ネタ帳片手に夢女が歩く

梅東風抜ける縁側を一人の少女が舞うように走る。

「お待ちくださいませ、お嬢様…!」

その少女の背を追い掛けるはこの屋敷の女中が一人。
少女は脚こそ速くはないがその身軽さで滑るように廊下を突き進む。少女の向かう場所に粗方見当が付いている女中は青ざめながら何度も何度もその背に止まるよう願い出た。

「お父様、私でございます!戸を開けてくださいませんか?」

だが女中の甲斐虚しく少女は 溌剌とした大きな声で戸に向かい声をかけた。
少女の持つ盆の上には菓子と茶が二人分乗せられている。そのため自力で戸を開けることが出来なかった。勝手に部屋へ入らなかっただけマシなのか……いやしかし、中の者に戸まで出向き開けろと言った時点で首切り案件である。何故ならその部屋にいるのはこの屋敷の御当主様で在られるのだから。

「どうした?」

カラリという音と共に女中は固まった。当主の表情は硬く、鋭い眼光を少女へと向けている。このままでは少女のみならず彼女の世話係である自分にも何かしらの罰が下るであろう。首筋には一筋の汗が流れた。

「今日のお八つは苺大福なのです。私の大好きなお菓子なのでお父様と食べたく参りました!」

京都でも有名な老舗和菓子店の苺大福はこの時期でしか手に入らないもの。それを少女は大層好んでいた。薄い牛皮にはたっぷりの餡子がくるまれており、その大福と同じくらい大粒な苺がどんと乗せられている。小さな頬を口いっぱいに膨らませて頬張るほどに少女はそれが好きだった。

当主の手が少女に伸びる。もしや殴るのではないかと女中は息を呑んだ。なんせこの家は男尊女卑が当たり前の古い考えを持つ名家なのだ。加えて少し特殊な家系でもある。我が子であっても、いや我が子であるからこそその教育も厳しい。
女中は瞬き一つせず、その光景を浅い呼吸と共に凝視した。

「おぉ!そうかそうか。儂の分もあるのか、ありがとうなぁ」

しかし女中の考えとは裏腹に当主である男は片手に盆を、片手で少女を抱き上げふやけた様に笑ったのだ。目に入れても痛くない、そんな父親の表情をしていた。

「うふふ!あのね、中庭の梅の花が綺麗なの。それを見ながら食べたいなぁ」
「そうなのか。だが寒くはないか?お前が風邪を引かぬか心配だ」
「大丈夫よ!それにお父様のお膝の上で食べさせてくれるのでしょう?」
「むぐっ…お前は本当に可愛いなぁ。あぁ勿論だとも。お前が風邪を引かぬようお父様が守ってやろう」

少女はきゃっきゃっ言いながら当主の首に腕を回している。
まさかあの堅物が……そのまま凝視していれば当主と目が合ってしまい女中は慌てて頭を下げた。見てはいけないものを見たと思ったからだ。

「そこのお前、客人は帰られる。見送りを頼む」
「は、はい」
「いえ、まだ話はっ…!お待ち下さい御当主殿!」

当主は少女と盆を大切に抱え中庭へと足を向ける。その背を、慌てて部屋から飛び出してきた男が呼び止めた。彼は確か分家の人間だったか。ただその分家の中でも当主との謁見が許される上の立場の者だ。

当主は少女を抱き上げたまま振り返る。その表情は再び御当主殿の顔に戻っていた。その貫禄と圧に思わず当事者ではない女中までも背筋が伸びた。彼女の肌着はすでにじっとりと濡れていた。

「禪院家当主である前に儂はこの子の父親だ。娘との時間を割いてまで愚者の話を聞く気はない」

そこまで強い口調ではなかったのは傍に少女がいたからか。そうでなければきっと当主は庭の池に男を沈めていたであろう。
間一髪のところで命拾いした男は女中の案内も待たぬまま深々とお辞儀をし逃げるように帰っていった。

「はっ、」

女中があっけにとられていれば静寂が訪れた廊下に声が落ちる。もちろんそれは女中の声ではない。だが当主のものとも違う。ともなれば声の主は少女になるのだが普段の様子とその年齢からは考えられないようなやや低めの声であった。

当主は少女の顔を覗き込む。そのとき盆が揺れて僅かに茶が零れる。当主も動揺しているようだった。女中も距離は詰めずとも少女の顔が少しでも良く見えるよう身をかがめた。
そして、





「呪術廻戦の世界じゃん!!!!????」


叫ぶや否や、少女は泡を吹いて失神した。





私には大切な大切な、唯一無二の親友がいる。

出会いこそ忘れたが仲良くなったキッカケは覚えている。

小学三年生の夏休み明け。クラスの子達は休みにどこに旅行に行っただの、何をしたのだの話しに花を咲かせていた。
私はそれを聞いても全く面白くなかった。というのも私の両親は共働きで旅行の一つも行けなかったからだ。別に一人が苦痛だったというわけではない。ただ“どこへ行ったのか”というマウント争いに巻き込まれたくなかったのだ。

