補習も終わってやっと寮に戻ったのは21時。
戦闘訓練で散々発散して気は晴れだが、さっきから腹の虫が鳴いている。
すぐに夜飯にしたかったのに、寮に戻って真っ先に半分野郎がキッチンのある方に足を伸ばしやがったから、仕方なしに先に風呂を済ませた。


半分野郎も飯を食い終えたであろう頃にキッチンに向かうと、よし、誰もいねえ。


疲れた身体にはやっぱり辛いもんに限る。
補習で遅くなっちまったから今日は帰りにコンビニで買った麻婆豆腐丼だけど。
自分の名前が書かれた調味料を冷蔵庫から取り出して、買ってきた飯に追いスパイスする。


「わあ、だいぶかけるね」
「っな、苗字?!」


誰もいないと思っていたからすっかり気が緩んでいた。
振り返るとそこには今日一日俺の頭に住み着いていた苗字が俺の飯を覗き込んでいる。


「爆豪くん、辛いの好きなの?すごいねえ、お弁当真っ赤だよ」
「…まあな。苗字は、辛いもの食うか?」
「いやーさっぱり!見ての通り甘党であります!」


ぷに、と効果音がなりそうな柔らかそうな頬を自分で摘んで見せる苗字。
俺よりずっと背が低くて小さくて、陶器みたいに真っ白い肌はやわらかそうで。


「そうか、趣味合わねえな」
「えーそんな!」


がびーん!と口に出してけたけた笑う苗字。
ああ、俺の馬鹿野郎。
そんな言葉を言いたいわけじゃないのに。
でも何て返したらいいのかわかんねえ。
こんな時、半分野郎だったらなんて言葉をかけるんだ。


「えーじゃあ、爆豪くんは甘い物はお嫌いですか?」
「俺は好き嫌いなんかしねぇ」
「お、さすが!」
「ていうか苗字はこんな時間に何してんだよ」
「私はですねーホットミルクをつくりにきたのですよー」


飲むとよく眠れるから、と言って冷蔵庫から牛乳を取り出してミルクパンにトクトクと注ぐ。


「…そうか」


もっと話したいのに、聞きたいことが山ほどあるはずなのに、俺の悪い口が余計なことを言ってしまいそうだから。
飯を持ってその場からくるっと背を向けた。