03

仕事が終わって帰って来てすぐ、スマホを出した。
フルーツポンチを提供されたときの紙ナフキンに、携帯と思しき電話番号と自宅に帰った後今日中に電話をするようにと記載があったのだ。
3コール目で、通話がつながった。


「もしもし、…名前です。」
「ああ。久しぶりだな。」
「うん、ほんとに…」


昼間に見た、「安室さん」とは全く違う、落ち着いたテンションだ。でも、知り合った時はこんな感じだったから、むしろ私にとっては安室さんの方が違和感がある。だってまるで安室さんの雰囲気は、


「なんで、ポアロに来たんだ。」
「たまたま、米花町で仕事があって。ちょっと時間が空いたから、お昼食べようと思って入ってみたの。」
「…まさか、知り合いが来るとは思ってなかったよ。咄嗟に黙っててくれて助かった。悪いな、食べるつもりじゃなかったフルーツポンチまで食わせて。」
「いや、私も迂闊だったよ。フルーツポンチで誤魔化してくれてよかった。…本当に裏メニューにあったの?」
「あるわけないだろ。あり合わせでなんとかしただけだよ。それより、初めて見た客が自分も知らない裏メニューを知ってることに違和感を持った梓さんを納得させるのが一手間だったな。」


久しぶりの降谷との会話は、決して弾んでいると言えるものではなかったが、何だか心地良かった。


「…元気そうで、安心した。」


ぽつり、と優しい声で呟くのが、耳元から聞こえた。


「ごめんね、みんな心配してくれてたのに。」
「気にするなよ。…俺たちで名前を支えてやることは、あの当時できなかったし。」


俺もヒロもあんまり迂闊に仲良くできるわけじゃないからな。
懐かしい名前に少し顔が綻んだ。


「諸伏くん、元気?伊達さんも。」


ここまでスムーズに進んでいた会話が、初めて途切れた。


「、あー…」


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