遂に私の番が来て「どこへ行ったの?」と聞かれた。というか出掛けた前提で聞かないでほしい。
だから私は「親が仕事だったから幽遊○書見てた」と正直に言った。夏休みの朝十時から始まる再放送のアニメタイムが好きだったから。

案の定、馬鹿にしたように笑うクラスの女子に私は苛立った。どんなに笑われようとも私にとってはいい夏休みだったのだ。暗黒武術会編での感動を知れないなど、なんて可哀想な人達なのだと心の中で強がりを言った。

「えっもしかして蔵馬に初恋奪われた同士?!」

そんな中、馬鹿にするどころかひとりの女の子が私の手をぎゅっと握り一気に距離を詰めてきたのだ。
その行為に驚きつつも私はこれまた正直に口を開いた。

「いや、私は蔵馬派ではなく飛影派なんだ。あと初恋は土井先生な?」
「合格っっ!!」

何に合格したのかはよく分からなかった。
だがその後は他に何のアニメが好きかどのキャラが推せるのかなど捲し立てるように質問された。

そう、その女の子こそが我が親友のあっちゃんである。



あっちゃんは三人兄弟の末っ子で上には年の離れた兄と姉がいた。兄弟揃ってアニメ好きとあり彼女の家には漫画喫茶の如く様々なジャンルの漫画が揃えられていた。

「幽遊○書が面白かったならハンターハンターもきっとハマるよ」

そして彼女は布教するのが上手かった。当時の私はアニメ好きとはいえ自分で新境地を開拓まではしなかった。でも彼女のプレゼンによりズブズブと沼にハマっていった。

ただ一つ言わせてもらうとあっちゃんとは推しキャラが正反対であった。初恋こそ土井先生ではあったが私は黒髪の目付きが悪いキャラが好きだった。片や彼女は明るい髪色の王子様っぽいキャラが好き。強キャラよりは成長できるキャラを、ツンデレよりはヘタレを、そして俺キャラよりは僕キャラをあっちゃんは好んだ。

でも私達は互いの好きを否定しなかった。みんな違ってみんな良い。現に私達は互いの推しキャラに敬意を払った。
カラオケで私がSakura acdictionを歌えばあっちゃんは骸パートを歌ってくれたし、彼女がThis Light I Seeを歌えば私は独自のハモリで盛り上げた。

同じ公立中学を卒業後、私達は高校も同じところを受験した。
学力においては私の方があっちゃんよりも下であったが、やはり同じ学校に行きたかったので必死で勉強した。

「尊皇攘夷に傾倒しイギリス公使館を焼き討ち、後に四カ国連合軍との和議交渉をまとめたのが……」
「押しの高杉晋助だ!!」
「高杉晋作だわ!漢字間違えるなよオタク!」

彼女のスパルタな教えの元、共に県内屈指の進学校に行くことができた。

そして高一の夏、初めてコミケに行った。小遣いを貯め早起きし電車を乗り継いであの戦場に出向いたのだ。だがしかし、不完全な装備と準備を怠ったせいで私達は白旗を上げて帰ってきた。

同じ年の冬、入念な準備のもと再度戦場に赴いた。当日トイレに並ばぬよう、前日は下剤を服用し固形物は食べずに過ごした。携帯の充電器、軽食、飲み物、そして宝の地図とキャリーケースを携えて赴いた。
その甲斐あって我が軍は勝利した。キャリーケースは二人で買った薄い本(全年齢対象)やアニメグッズでいっぱいになった。

「ねぇ、私も出展してみたい。今はまだ無理だけど三年後には塚不二と忍跡の本を作りたい」

心地よい疲労と高揚感に包まれた帰り道、夕日がアスファルトを橙色に染める。そこに影を落とし、あっちゃんは宣言をした。彼女の横顔は美しかった。

この頃のあっちゃんはすでに腐っていた。差別的な死語の表現になるかもしれないが腐女子であった。十八歳以下であったがお姉さんの影響もありそういった本も見ていたらしい。(※本当はいけません)

私は夢女だったので男性同士での恋愛に萌を感じることはなかった。でもあっちゃんを否定はしなかった。彼女の本はきっと誰かの性癖にも刺さるだろう。そしていつか神絵師と讃えられる日がくるかもしれない。それならば新たな神の誕生を親友の私が一番に喜んであげなければ。

「私、あっちゃんの夢応援するよ」
「ありがと!じゃあアンタはネタ出し担当ね」
「は?」

私は読書(ラノベ九割)も好きだった。だからネタも考えられるとでも思ったのだろう。事実、私自身妄想癖の強い夢女であったためネタを出すのも容易かった。私の妄想では推しキャラ×自分であったが、それを攻め(男)×受け(男)にすればよかったのだから。

