「にゃ〜ん」
「お、猫」


(ふふ、引っかかったな!)


1日の全カリキュラムがおわったら彼は毎日ここ、中庭に現れる。
4月に一目ぼれをしてから早数ヶ月、隙を狙って彼の動向を追っているうちに、ついにこのルーティーンを見つけ出したのだ!


入学式の日、彼を一目見たとき私に稲妻が走った。
無駄がない黒づくめのスタイリッシュなファッション(みんなには理解されないが私にはそう見える)
春の風のようになびいて爽やかさを演出するマフラー
難易度最上級のおしゃれな無造作ヘアー
そしてダンディズムを表現するお鬚
そう、彼の名は相澤消太。
その時の衝撃は今まで15年間生きてきた中で初めて味わう大きな衝撃だったのだ。


(これが、一目ぼれってやつ…!!)


男兄弟に囲まれて小さな頃からヒーローごっこばかりしてきた私は比較的早い段階で個性が発症して、そのころから絶対にヒーローになると決めていた。
でもヒーローって職業はどうしても男の人の方が活躍することが多くって。
女のヒーローはミッドナイトやマウントレディみたいにセクスィ〜でルックスもよくって、アイドルみたいじゃないとなかなか日の目を見ることができない。


それに気が付いた私は一時ヒーローを志すことを投げ出してしまいそうになったけど、やっぱり憧れはそう簡単に捨てられず。
それなら自分にできることを精一杯取り組んでヒーローを目指そうと日々鍛錬に励んできた。


同世代の周りの女の子たちがおしゃれをしたりお化粧を覚えたりする中、将来の夢のことだけを考えて日々を過ごしてきたのだ。
それはもう寝る間も惜しんでトレーニングと勉強をしていたから、中学生になってみんなが彼氏だなんだときゃぴきゃぴしてるのには全然ついていけなかったけれど、ヒーローになる私にはそんなことなど無関係だと思っていた。