舞台は次のステップへ
書類を目の前の人間に手渡す。その人は中身を見ることなく机に置き、こちらを見据える。
「意外でした。呼び戻されるとは思わなかったもので」
素直な感想を述べるも、特に気にすることでもなかったのか返事はなかった。代わりに別の質問が投げかけられる。
いつものことだ。俺の言葉になにかを返してほしいわけでもなく、相手も返すつもりはない。
「吹っ切れたか」
「ええ、まあ。一歩が違えばああなっていたのかとは思いました」
「それでいい」
大阪でしばらく事件の捜査でもするのかと思っていたが、まさか一時的に呼び戻されるとは思ってもみなかった。
延期された遊園地は結局俺も連れられて行くことになってしまい、男だらけで楽しむ羽目になってしまった。子供である平次くんもコナンくんも遊園地にいきたかったのか、少し不服そうな顔をしていたが、俺のプライベートには踏み込ませるつもりはなかった。
そうして休暇を楽しんだ神永たちは、帰る直前に夜行バスのチケットを手渡してきた。念入りに、俺たちの上司の名前を出してまで。
おかげで名目上は長期の出張として東京にとんぼ返りすることになってしまったのである。
次の仕事だ、と、差し出された分厚い紙束に内心辟易しながら受け取る。毎度のことながら、それなりの量の束にする必要はどこにあるものか。
ご丁寧につけられている表紙をめくり、目についた一文を読んで固まった。
いや、まさか。そんなことあるわけないだろう。
「期限は貴様が向こうで取ってきた日数…つまり、一か月。それまでにそれを終わらせろ」
目の前の人…結城さんは冷静に告げる。
一か月でこれを終わらせろというのはハイレベルな任務だ。協力者は佐久間さん、二人であるならまだリスクは軽減できる、が…これは。
「いいんですか、これ。佐久間さんにはきついのでは?」
「構わん」
「…わかりました。あの人にはこっちから伝えておきます」
踵を返し、結城さんの執務室から出る。もとより頑固な人だ、俺の言い分など聞くつもりはないだろう。そもそも俺にはあの人の思惑はわからない。
それにしても、と、書類を見返す。本当に面倒なことになってしまった。
佐久間さんは彼のことをそれなりに気に入っているだろうに、まさかこんなことになるとは。伝えようと思っただけで気が滅入る。
「三好が死んだ、ねえ」
手元にある資料の中の一文には、三好の偽名と、その人間が死亡した旨が書かれていた。
昨日にさよなら!
(過去は過去だ)
(未来を歩むために過去を知ろうか)