無題

ミラとコトアくんのお話



エイセツシティを抜け、やっとここまで来たんだと思えるような荘厳な道を歩む。
雪景色だった背景が一気に茶と黒の無機質な建物へと変わる。
チャンピオンロード。ジムバッジをすべて集めた猛者がここに集結する。チャンピオンに挑戦するためには、ここにいる"門番"を倒す必要があった。

その無機質な道を進めば、奇抜なデザインのスーツに身を包み、パートナーのポケモンであろうドサイドンを横に従えた同じくらいの年齢の女の子が立っている。自分が門の前に立つ前に、彼女の方から声をかけてきた。

「Bonjour!私の名はミラ、ミラ=シャパン・デルマ。ここの門番をしているわ。」
「ミラ…よろしく。」
「貴方もこの試練の門をくぐり抜けに来たのかしら。」
「そう、なるんでしょうね。」
「Oups,何だかハッキリしないわね?何かあったのかしら?」
「いや…何でもないです。」
「…そうね、エイセツの寒さは人を変えるわ。さあ、貴方のバッジを確認しましょう。」

そうしてコトアが差し出したバッジを、ミラはしげしげと眺め、すこしうっとりしたような目をしてからうん、と一つだけゆっくりとうなづいた。

「よし。しかと拝見しました。…けど、ジムバッジを持っているだけではここを通さないことは、ブリーダーである君も知っているね?」
「…え、僕がブリーダーってなぜ分かったんですか」
「君の手持ちさ。ブリーダーは一気に6体以上持つからね、ボールの数が違ったりする。」
「流石の観察眼だ、けど僕はまだブリーダーじゃないんですよ。」
「え、ブリーダーじゃないの?もう充分ブリーダーっぽいのに。」
「はあ、そうですか。…まあ、とにかく始めましょうよ、バトルでしょう?」
「Oui,よろしくね。」

言うが早いか、ミラとコトアは同時に自分の仲間の入ったボールを放った。


***



「強いね、流石ブリーダーの卵さん。」
「ミラさんほどじゃないと思いますけど…」

正直言って、コトアは強かった。放られたボールから出てくる仲間の全てがやる気に満ち溢れ、同じくコトアを全力で信頼していた。対するミラも、門番だけあって強さには自信はあるが、ブリーダー志望のコトアにはかなわない、というところだろうか。

「ほんじゃ、コトアくんや、ここを通りたまえ。」
「ありがとうございます。ミラさんはいい肩慣らしになったかも」
「生意気め〜 今度会ったら本当のメンバーで懲らしめてやるから!」
「待ってます。」

そうして進んでいくコトアの背を見送るミラはなぜか、彼に全幅の信頼を寄せていた。彼なら、彼ならば。何を経験し、何を見聞きしてきたかなんていうものは分からない。けれど彼はきっとカルネでさえも倒せるかもしれない。そう、思った。

「がんばっておいで、未来の頂点。」

トリックで現れた階段を駆け上っていくコトアを眺めて、ミラは数時間後に訪れるだろう新たな展開に期待してふふ、と微笑んだ。




20160430

茂依ちゃんおめでとうでした。