高校時代は来るべき日に備えネタ出しやネームを作ったりした。
マックの冷めたポテトの味、スタバの薄まったフラペチーノ、ファミレスでシェアした薄いピザ……その全てが今思えば私たちの青春だった。

高校卒業後、あっちゃんは東京の大学へそして私は大阪の大学へと進学した。え?なぜ一緒のところじゃないかって?日本のイベントは主要都市の東京大阪での開催が多いんだ。だから遠征代を浮かすため私達はそれぞれに拠点を築いた。

あっちゃんと顔を合わせる機会は減ったがネットが主流の時代いくらでも連絡は取れる。漫画もデジタル化し、遠くにいながらも彼女のネームを手伝えた。

「いやぁ〜今日も盛況だったね!無事完売!!」

あっちゃんの夢は叶った。そして大人になっても私たちの関係は変わりなかった。
あっちゃんは東京の一流企業に、そして私も京都に本社を構える大手企業に就職した。私が大阪から京都に拠点を移したのは当時ハマっていたサタンの息子が主人公の漫画が京都不浄王篇に突入したからである。当時大阪から離れることは相当迷った。しかし、後に刀の付喪神が擬人化し私が京都刀剣御朱印巡りをすることになるのでこの決断は正しかったと証明された。

「旬ジャンルはヤバイね。どこもかしこも呪術だらけ」

出展者として参加したイベントでの帰り道。見かけは随分と変わったが、中身と夕日の色はあの時の私たちと何一つ変わっていない。そして新しいものにもズブズブとハマっていった。コナンも鬼滅もツイステも。そして今はじゅじゅの本を書いている。

「アンタ馬鹿みたいに夢本買ってたね」
「支部で好きな人が久しぶりに参加しててさ。思わず買い占めたよね」

キャリーケースに詰まった戦利品を思い出しにやけが止まらない。こんな気持ち悪い表情ができるのも、彼女が今さらそんな私に引かないと知っていたからだ。

「夏五は秒で売れたわ〜次は甚恵あたりも出してみようかな」

あっちゃんは今も変わらず腐ってる。夢本も書くし読むけど今はもっぱらBLの創作活動に力を入れていた。じゅじゅはイケメンが多くてCPも自在に組めるので書いていても楽しいらしい。そして今も変わらずネタ提供は私である。

「おっついに私の推しがあっちゃんの毒牙にかかる感じ?」

じゅじゅでの私の押しは伏黒甚爾であった。顔面ドストライクな上に性格もその生い立ちも全部ひっくるめて好きだった。ただ一つ引っかかる点があるとすれば既婚者ということだろうか。だがしかし、私の夢フィルターにかかればいくらでも補正は効くので問題はなかった。

「甚爾が攻めだからそこは何とも言えないけど…そういえばさ、」

目の前の信号が赤になり足を止めた。そうして隣に並んだ私を見る。彼女の曇りなき眼は夕日を反射し琥珀色に煌めいた。

「アンタが好きそうなキャラが本誌に登場したよ」

漫画に至って私は専らコミック派であった。発売日前日にはその二巻前から読み直し万全の体制で続きを見るのが好きだった。本誌のネタバレ情報を踏まぬよう自衛に努めるのは大変だがこれが私の昔からのスタイルだ。

「マ、マジで?!どんなキャラ?あ、でもネタバレはしないで!!」
「分かってるって!うーん…一言で言うとゲスい北○介って感じ。市丸ギンにも似てるかな」

何それ。絶対押せる。

「えー!!めっちゃ気になる!でも本誌は見たくないっ…!」
「来月発売の新巻には出てくると思うよ」
「そっかそっか!楽しみ!」
「マジでアンタの推しキャラになったら私がそいつの夢本描いてあげる」
「ほんと?嬉しい!あっちゃん大好…っ危ない!!!」
「え…?」

あっちゃんの背後から猛スピードでトラックが突っ込んでくる。
私は手を伸ばして――

視界、暗転。


◇ ◇ ◇


思い出した。

思い出したぞ!!


私達はあの時、歩道に突っ込んできたトラックに跳ねられ死んだ。
そして私は呪術廻戦の世界に転生したのだ。

今更トラ転には驚かない。何故なら支部で五百万回は予習したから。
よってここでの私の心情は割愛させていただく。


さて、ここで気にかかることが二つある。


まず一つは転生先が呪術廻戦の禪院家であったこと。
禪院家といえばみんなご存知クソ一族である。禪院家に非ずんば〜でお馴染みの男尊女卑の家系である。相伝の術式でなければ落伍者として人生をスタート、その中でも女はスタートラインにすら立たせてもらえない。

