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早朝に練習を終え、2時間あるかないかの仮眠を取ってからウギョルの練習に合流する。
カムバックを控えているからこその忙しさ、なんだろうけど…寝不足が酷い。

先に到着していたテグンは、僕を見付けるなりぺこりと頭を下げて挨拶をして来た。
それに応えるように片手を上げて、"ふわぁ"とあくびをひとつ。

充分に寝たの、最近だといつだ…?
いや、記憶出来るほど充分に寝たことなんてないような気がする。
この忙しさももう、慣れたようなものだけど。



「…なまえ、さん…。この前は、いろいろと…すみませんでした。」

「ん?」



もう一度自然と溢れ出たあくびを噛み殺していると、遠くの椅子に座っていたはずのテグンが僕の側に近寄って来た。
僕に近寄って来たかと思ったら、すぐに口にされる謝罪の言葉。

なんのことだ?、と一瞬考えたけど、そうか、前回の収録後のことか。
あんな出来事、僕はすっかり忘れていたんだけど…どうやらテグンは違うらしい。

どうやらテグンはひどく気にしているようで、落ち込んでいるようにも見えた。
ガタイが良いし背も高いのに、何故か犬の耳と尻尾が見えるのは…寝不足だからかな。



「…ちゃんと、切り替えます。」

「うん、当たり前だよね。」

「すみません、でした。」

「別に。そのことに対してテグンから謝ってほしいわけじゃないから良いよ。」



ぺこりと頭を下げるテグン。
僕より年上がこんなにぺこぺこするなんて、絵面的にはかなり変なんだろう。

それに、こんな性格ではあるけど、人から頭を下げられるのは苦手なんだ。
とくに年上から下げられるのは嫌い。

別に良いよ、と言えばやっと頭が上げられる。
年齢は大きく差はないのに、やっぱり経歴が違うとこうも態度が変わるんだね。



「ところでさ、キミはいつまで僕に敬語と敬称を使うつもりなの?」

「え?」

「僕は要らないって言った。嫌ならそのままでも構わないけど、僕は別に、ウギョルのときのまま接してくれても構わないんだけど。」



少し気になっていた、テグンの敬語と敬称。
僕は自分が使わないものを他人から使われることがすごく苦手で、逆に気になった。

確かに、経歴は先輩だけど年齢は後輩なんだ。
テグンがどうしても敬語と敬称を無くさないと言うのであればそれでも構わないが、そんなものこれから一緒に仕事をしていく中で鬱陶しいものになりかねないのに。



「…良いのか?」

「良いよ別に。僕はそんなもの気にしない。」



縦社会と言うものは、確かに存在する。
だけど僕は日本人で、日本人は然程気にすることではないから、どっちでも良い。

遠慮がちに小声で確認するテグンに肯定の言葉を返すと、テグンはへにゃりと笑った。
その笑顔が…昔よく向けられていた笑顔に似ていて、なんだかモヤモヤする。

『なまえ。』

僕の名前を優しく呼ぶ声が耳に反響して、ギュッと胸が締め付けられる。
あれだけ吹っ切れたと思い込み、そして今でも近付いてくる彼を邪険に扱っていたのに…。

未だにへばりつく記憶は、僕にもまだ未練があった、という証拠なのだろうか。



「それでは収録を始めます。」



モヤモヤとした気持ちが胸を締めていたとき、スタッフから声が掛かる。
それでやっと、正気に戻れたような気がした。

そうだ、あれはもう、過去のこと。
今さら気にしたところで仕方がないし、僕はもう吹っ切れているんだから。

今はテグンの奥さんとして、BEASTのミンスになりきらなければいけない。
気持ちを切り替えて挑まないとね。

…今ここにモヤッとボールがあったら、あいつに全力で投げ付けてやりたいよ。



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