世界と合わないチューニング
視界の端で、御幸くんが悔しさを湛えた表情でギリッと唇を噛むのが見えた。
周囲があげる喜び・或いは悲しみの声は、どこか遠く隔絶された空間の音かのように、どこかぼやけて遠く聴こえた。
私たちの夢は、今潰えた。
それでも涙が出ないのは、現実が受け入れられないからではない。自分たちはなぜ届かなかったのか、それをよく分かっていたからだ。
美智香の対旋律は平均4ヘルツ分ずつ音程がうわずっていて美しい和音にはなっていなかったし、山下のスネアは心拍数に比例するようにテンポが少しずつ早くなっていっていた。
御幸くんの指揮棒は、少しずつ崩壊していく音楽を立て直すことができなかった。
私たちの演奏は、はっきり言ってしまえば拙く、全国大会への出場を決めた学校は私たちよりも上手かった。
ただ、それだけ。
東京都大会金賞受賞。全国大会出場ならず。
いわゆるダメ金、それが私にとっての青道高校吹奏楽部最後の成績だった。