だがしかし、私には転生特典が与えられていた。
豊富な呪力に加えて反転術式を会得して生まれたのだ。反転術式では体の回復が可能だ。禪院家相伝の術式ではないがかなりのレア。
そして容姿が非常に整っていた。そりゃあ禪院家に生まれた時点で最低ラインは保証されていたがそれを差し引いても美しい。四宮か○やと胡蝶カ○エを足して二で割ったといえばお分かりいただけるだろうか?そのおかげかは分からないが父親の直毘人は私にめちゃくちゃ甘い。以上のこともあり一先ずこの家での人権は確保された。


そして二つ目は我が親友あっちゃんの存在である。

あの時、あっちゃんだけでも救おう手を伸ばしたが恐らく一緒に引かれた。だからこそ私は彼女もこの世界に転生したのではないかと考えた。

あっちゃんは執念深い女だ。ウエハースを手に入れるためにチャリでスーパーとコンビニを十三軒梯子できるほどの体力もある。また、押しへ貢ぐため史上最年少で一流企業の本部長にまで昇りつめた女だ。だからきっと彼女もいるはず。


あっちゃんを探す為にもまずは東京に行きたい。前世で京都に住んでいた私は京都に門を構える禪院家の子供として生まれ変わった。あっちゃんは東京に住んでいたし呪術廻戦の舞台はあくまで東京校から始まる。それに彼女の押しは五条悟だったので五条家の人間として転生している可能性が高い。

今すぐにでも行動を起こしたいが私の体は子供だ。それに呪霊と戦う術もまだ身につけられていないためこの屋敷から出た途端に襲われるだろう。

だが、幸いにも今は原作より十年以上前の時間軸だ。
私は来るべき時のために力をつけ、あっちゃんを探しに行く。

そう決意した、三歳の春であった。


◇ ◇ ◇


禪院家では幼稚園に通わせてもらえない。
というのも幼少期から勉強や術式の使い方を詰め込まれるからだ。
これは正直かなりのストレスだったが中身は成人済み、加えて学業においても前世の記憶があったので耐えることができた。それどころか勉強が出来すぎて神童とまで呼ばれてしまった。今後は手を抜くようにしよう。

「そうだ、お前に大切な話があるんだ」

そして相変わらず直毘人は私に甘かった。今だって胡座をかいた膝の上に私を乗せて頭を撫でている。いつだったかどこまでの無礼が許されるのかと思い髭を思いっきり引っ張ってみたことがあった。しかし、「あいたたた。駄目だぞぉ」とデレデレに注意されたので気持ち悪くてやめた。

「なぁに?お父様」

中身は成人済みなのでこの体勢は中々のセクハラである。だが私は純真無垢で礼儀正しい幼女を演じる。この家での立ち振る舞い方は頭に入っているので。

「お前にもうすぐ兄弟ができるぞ。お姉さんになるんだ」

兄弟???
そういえば直毘人には何人の子供がいるのだろうか。とりあえず私の上に兄が数人いることは確認済みだ。ただ相伝の術式を受け継げなかったため肩身は狭い。私が直毘人に可愛がられている分、彼等も私に近付かないのであまり接点はなかった。

てっきり転生者である私が末の子供かと思っていたが下ができるのか……私が生まれたことによりもしかしたら原作とは異なる歪が生まれてしまったかもしれない。だが家族が増えることは喜ばしいことだ。

「うれしい!私、立派な姉になります!」
「そうかそうか!お前は偉いなぁ。よし、小遣いをやろう」

あと可愛い顔をしてたら直毘人が小遣いをくれる。まぁ屋敷から出られないので使い道はないのだがあるに越したことはないので大切に貯金している。



月日は流れ、私に弟ができた。
ほぼ離れから出ない母親の元まで行き、おくるみに包まれた赤子の顔を覗き込む。

「直哉って言うの。貴方の弟よ」

へー。ふーん。というのが私の感想である。
兄達同様、弟の名前に聞き覚えはない。原作には書かれなかったモブキャラなのだろうか。
抱いてみなさい、と促され母からおくるみを渡される。それをおっかなびっくり受け取って間近で顔を合わせた。

「えっと…貴方の姉よ。よろしくね…?」

じっと見つめる直哉に辿々しく挨拶をする。私自身前世では一人っ子で親戚も近くにいなかった。そのため小さい子供への接し方が良く分からなかったのだ。
どきどきしながら見守っていたら「あー!」と元気に挨拶をされた。心なしか笑っているようにも見える。

可愛いと素直に思う。そしてこの時、私にはこの子を守ってやらねばという母性本能に近い感情が生まれた。

直毘人に気に入られているとはいえ私はこの家の確執を変えることはできない。兄達には悪いが彼等の立場を良くしてやることはできない。しかし、目の前の弟だけならどうだろうか。もしこの子に相伝は愚か術式さえなかったら酷い目に合わされる。息苦しい禪院家で穢れなきこの笑顔を守れないだろうか。まだ原作に追いつくまで時間もある。それに直哉がモブキャラであるなら私が手を差し伸べたところで原作には関わらないだろう。

