コナラ&サザンカ01
「ぼ、ボス…」
アクア団だということを示す、カイオーガの手についていたものと似ているシンボルが刺繍されたバンダナ。胸元が開いている青い服。首にかけられたものは…船の碇?のようなペンダント、だろうか。
ぎらりと鈍く光る碇のペンダントには虹色に輝くものが埋め込まれている。今まで一度も見たことがないそのペンダントに、何か嫌なものを感じた。
その後ろにひとりの少女がいた。
まず第一に入ってくるのは首元の赤いスカーフ。黒い服の上に黄土の上着を羽織っていて、ホットパンツの両側にモンスターボールをかけるホルダーがある。
髪色はオフェリアだろうか、ブラウンのハット帽をかぶっている。いささか小柄で顔立ちは可愛い方だ。
多分、男の方はアオギリだ。アクア団のボスというのはアオギリしか思い浮かばない。
しかし予想外だったのはその少女。確かにこの地方では見ない顔立ちだが、それを除けばどこにだっている女の子と何ら変わり無い。だというのになぜこんなところに。
「やれやれ…」
アオギリらしい男が口を開く。
「パーツひとつ奪うのにいつまでかかっているのかと思えば、こんなガキンチョに手こずっていやがったのか」
その言葉遣いに少し、いやかなりカチンときた。確かにまだ成人すらしていない子供だが、ガキンチョというのはいかがなものか。一応俺も前世の分を足したら二十歳は過ぎてるんだけど。
とまあ、そんなことは言える訳もなく。
男の隣に移動したらしい少女が楽しそうに口を開く。
「そんなこといっても、アオちゃんは気になってるんだよね?」
アオちゃん。アオちゃんとは、まさかアオギリのことか。随分と可愛い名前になったもんだなアオギリ。
いや、その前になんでこの少女はそんなに親しげに名前を呼んでるんだ。アクア団の二人なんて「ボス」とか呼んでたんだけど。
見た目からして、アクア団でもマグマ団でもない、よな…誰だこの人。
アオギリはその人に適当な返事をして俺を見てくる。
「…ほう、確かにな。ただのガキンチョかと思えば、なかなかいい目をしてるじゃねえか!」
「でしょ?」
こっちをおいて二人で盛り上がるなよ。
言いたい気持ちをぐっとこらえて二人を警戒していたが、そんなことなど微塵も気にせず話し始める。それが何でもないことの話が多いので脱力しそうになる。
「ちょっと、用事がないならさっさと帰ってくれない?」
とうとう痺れをきらしたらしい、俺と共闘した少女が苛々とした声で二人にそう声をかけた。いつの間にやらサンダースが電気を迸らせて敵意を顕にしていた。
アクア団は水を中心としたポケモンが多く、電気タイプが広く効く。少女はそれを知っているのか知らないのかは定かではない。
それでも話をやめない二人に、サンダースは手加減なしの電撃を放った。
ズバットを一発で伸した一撃が人間に当たったら。想像するだけで背筋が凍る。
破片があたりを覆い隠し、電撃を受けた二人を見えなくする。どうするんだこれ、これはこっちが過失ってことになるんじゃないか?正当防衛なんかじゃないんだが。
慌てて駆け寄ろうとする俺を何かが阻んだ。
「まったく…危ないよ〜、反応が遅れてたら大怪我だったかも」
緑色の巨体。びりびりと震えていたその体が倒れこむ直前で、独特の赤い光に包まれて消える。ボールに戻されたのだろう。
さっきのはトロピウスだ。すぐに倒れてしまったが、あの攻撃に反応できるとは思っていなかった。
濁っていた視界が段々クリアになっていく。そこには砂埃にまみれた四つの人影があった。
あーあ、とつぶやきながら服を叩いて埃を払う少女を信じられない気持ちで見つめる。いやだって、いくらトロピウスが防いでたって無傷はないだろう。目立った外傷も見えないんだけど。
あのトロピウス、持ち主たちを守るために全力を尽くしたのか。
トロピウスを一撃で沈めてしまったサンダースも十分な驚異だったが、トロピウスの持ち主だってなかなかどうして侮れない。あいつはこんなに強い奴らと戦っていたのか。
「わたしは弱いけど、それでもいいなら受けて立つよ」
俺からしたら全然弱そうには見えないんだけどな!