ジュリアさんとナマエの話
闇夜に浮かぶ黒いマント。少しだけ霧にさらされたそれは、しっとりと存在感を露わにしていた。
しかしそれは、この時間にここに存在しない、存在してはいけなかったはずのものだ。でも、確かにそれはそこにある。よく見れば、銀と青の螺旋が美しいネクタイを締めている。哀れな鷲の子が1人、問いに答えられずその羽を休ませているところだった。
「そこで何をしているの」
「僕ですか、寮に入れないからここで野宿してるんです」
「…哀れな鷲の子」
「そういうあなたは間抜けな穴熊ですね」
「穴熊でもボスになるわね、貴方、名前は?」
「名前・名字、今4年です」
「4年か、今1番たくさんのことが頭に入る頃ね」
「名乗らせておいて名乗らないのはどうなんですか」
「失礼、ジュリア・デュヴァラ。7年生。ハッフルパフ寮の監督生をしているよ。」
「なんと、これはとんでもない人に目をつけられてしまいましたね。僕のような落ちこぼれにこんな時間に声なんてかけてもいいんですか」
「こんなところにいて減点されてレイブンクローの連中はさぞイラつくでしょうね。でも今ここでわたしが貴方を助けたらどうなるでしょう?そういう迷惑もなくなる、貴方が落ちこぼれと罵られることもなくなる」
「善意ですか。いい迷惑ですね」
「ハッフルパフは貴方たちのように高貴な天才が揃ってるわけではないのよ。少しくらい頭が良いなら考えてみなさいな。」
「…心当たりがありませんね」
「思いやり、っつーんだよ 覚えといて損はないよ、若者よ。」
私の肩に手を当て、目をつむりなさい、と彼女は言った。
なぜだ、と考えた頃には彼女は杖を出して、目の前で華麗に振ってみせる。
なぜだか悪態をついていたさっきまでの彼女のそれとは全く違う声が、確かに呪文を紡ぐ。
なんだ、この人、天才だったのかよ。
飲み込んだ最後の悪態でさえ、この人には通用しない。
「Apparition」
そう紡いだ次の瞬間、ナマエとジュリアは確かにレイブンクローの談話室にいた。
「バラケなくてよかったわね、名前」
「これ、は、」
「みんなには内緒よ。貴方も使っては駄目。しっかり勉強して、使えるようにしてみなさい」
「僕、落ちこぼれですけど」
「…貴方には呪いがかかってるわね」
「何のですかね」
「レッテルを自ら貼っていくそういった考え方よ」
そう言ったネコ目の少女は「ま、貴方の周りにいる人間も使って生きていきなさい、狡猾な鷲の子。」
そういって姿をくらました。
「なんなんだか、あの人」
それから、学校の図書館の薬学の棚で彼女を見かけるのは雪がちらつく頃だった。
20170514
もいちゃんとこのカル君