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珍しいこともあるものだ。



「テグン、これで遊ぶらしいよ。」

「遊ぶ…(とは)。」



ウギョルハウスで召集を掛けられ、いざ集まると目の前には白いキーボード。
そして何も書かれていない、真っさらな五線譜用紙が複数枚並べてある。

どうやらこれらのものを使って、僕たちで歌を作るらしい。
いったい何に使うと言うんだか…。

まあ、そんなことは置いといて。
何が珍しいかと言うと、白いキーボードの脚の部分、すごく目立たないところ。
そこにJin.Aと刻まれていた。

それを見付けたとき、スタッフにそのことを指摘すれば「バレましたか」と笑うだけ。
だけどこれが仕組まれたことだった、ということにはすぐに気が付いた。

つまりこれは、ジン兄からのプレゼント。
収録が終わればこれは僕が貰って良いらしい。
こんな洒落たプレゼントも出来るんだ。



「俺、ピアノ弾けるけど…なまえが弾くか?」

「僕は歌わない。」

「解った。」



話しを戻すと、今日はふたりで歌を作るみたいでピアノは誰が弾くのかと話題に上がる。
どうやらテグンもピアノが弾けるらしいけど、そこは譲れない。

歌は歌わないって言ったけど、BEASTでは歌っているし、不思議だろうとは思う。
あれだって好きで歌ってるわけじゃない。
ラップが少ないときや、ダンスのパート都合で歌を歌っているだけなんだから。

指慣らしで、一曲。
曲は僕たちの曲で、Shadowだ。



「Shadow…。」

「ジュニョンに頼まれて弾いたことあるんだけど、意外と覚えてるものだね。」



ピアノバージョンも聴いてみたい、ということで過去に頼まれた、Shadowの演奏。
前のヴィジュアルバンドと言い、意外と記憶力は悪くないみたいだ。

右は主旋律、左は適当な重ねで弾いていると、テグンの歌が入った。
歌詞は覚えているところと覚えていないところがあって曖昧だけど、テグンの歌声は聞いている側としてはとても心地が良い。

さすがボーカル班、と言うべきだろう。
僕なんかじゃ、こんな歌は唄えない。



「よし、指慣らしも出来たし…。テグンは作曲の経験、ある?」

「…ない。」

「…僕もない。ジュニョンに任せてたから。」



指慣らしも終わって、いざ番組の指示通り作曲をしようと思った矢先。
当たり前に僕は作曲経験は無いけど、どうやらそれは、テグンもらしい。
幸先不安過ぎる。

ピアノが弾ける、と言っても、幼少期から韓国へ渡るまで趣味程度に習っていただけで。
専門的に勉強していたわけもなく、ただ普通に与えられた譜面を弾いていただけだから…。
まあ、作曲の知識なんてあるわけないよね。



「…どうしよう。」

「うーん…。テグンはバラードが良いとかアップテンポが良いとか、そういう希望、ある?」

「特には…ないな。」



ああ、困った。
初めての作業にも戸惑うし、お互いにこれといった曲への要望もないから困る。

…ああ、でも。
テグンの綺麗な歌声には、バラード調の曲がよく似合う気がする。
僕も参加しなきゃいけないなら、ミディアムバラードでも良いかな。
バラードにラップもかっこいいけど。

知識はない。
だけどふと思い浮かんだメロディを、すこしずつ、考えながらゆっくりと奏でる。



「バラード?」

「うん。テグンの綺麗な声には、バラードがよく似合うと思ったから。」



僕の弾く曲調で気付いたのか、「バラード?」と聞いてくるテグン。
フラット系の曲でバラード、という曲調は単に僕の好みでもあるけど。

やっぱり、テグンの声に似合うと思った。



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