僕には週に1度楽しみがある。


毎週日曜日、貴重な休日は目覚まし時計をかけずに自然と差し込む日差しで目を覚まして、いつもの朝なら取り合いになる寮のシャワーを順番を待つことなく浴びたら、制服ではなく私服に袖を通してスマートフォンと財布をポケットに入れる。
普段は出ることのない学校の敷地外に足を延ばして近くのコンビニで最近気に入っているパンと猫缶を1つずつ購入する。
高台にある雄英に向かう途中、整備された坂道を少し横道に入ったら、ひらけた空き地の芝生の上に座り込む。


手にしたスマートフォンで時間を確認すると時刻は14:00に差し掛かろうとしている。
秋晴れの今日は気候もいい。
うん。きっと今日もここにあらわれるはずだ。
何の変哲もない空き地だけれど、ここは昼下がりの天使”達”が現れる僕にとっての天国なのだ。


さきほど買った猫缶のふたを開けて地面に置いてしばし待つ。
その間、一緒に買っておいたパンの袋を開けて口に運んで僕も昼食をとるとする。
いつも食堂で健康的な食事をとっているし、相澤先生に鍛えてもらっている効果を最大限に出すべく日頃から食べるものには気を遣っているけれど、たまにこうしてジャンクなものを食べたくなるのは年頃の高校生なのだから仕方がない。


不自然に味の濃い惣菜パンをむさぼりながら、眠たくなるようなあたたかい日差しに目を細めてうとうと微睡んでいるとうしろから小さくニャ、と声をかけられた。
どうやら一匹目の天使が現れたらしい。


「今日もよく来たね。元気にしてた?」
「にゃ」

足音も立てず器用にそこにあらわれたこの猫は学校が全寮制になる前に毎日登下校をしていた時からの付き合いだ。
ごはんをくれてやる代わりに相手をしてもらう仲である。
持ち前の”個性”のせいでなんだか人付き合いは心から楽しめないこともあり、今でもこうして定期的にこいつに会いに来て詰まった息を抜いてもらうのだ。


声をかけた小さな生き物は返事もそこそこに目の前の缶詰に一生懸命向き合っている。
今しばらくは構ってもらえそうにないと諦めて、自分もさっさと食事を済ませてしまおうと残り少なくなったパンに噛り付いた時だ。


「こんにちは〜」


気の抜けた高い声がして振り返ると、そこには1番待ち焦がれていた天使がへにゃりと笑みを浮かべて立っていた。


「苗字さん」
「心操くん、今日も早いねぇ」


口にしていたパンをごくりと一気に飲み下して彼女の挨拶に返事をすれば、ついつい寝過ごしてしまったよと困ったように笑う彼女につられて口元が緩む。


「仕方ないよ、ヒーロー科は忙しいからきっと疲れが溜ってるんだ」
「いやいや、どうにもお勉強の方があれでして…」


本当参っちゃうよ、と言って溜息を溢す彼女は昨夜はだいぶ遅くまで授業の復習に勤しんだらしい。
隣の隣のクラスに属する同級生である彼女は、普通科所属の僕とは違ってヒーロー科に所属している。
1-A組と1-C組
普通の学校なら何ら変哲なく聞こえるそのクラス分けが、僕らの通う雄英高校では全く異なる意味を成す。


「心操くんは最近どうかね」
「相澤先生もそろそろ真剣に考えてくれてるみたいだけど、自分的にはまだまだかな」
「相変わらずストイックだなあ」
「苗字さんや他のA組B組の人たちに比べたらスタートが遅いんだから、人一倍頑張らないと」