出会う
カイナシティの船着場。
よろよろしながらタラップを降りると、呆れ顔のシズク君が立っていた。
「…よ、大丈夫、ではないな?」
「うん……ふ、船がね、嵐に巻き込まれてね…うっ、」
「あー、わかった、話すな話すな、これ飲んで落ち着け。」
さっとシズク君が差し出してくれた酔った後でも効く酔い止めドリンクを飲むと少し気持ちが落ち着いてきた。
「せっかく、ホウエン観光に来たのに…最初からこれじゃやだなぁ…」
「…俺はグリーンさんになんて報告すりゃいいのかで悩んでるよ。」
船酔いスタートです。なんて言ったら笑われるに決まってる。
と、ため息をつきながら言うシズク君。
「つーかさ、聞いていい?その前髪。」
「!!…や、やっぱり目立ちます?」
ばっとおでこを押さえると、シズク君がちょっとだけ考えたあといや、と答える。
「可愛いと思うけど?」
「!」
ストレートなシズク君の感想に、思わず固まる。
へ、変では、ない…のかな?よ、良かった…
気分もすっかり良くなった私とシズク君はカイナの市場へと繰り出した。
そこで見つけたのはビーズアクセサリーの露店。
「わー、か、可愛い…いろんなポケモンのビーズ作品……!」
「そんなに高くないし、買って帰れば?」
シズク君の提案に乗って、私は自分へピカチュウ、グリーンさんへのお土産としてイーブイの形をしたビーズアクセサリーを買うことにした。
ちなみに、付き添ってくれたお礼に…とシズク君にも買おうとしたら断られた。
「…男の人じゃそういうのつけないと思うけどな。」
「えー、そうかなぁ…グリーンさんならたぶん付けてくれると思うの……というか、ほんと可愛いー!光に当たるとキラキラするしー!」
ストラップをつけてもらったそのビーズアクセサリーを目の高さにあげて眺めながらカイナの街を歩いていると、ぶちっと嫌な音がした。
そして、
「あああああああ!!」
ポロポロと、イーブイが崩れ落ちてビーズが辺りに散乱する。
「なにやってんだよサチコ!」
「わ、わた、私は何もしてな……!ああ、すみません!踏まないで……!!」
ビーズがどんどん散らばって行って、道を歩く人々によって幾つかは潰れる音がしている。
必死にしゃがみ込んで近くにあるビーズを拾っていると、ふと、頭上が暗くなる。
「…?」
顔を上げると、そこには緑色の髪をしたメガネをかけた男の人が立っていた。
「なあ、何してんの?」
「ひゃっ、えっと、あの、その、イーブイ…じゃなくて、ビーズがですね……!」
必死に説明しようとする私の手に握られているものを見て、その人はああ、と自分で答えに辿り着いたらしい。
「露店のビーズアクセサリーね。どれどれ見せてみろ……あー、古いテグスのやつ買っちまったんだな。運悪かったな。」
イーブイとなっていたはずの糸を見てそう言ったあと、私とその隣にいるシズク君を交互に見る。
「あー、少年、「シズクです。」…そうか、シズクな。ちょっとさ、お使い頼まれてくんね?」
どこからともなく出したメモ帳にサラサラと何かを書いてその人はシズク君にお金と一緒に渡す。
「これ買った露店でも、その他の店でもいいからさ。カイナの市場なら揃うはずだから。」
よろしく、と言ってシズク君の反論を聞かずに背中を押す。
「…で、君はここに座る。」
「へ、あ、はい。」
道の端に置かれたベンチに座るように促されて、大人しく従う。
そして、目の前の道を見つめながらぽつりと言う。
「あー、まあ、なんだ。買ったやつは諦めろ。な?」
この道じゃビーズ全部回収するのは難しいから。と言われて、はい….と小さく答える。
ぽんぽんと慰めるように頭を軽く撫でられて、ちょっと目頭が熱くなってきたとき、
シズク君が走って戻ってくるのが見えた。
「…はい、メモ通り。」
「早かったな、サンキュ。」
まあ、シズクも座れよ。とシズク君から袋とメモを受け取ってベンチをぽんと叩いたその人に従って、シズク君が私の隣に座る。
「シズク君…えと、お疲れ、様…?」
「そんな疲れてないから大丈夫、それよりサチコ何もされてない?」
「へ?」
「心外だな、そんなこと考えて早く帰ってきたのかよ」
「だって、名前も知らない人と「リブレだ。」……リブレと2人きりでサチコが怖がってるかと思って。」
「ほー、あんた、サチコっていうのか。」
「え、あ、はい、自己紹介遅れましてすみません……サチコです!!」
「うん、今名前聞いてたから。」
面白いねぇ、サチコ。なんてケラケラ笑いながらリブレさんが袋から何かを取り出したり手を動かしたりしている。
「なあ、リブレ、買ってきたやつってさ…」
シズク君が何か聞こうとしたその時、ほい、完成!というリブレさんの声が重なった。
「はい、サチコ。イーブイ。」
ぱっとリブレさんが見せてくれたのは、さっきよりもずっと本物に近いイーブイのビーズアクセサリー。
「っ、…………っ!!」
「おー、そうかそうか、言葉にならないくらい嬉しいか。」
ぽんぽんとまた頭を撫でられるけど、まだ感動で声が出ない。
あんな短時間で…こんな可愛いイーブイが作れるなんて……!
「り、リブレさんは魔法が使えるのですか!!?」
「「…………は?」」
シズク君とリブレさんの声が重なる。
え、私、そんなに変なこと言った…かな?思ったことをそのまま伝えただけなんだけど…
「やべー、いや、サチコ、お前ほんとに……ちょっと、もう少し話そうぜ。シズクも。俺が奢ってやるから一緒にメシ行こう。」
「…サチコ引き連れて歩くと大変だよ?」
「は?なにそれ、それも詳しく聞きたい。」
わいわいと盛り上がり始める2人は、ぽかんとする私を置いて何かを決め始める。
(結局、魔法が使えるのか否か教えてもらえてないのですが!!)
((使えるわけねーだろ))