1度目は、入学初日。
クソデク以外顔を知った奴もいない教室で、そのデクもちんたらしていて一向に登校してこないからいじめる相手もおらずボーッとしていた。
そうしたら机に足を置くなだとかでクソメガネにいきなりいちゃもんつけられてイライラしていた時だ。
暇つぶしに喧嘩を買ってやろうとしたら、空気を読まず挨拶して来たのが苗字だった。
「はじめまして、これからよろしくお願いしーます」とだけ言ってぺこりと頭を下げた苗字は、ご丁寧に1人1人に挨拶してまわってたようだったが、名も名乗らずに一方的に一言伝えて後ろの席のやつらのところに行ってしまった。
変な女、というのが第一印象。
でもヘドロ事件でただ名前と顔だけ一方的に知れ渡っていた俺に、コソコソ色目で見るでもなく普通に話しかけてきた1人目が苗字だった。
そのあとホームルームの自己紹介で名前を知って、そこからは気がつけば苗字の姿を追う自分がいた。
教室に入れば毎日ご丁寧におはようと挨拶されたり、そんな会話とも言えないやりとりは幾度とあったが、直接きちんと会話をしたのは雄英が全寮制になった入寮初日の夜のこと。
クソモブ共と風呂を共にするなんて反吐がでるから、全員が終わった頃を見計らって風呂に入って、部屋に戻るため共有スペースを通り抜けようとしたら苗字が一人でテレビを見ていて。
気付いたら無意識に、何してんだ?と話しかけてた。
その日の苗字は、見たことがないくらい寂しそうな顔をしていたから。
そうしたら、俺に話しかけられたことにそんなにビックリしたのか、ただでさえでかい目を溢れそうなくらいかっぴらいて。
そのあとヘニャリと笑って、苗字は少しだけ自分のことを話だした。
高校からはバスでほど近くのところに実家があること
両親は最後まで入寮に反対していて、それでも最終的には苗字の夢を尊重して許可をしてくれたこと
しかしいざ入寮してみたらホームシックになってしまい母親に電話したこと
電話してしまったら余計に眠れなくなってしまったこと
高校生にもなって恥ずかしいよねぇと言って困ったように笑う顔を見て、勝手ながら守ってやりたいと思った。
とはいえ苗字も雄英ヒーロー科の生徒なわけで、充分恵まれた個性と才能があることは百も承知だ。
ヒーローとしてとかではなく、一人の女として。
苗字を守りたいと思った。
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