僕のそんな行動が不思議でたまらないらしい。
もふもふとした触り心地を堪能していると、ハム五郎はテグンに没収されてしまった。
抱き締めるようにハム五郎を抱えるテグン。
なんだか似合ってないことはないから、ちょっとだけ可愛いと思ってしまった。
「それ、僕の。」
「………別に、なまえだけのものじゃない。」
「僕のだよ。名付けたのは僕だもん。」
返せよ、とハム五郎の取り合いが始まる。
きっとこれは、テレビ越しでは戯れているようにしか見えないんだろうな。
結構本気で取り合ってるけど。
結局、当たり前に男のテグンの力には敵わず、テグンは何故か自身の膝の上にハム五郎を乗せて隣に座ってきた。
僕とテグンが座った途端に渡される、ひとつのミッションカード。
「またミッションか」と思いながらそれを見ると、今回は特別変なミッションではなかった。
「ふたりの新婚旅行に行くために行き先を相談しましょう、ねぇ…。へぇ、番組の結婚でもちゃんと新婚旅行に行くんだ。」
「…たぶんそれ、言っちゃだめだと思う。」
ウギョルと言うものも、どうやら無駄に手が込んでいるらしい。
仮想の結婚生活だけでなく、新婚旅行まで行かせてくれるとは…思ってもみなかったよ。
インドア派な僕からしてみたら面倒なものだったけれど、たまには旅行も悪くない。
テグンにもそれを見せると、テグンは何かを考えるかのようにハム五郎を抱えて顎を乗せた。
…だから、可愛くないことはないから、そういうことはやめてくれないかな。
これだと、僕が持ち辛くなるだけじゃないか。
「…なまえは…何処に行きたい?」
「僕?飛行機で行かなきゃいけないならフライト時間が短いところが良い。」
「なら…日本か、中国とかか…?」
「日本、ねぇ…。」
飛行機に長時間乗ることを嫌う僕。
だから海外での公演は、いつも隣に座るドンウンやギグァンに文句を言っていた。
たまにヒョンスンも隣に座るけど、ヒョンスンの場合はまったく訊いてくれない。
フライト時間が長ければ長いほど、腰やお尻が痛くなるから好まないんだ。
それを言えば、候補に挙がったふたつの国。
"中国"か"日本"。
日本となればライブ以外での久しぶりの帰国ということになるから、僕自身はまあ、それはそれで良いんだけど…。
あそこには、会えば煩い人が居る。
だけど、会わなければ問題はない。
飛行機を使ったとして、別に韓国国内でも良いとは思うが、テグンの頭の中では海外という考えが出来上がっているらしい。
…このまま流れに任せても良いかな。
「……日本は?」
「なんで?」
「なまえの故郷だし…言葉が通じる。」
「…あっそ。僕は通訳なわけね。ふぅん、そっか。テグンは僕のことを通訳さんだと思ってたんだ。知らなかった。」
「いや、そうじゃなくて…。」
テグンはどちらに行きたいんだろう。
そんなことを思っていると、テグンは日本はどうかと提案して来た。
行きたいところでもあるのかと思って理由を訊ねると、返ってきたのは僕が思っていた返答とは異なるもので。
ちょっとからかってやると、テグンは慌てたようにどう言えば良いのかを考えていた。
でも確かに、テグンが言うことも一理ある。
中国語なんて僕は話せないし、多分テグンも話せないんだろう。
僕はジン兄みたいに英語が話せるわけじゃないから、英語もだめだし。
そうなるとやっぱり、無難に日本だろうか。
日本であれば僕が日本語を話せるし、通訳を通す手間だって省ける。
でも、問題は何処へ行くか、だ。
「テグン、日本に行くなら何処に行きたい?」
「……………………………スカイツリー…?」
「悩みに悩んだ結果がそれか。別にどこでも良いんだけどさ。」
目的地がなければ、何処の都道府県に行けば良いのかも解らない。
そこでテグンに何処に行きたいのかと訊くと、テグンは散々悩んだ挙句絞り出したかのようにスカイツリーと言った。
まあ、スカイツリーはもちろん僕も行ったことがないから、良しとする。
特別行きたいワケではないけど。
東京タワーの透けてるところに行くよりもよっぽどマシだね(ただの高所恐怖症)。
「テグンがどうしてもスカイツリーに行きたいって言うなら、行っても良いよ。」
「……………(なんでも良いか…)。」
「他はどうするの?丸1日スカイツリーなんてものは嫌だよ。」
「…なまえが行きたいところは?」
30分くらいスカイツリーに居るなら、まだギリギリ良いとしよう。
だけどこのままだとスカイツリーしか目的が無いから、ずっとスカイツリーにだけ居る、というのは全力で拒否する。
他に行きたいところが無いか訊くと、逆に僕が行きたいところを訊かれた。
特別行きたいところはないから、どこが良いかと言われても困るものがある。
東京となれば、だいたいはBEASTとも行ったことがあるしね。
「僕はBEASTのライブや仕事で良く日本に行っていたし、故郷だから特にはないよ。」
だから選択権はテグンにあげる。
そう言うと、テグンは再び考え出した。
日本ってあれだろう?
某夢の国にでも行けば、だいぶ制覇することになるんじゃないか?
まあ、あんな人混みの中になんて、死んでも行かないけど。
僕は人混みが大嫌いなんだ。
「………お台場…?」
「お台場何もないよ。」
「………東京タワー…?」
「スカイツリーに行くでしょ。」
「………富士山…?」
「富士山は東京じゃないよ。」
「……………解らないから、どこでも良い。」
テグンの案を次々と却下していくと、テグンは僕に匙を投げてきた。
却下してばかりの僕も悪いけど、日本人だからこそそのスポットの面白さを知っているから、どんどん却下してしまう。
まあ、もともとインドア派なのも原因のひとつなんだろうけどね。
ジン兄には何が何でも訊きたくないし…行き当たりバッタリでも良いか。
prev next