「直哉、姉さんが面倒をみてあげるからね!」
「うー、あー!」

手を上げた直哉の手をふにふにと握る。
この家を出ていくまでまだ時間はある。

あっちゃんを探しに行く前に、立派な姉になるという目標を掲げることにした。





直哉の面倒は母ではなく乳母が見ていた。私のことも育ててくれた優しい女の人だ。その人と共に私は直哉の成長を見守った。その甲斐あってか初めて話した言葉は「ねーね」だった。ただの呼びかけだったかもしれない。でも私の脳内でそれは「姉」という単語に変換された。それほどまでに直哉のことが可愛かったのだ。

「ねえさん!おかえりなさい!」

私が小学生になり直哉にも自我が芽生えてくるようになると決まって出迎えをしてくれるようになった。小さな腕をいっぱいに広げて私に抱き着いてくる。

「ただいま。いつもありがとう直哉。今日もいい子にしてた?」
「おん、ええ子にしてたよ。やから頭なでて!」

柔らかな黒髪を撫でてやればもう一度私に抱き着いてくる。なにこの生き物。天使かな?

ただ直哉が言葉を話し出すようになり一つ気付いたことがあった。
この子は関西弁を話すのだ。
いや、ここが京都である事を考えれば不思議なことでない。しかし乳母も兄達もそして直毘人も関西弁ではない。私の記憶が正しければ原作キャラである真希と真依も標準語であったはずだ。それなのにこの子だけが関西弁を使う。なんか無駄にキャラが濃いように思えた。

「直哉はその話し方をどこで覚えたの?」

ある日、二人揃ってお八つである蜜団子を食べていたときに聞いてみた。
直哉は口に入れた団子を飲み込んで串を一度皿の上に戻す。こういう時の所作はさすがは名家のご子息といったところか。まぁ私も御令嬢ということで一通りのマナー教育は受けているのだけれど。

「どういう意味や?」
「ほら、今のとか。なんとか『や 』とか『おん』って返事をしたりするでしょう?」

直哉はうーんと一度首を捻り、再び私の顔を見上げて「分からへん」と言った。周りからの影響を受けて覚えたというわけではないらしい。
私との会話に区切りがついたため直哉は再び串を持ち上げ、最後の団子を口の中に入れた。お餅だからよく噛んでね、といえば「おん」と返事をする。本当に一体どこで覚えたのやら。

「直哉、口に蜜が付いてるわ」
「ん?」

自身の指で口元を拭うが付いてるのは反対の方である。逆よ、と教えてあげれば直哉はぐっと顔を近づけて「姉さんが取って」と駄々をこね始めた。最近では甘えられることが増えた。実母からの愛情がなかったからだろうか。それならば私が直哉に優しくせねばと蜜を拭ってやった。まぁ中身は成人済みなので。

「はい、取れたわよ」
「ありがとう!なぁ俺眠なってきた。姉さんの膝の上で寝てもええ?」
「風邪を引くかもしれないからお布団で寝ましょう?姉さんが敷いてあげるから」
「嫌や!姉さんの膝枕がええ!」

私が返事をする前に横になり膝の上に頭が乗せられる。甘えというよりはただの我儘だ。しかしここで私が怒れば癇癪を起し泣かれてしまうので受け入れるしかなかった。

「直哉ったら…」
「ここは俺の特等席やもん。なぁ頭撫でて」

しょうがないなぁと思いつつ頭を撫でてやれば「姉さん大好き!」と愛の告白をされる。天使の笑顔と共に言われてしまえばぐっと心に来るものがある。しかしさすがに弟に欲情はしない。前世持ちの妄想癖の強い夢女であれ常識は持ち合わせている。

「姉さんも俺のこと好き?」
「ええ。姉さんも直哉のこと好きよ」

そう答えてやれば不意に手が掴まれぎゅっと握られたので私もそれを握り返した。
私の弟は今日も可愛い。





直哉は本当にモブキャラなのだろうか。
それを再び考えるようになったのは彼が相伝の術式持ちだと発覚したからだ。

直毘人と同じ術式である投射呪法が直哉にも引き継がれていたのだ。原作で伏黒恵が使っていた十種影法術とは違うがこれも禪院家の相伝である。私が守らずとも相伝が確認された時点で直哉は次期当主候補とまで言われるようになった。

関西弁で相伝の術式持ち、加えて当然のごとく顔が良かった。兄達よりも整っている。こんなにも要素が詰め込まれた人間がモブなわけない。もしや私が知らない原作キャラか…?

