はじめまして、と声がする
着替えて一回に降りると、黒のタンクトップ姿の母さんがいた。頬に新しい傷ができている。やっぱり朝からサイホーンに乗っていたらしい。
僕に気づいたらしく、こっちに走ってくる。
「おはよう、コトア!引越しの疲れは取れた?」
「おはよう…まあまあ、ってところ」
「あら…でもま、ちゃんと隣には挨拶に行きなさいよ」
「ご飯を食べる前に行ってくる。コウ、セイ、出かけるよ」
ヤヤコマを追い掛け回していたらしい二匹が呼びかけに応じる。腰についたボールを向け、二匹を仕舞った。
美味しそうな匂いを漂わせる鍋をかき混ぜる母さんに「行ってきます」と告げた。多分今日の朝ごはんは母さん特製のコーンスープ。ちょっと楽しみだ。
木製のドアノブをひねり、玄関のドアを開ける。
すると見覚えのない人が家の前に立って喋っていた。人数は二人、しかも両方女の子。もしかして近所の子供達って、この二人だけなんだろうか。別の人だったらハーレムだって喜ぶかもしれないけど、同年代の男の子がいない…っていうのは少し辛い。
扉を開けたまま固まった僕に気づいた二人がこっちを見る。
「ようこそ、お隣さん。私はセレナ」
明るい茶色をポニーテールにしている女の子が先陣を切った。眉がキリッとしていて意思が強そうだ。黒のニーハイと黒のタンクトップ、ルージュのスカート。スラッとしているスタイル。多分この子はモテるなと直感で思った。
「あたしはサナでーっす!よろしくね!」
続いて名乗ったのは、ちょっと肌が焼けている女の子。チョコレートみたいな髪を二つ結びにしている。服装的には…うーん、可愛いものずきなのかな。ピンク色の装飾が多い。
多分一般では可愛いって呼ばれるタイプなんだろう。
ぼーっとしてたけど、いつまでもドアを開けっ放しにはしていられない。中からヤヤコマが出てきて足を突っついてきた。
慌ててドアを閉めて二人に向き直る。この流れで行くと、次は僕が自己紹介する番なんだと思う。
「え…っと、この街に越してきた、コトアって言います。今から挨拶に行こうとは思ってたけど…どうしたの?」
「あたしたち、あなたを呼びに来たんだ!」
呼びに来た、とは。
先手を取られてペースのつかめないまま話が進んでいく。ちょっと待って、状況を理解させて欲しい。
僕の困惑する様子を見た二人は、そこで畳み掛けるのをやめてくれた。察しのいい人たちだ。
「ほら、各地方には凄い博士がいるでしょ?もちろんこのカロスだって例外じゃなく、プラターヌっていう博士がいるわ。
その博士が、私たち五人に頼みたいことがあるって言ったのよ」
「僕たち…五人?」
三人じゃなくて?あたりを見回しても残り二人が見当たらない。
首をかしげていると「なんでアサメにきたばかりのあなたが選ばれたのかはわからないんだけどね」と付け足された。なんだか馬鹿にされたような気がしなくもない。
「ほら、とにかく行こうよっ!新しいポケモンもらえるんだよー!」
ピンクの女の子…えっと、サナちゃん?かな、その女の子が待ちきれないで飛び跳ねた。セレナちゃんって言ってたほうも心なしか嬉しそうだ。
ちょっとほかの人にも挨拶してから行くよ、と告げて二人の脇をすり抜ける。しょっぱなから遊びに行くのもいいけど、挨拶はきちんといておかなきゃ。
「メイスイタウンのカフェテラスで待ってるからねー!」
サナちゃんの元気な声が最終目的地を教えてくれた。