行動と感情の相違について
※ハルカ視点
慌ただしく出て行った背中を見送ったあと、やっと一息つけると安堵する。彼は何のこともなくあんな言動をするのだからいただけない。
隣で博士の心配をしていた助手さんも、彼との一連のやり取りで少しでも気が紛れたらしい。青白くなっていた肌も心なしか白に戻っている。
「とても面白い方なんですね。彼も、あなたも」
可笑しそうに目尻を下げて微笑む女性に、照れくさくなって顔を隠す。自分としては、あれほど強く叩くつもりはなかったのだ。ただ思っていたよりも早く拳が飛んだだけで。
そもそも、彼…名前くんが、あんなにたらし込むような仕草をするのが悪い。世の中全てとは言わないまでも、きっと彼に惚れてしまう人は多々いるだろう。ともに旅をしているわけでもないのでわからないが。
そんな私の様子を見てか、助手さんはとうとう小さく吹き出して笑った。仲が良いみたいで、と笑い声の間から聞こえてくる言葉にますます顔が熱くなる。
ポケモンだってメスを多く持つ彼だ。しかも最初のパートナーだったアチャモは彼に完璧に惚れている。恐らくそういった「異性への扱い」をさりげなくマスターしているんだ。
というより、そうとでも思っておかなければ、感じた胸の高鳴りの説明がつかない。
彼は昔から感情には疎いから、きっと自分のパートナーが女の子として必死に魅力を磨いているなんてことは知らないんだろう。前途多難な彼女の恋路を応援するばかりだ。
「り、リオルを探してきます!」
さっきからずっと笑いが止まらない助手さんとの空気がいたたまれなくなって外に飛び出す。別に私はそんな、彼のパートナーのような感情は抱いていない、はず。
名目として言い残してきた言葉だったけれど、折角シズクくんが任せてくれたものだ、やるなら早めに済ませておいたほうがいいかもしれない。
リオルというポケモンはちゃんと見た覚えはないけれど、110番道路で名前くんと鉢合わせたときに隣にいたポケモンだと思う。
そういえば、彼はなぜあのリオルを手に入れたのだろう。この地方では見かけないポケモンは相当注目されるはずだけれど、ボールに入れる様子もない。
ボールに入れたら今回みたいなことは起こらなかったのになあ、昔はこんなことしてなかったのに珍しい、と首をひねりながら113番道路に足を運んだ。
あれ、昔っていつだっけ。
頭が訴える信号に、私が気づくことはなかった。