そういえばトラ転前に本誌で新キャラが登場したとあっちゃんが言っていた。だが話を聞いた限りクズっぽいキャラのようだし可愛い直哉がそいつなわけない。それに原作では渋谷事変真っ只中。メロンパンもいよいよ戦線に立った。その新キャラというのもおそらく敵側なのだろう。

となると考えられるべきは一つ。
直哉もまた転生者と言うことだ。

それならば色々と辻褄はあってくるはず。もしかしたら腐った禪院家にメスを入れるために転生したヒーローポジの転生者かもしれない。



「直哉に前世の記憶はある?」

夜も更けた三日月が笑う夜、私はこっそり直哉の部屋へと訪れた。このような話、誰にも聞かれたくはなかったからだ。
眠そうな直哉にごめんね、と声を掛けつつも私は返事を促した。

前世持ちだから何と言うわけではない。ただ原作にはいない私という存在の説明はしておきたかった。そして直哉が本当にヒーローポジの転生者であれば私も協力したい。ヒーローならきっと灰原や七海、それに夏油傑を救済すると思ったからだ。

「前世…?」
「えぇ、つまり禪院家で生まれるより前の記憶」

目をこすり意識を幾分はっきりさせた直哉は私を見る。
雑音がない、静かな夜だった。

「ないけど、ひとつだけ分かる事あるよ」
「…!なに?」

私が身を乗り出して尋ねると直哉は布団から這い出て私の腕を引っ張った。想像以上の強い力で体勢を崩す。倒れこみそうになる体を片手をついて支えるが、直哉が全体重をかけて押し倒してきたので布団の中に倒れこむ形になってしまった。今世の華奢な体では抗うことができなかったのだ。
直哉は私の体に腕を巻き付け動けぬよう拘束する。私も抵抗するのを諦めれば、満足したのかぐっと顔を近づけてきた。

「俺は姉さんと出会う運命だったんよ。ずっとずっと俺らは一緒や」

そうやろ?と首を傾げた直哉は可愛いよりも雄の色が強く少し怖かった。でもこれは夜という状況下が創り出した幻だろうと深く考えはしなかった。

「そうなの?」
「おん。俺は姉さんのこと大好きやで。姉さんも俺のこと好きやろ?」

ここで否定の言葉を述べれば直哉の機嫌は確実に悪くなる。下手に出るわけではないがあくまでここは禪院家。直毘人にいくら可愛がられていようとも男尊女卑であることは変わりない。弟であってもそれは通ずるところであった。

「えぇ勿論よ」
「ほんま?相思相愛やな」

ふふっと笑い私の胸元に顔を沈めてきた直哉の頭を撫でてやる。
次期当主候補と呼ばれ直哉は見かけより大人びてはいたが中身は年相応である。ただ、幾分私への情が重い気がしなくもない。私に今まで兄弟がいなかっただけでこれが普通の距離感なのだろうか?それとも幼少期をこの閉鎖的な屋敷で過ごしたからか…まぁでも可愛い弟に変わりない。

「夜にごめんなさいね。もう部屋に戻るわ」

布団から出ようとすれば回された腕に力がこもり動けなくなった。
この頃の直哉はすでに術式と体術の稽古も受けていた。片や私は反転術式持ちだったことと直毘人の命令により術式の稽古しか受けていない。私の肌に傷一つつくのも許せないらしい。ということで四歳下の弟に力で勝つことができなかった。

「姉さんのせいで目ぇ覚めてもうた。そやさかい一緒に寝てや」

当然私に拒否権などなく、甘んじて受け入れる。そうすれば嬉しそうに笑ったので布団を掛け直してやった。

「これからもずっとずーっと一緒やで」
「はいはい。ほらもう寝ましょうね」
「おん」



残念ながら直哉は前世持ちではなかった。
そのことに落胆しつつも思考は斜め四十五度へと向っていた。

実のところ最近は直哉の仕草や挙動にきゅんきゅんしていたのだ。そのためありのままでよかったと安心できた自分がいた。私の性癖には何一つ刺さらないがこの手のキャラが好きなオタクは絶対いる。年下子犬系男子に需要がないはずがない。今は少し我儘な面もあるが今後の成長によっては王子様キャラも夢ではないかもしれない。そうなればぜひあっちゃんにも紹介してあげたい。


未だ会えずにいる友を思いながら私は静かに目を閉じた。





あっちゃんとの再会に備え、私は術式の練習に明け暮れていた。
戦線に立つことはなかったが回復役としては十分な働きをし、中学に上がる頃には二級呪術師の称号が与えられた。反転術式の場合は医学面での知識が必要になってくるのだが、これに関しては前世で視聴したは○らく細胞の知識が役立った。やはりアニメは神である。

そして直哉と言うキャラを受け入れた私はネタ集めにも力を入れていた。
直哉は夢女が好きそうなネタを唐突にぶっこんでくる。

例えば怪我をした直哉の傷を治した時のこと。私の治療を受けた直哉は徐に私の手を掴んだ。そしてその手を優しく撫でてこう言うのだ。
「姉さんの手は優しい人の手や。晴雲秋月、雪魄氷姿、それに別嬪さんやもん。姉さんは世界の何よりも美しいわぁ」
その言葉は一字一句違わずネタ帳に書き記した。

また二人で庭を散歩していて私が砂利に足を掬われ転びそうになった時のこと。直哉は私が声を上げるよりも先に腰を引き寄せ体を支えてくれた。身長は私よりも低いというのにそれはもう完璧な紳士の対応であった。
「俺がもう少し大きかったら抱き上げられてんけどかんにんな。そのかわり先に歩くさかい手は離さんといてや」
そうして当然のごとく私の手を取り安心させるかの如く微笑む。
無自覚に女を落していくタイプの男か。これは大いに参考になるとまたもネタ帳を開く。

そんなこんなでネタ帳は十冊目に突入した。あっちゃんへの手土産も用意できそうである。



中学を卒業したらいよいよ呪術高専に進学できる。しかし残念ながら通えるのは京都校の方だ。私としては東京校に行きたかったのだが当然直毘人が許してくれなかった。
ともあれ、確実にあっちゃんと再会できる日は近づいている。

戦線に立たぬとはいえ呪術界に足を突っ込んでいる私。目の前で人が死ぬのも見たことあったし呪霊に襲われ人でない異形になった人間も見た。それでも自分の役割を務め、ネタ集めも怠らず懸命に生きてきた。
だからだろうか、私はとても大切なことを失念していた。



新月の蒸し暑い夜だった。
その日は重症患者が運び込まれ私は夜中に呼び出しを受けていた。本来なら私にまで夜間の緊急依頼は来ないのだが呪術界は年中人手不足。加えて呪霊の活動が活発化する時期であったため私にも仕事が回ってきたのだ。

ようやく仕事を終え、皆が寝静まった廊下を一人歩く。禪院家の屋敷は立派だ。だからこそ日中は美しいその趣も夜だと途端と不気味になる。月のない夜はなおさらだ。
呪霊が視える身でありながら幽霊が出るのではないかと怖くなる。呪霊と幽霊は似て非なるもの。呪霊は祓えるが幽霊は祓えない。まぁ私はあくまでヒーラーなので呪具がなければ三級すら祓えないが…

自分の部屋へと歩いているとぬらりと先の曲がり角で影が動いた。思わず足を止める。この屋敷には蠅頭すらも抜けられない結界が張られている。だが確実に何かがいた。
さすがに見過ごすことはできない。というかその曲がり角を私も通らねばならぬのだ。
息を殺し、足音を立てぬよう近づいていく。静かに角を覗いてみるが何もいなかった。それでも警戒心は解かずに廊下を進んでいるとある臭いが鼻についた。

「血の臭い?きゃっ…!?」

足を止めたが最後、近くの戸が開きそこから伸びてきた手に捕まれる。大きな声を上げる前に口元を抑えられ部屋の中へと引きずり込まれた。
腕を振るうも後ろから体全体を拘束され身動きが取れない。まさかの触手プレイか?とネタ方向に思考が寄ったのはご愛嬌ということにしてほしい。

「お前この家の者か?女のクセに母屋住みなんざ、随分といいご身分だな」

心臓がどくどくと音を立てて動き出す。今まで直哉の言動できゅんきゅんしたことはあったがときめきはしなかった。何故なら直哉は私の弟であり、タイプでもなければ私の性癖には刺さらなかったからだ。

だが私を拘束しているこの男はどうだろうか。回された腕はやせてはいるが筋があり男らしい。私の性癖を撫でる低い声に話し方からもその横暴さが見受けられる。真夜中のエンカウント、そして出会い頭に羽交い締めにされるという夢女大好きシチュエーション。これこそ私が求めていたこと。そして彼は間違いなく私の押しである———

「伏黒甚爾…!?」
「伏黒……?」

ぷは、と口元だけの自由を確保しそう告げれば頭上で男の声がした。そして恐る恐る振り返る。それは恐怖からではなく本物に会えるという緊張からくるものだった。

「あ……」
「ア?」

あああああああ尊いっっっっ!!!!
前世の押し伏黒甚爾の登場である。
なぜ私は彼と言う存在を忘れていたのか。これではオタク失格である。転生したところからやり直したいくらいだ。今すぐ私を殺せ。

「お前誰だ?」

お得意の妄想により脳内で自分で自分をめった刺しにしていれば甚爾の声が降ってくる。顔を上げればその距離わずか五センチ。おっふ顔がいい。

「え、あ、わわわわわたひっ、私はっ…」

オタク特有のどもりを繰り出しつつも名前を伝える。きっとそれだけでは分からないだろうと直毘人の一人娘である事も伝えた。甚爾の顔が歪む。やはりここで直毘人の名は出さない方がよかったか…

「あぁ、あいつが溺愛してるっていう。確かに顔はまぁまぁだな」

転生特典に今日ほど感謝した日はない。そしてこの手のキャラの「まぁまぁ」は好感度高めのセリフなのだ。直哉のように率直に「可愛い」と言われるのではなく夢女フィルターを通してでないと意味が理解できないこの遠回しなセリフ——大好物だ。

「あ、ありがとうございます」
「拘束されながら礼を言うなんざ、お前も変わってるな」

はい、おもしれー女枠頂きました。
定番中の定番。n番煎じどころか一周回って最新トレンドに上がってくるおもしれー女枠頂きました。
甚爾の一挙一動が私の性癖をチクチクと刺激する。そのせいで心臓が爆速で動き呼吸も浅くなっていた。酸欠で今にも気を失いそうである。いや、ここで意識を失って甚爾に介抱されて朝チュンを迎えるのも悪くな———いや、R18展開はよろしくない。

一先ず落ち着こうと深呼吸をしたところで先ほど廊下で嗅いだものと同じ匂いがした。

「血の臭い…甚爾さん、もしかして怪我をされていませんか?」
「……あぁ」

甚爾に拘束を緩めてもらう。部屋が暗かったので机の上にある小さな灯りを付けた。そうして改めて彼を見ると腕の至る所に傷があり中には膿んでいるところもあった。治りきる前に次の怪我を負ったのであろう。加えて肌の色も青や赤黒く染まっていた。

甚爾の禪院家での扱いは文章としてサラッと説明があった程度である。しかし今まさにそれを目の当たりにし前世でワーキャー言っていた自分が恥ずかしくなった。これは、酷すぎる。

「治します」
「はぁ?お前に何が出来んだよ」
「反転術式持ちですので」

夜間の診療に当たり呪力も少なくなっていたが気力で術式を発動する。私にはこのくらいのことしかできない。

「おーすげぇ」
「痛むところはありませんか?」
「あぁ。こんなに体が軽いのは久しぶりだ」

手をぐっぱと動かして状態を確認している。
内臓の傷や神経の損傷まではまだ治せないが外傷と骨折であれば処置は可能だ。

「よかった。あの、他に私にできることはありませんか?」

転生した身であったからか、私は今までどこかこの世界を客観視していた。直哉のことを転生者だと思ったとき然り、自分で動こうとはせずに他人に任せようとしていた。
あっちゃんを探すのだって、もちろん会いたいという気持ちはあるのだが私は彼女に救ってほしかったのだ。原作で死んだキャラたちを、有象無象に殺されていく非呪術師たちを。
ヒーローを、ヒロインを、私はずっと待っていたのだ。

いま私の目の前にいる甚爾も原作では死ぬ。でも私は死んでほしくない。それはもちろん押しだからという理由もあるが、伏黒家が仲良く暮らす姿を見たいのだ。

「じゃあ食いもん持ってこい。厨にかっぱらいに行く途中だったんだよ」
「分かりました!」


転生して十四年。
令和の夢女はようやく物語の主人公として動き出したのだ。


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■女主人公
平成から令和の時代を生き抜いた夢女。
教育番組、土6時代、アニメ◯ズム、ニコ動、dアニと順調にステップアップをしアニメを見続けた学生時代。創作作品においては支部に出会うまでは森ページにお世話になっていた。名前を変換できるドリーム機能は神。偶にある[[#NAME]の誤表記により現実と夢を行き来した過去を持つ。
親友の布教によりあらゆる沼にハマり創作活動の手伝いをすることになる。今ではネタ帳が手放せない。
この度、じゅじゅの世界に転生したが積極的に関わろうとはせず来るべき日のためのネタを集めていた。直哉は可愛いし禪院家も意外と悪くないなと思い始めていたが推しの悲痛な姿を見て原作にメス入れようかなと思い始めている。ただ、この主人公は自分で積極的に動くタイプではないので正義のヒーローにはならないです。


■あっちゃん
主人公の親友。沼に引き込むつもりはなかったが漫画を勧めたら思いのほか主人公が食いついて来たので布教した。今では親友であり相棒。やや口が悪い。友達は本当に信頼できる子が数人いればいいかなという考えの持ち主。主人公とは仲がいいが互いに依存しているわけではない。登場はしていないがこの世界に転生はしている。

■禪院直哉
姉さん大好きっ子の天真爛漫な天使——ではなく中身は原作通りのクズ。年下子犬系男子(笑)姉が男の使用人と話をしていれば問答無用でそいつをクビにする。ツンデレではなくヤンデレでありシスコンである。

■禪院(伏黒)甚爾
こいつ(主人公)絶対俺に惚れたな、と思っている。大正解です。だからわざとそれっぽい事をして主人公で遊ぶようになる。恋愛感情よりは妹的な感じで好感度高め。夢女にだけ優しいタイプのヤンキー。