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「それでこんな朝早くからこそこそ待ち伏せていたって訳ね 全く呆れてものが言えないわ」

「あっはは!あんた今がどういう状況か分かっててウチらにそんな口聞いてんの?」

時刻はまだ朝練が始まる前の早い時間帯。麗奈はコートの整備やその他朝練の用意の為部員達の誰よりも早く登校し、テニスコートへ向かおうとしている最中だった。

しかし廊下を歩いていた所、突然どこからともなく現れた女子の集団に行く手を阻まれ足を止めた。見たところざっと10人程度の女子達が敵意のこもった目で麗奈を睨みつけている。

何故彼女達がこんな朝早くに校内にいるのかというと、休み時間や昼、放課後はテニス部が常に隣にいる為接触できないからだそうだ。

その為わざわざ早朝から麗奈を待ち伏せしていたらしく、そんな行動力を目の当たりにした彼女は信じられない…とある意味感心しながら口を開いた。

「嫉妬に駆られた醜い雌猫共に囲まれてるわけよね 見ればわかるわ」

至って真面目そうな表情でそう言った麗奈にリーダー格らしき女子生徒の笑みが消える。

「あんたさぁ いい加減マジで調子に乗ってんじゃねえよ?」

「やだ怖い顔」

言いながらクスクスと笑う麗奈にリーダー格の女子生徒が怒りで顔を真っ赤にしながらバッと手を振り上げた。

振り下ろされる手の平があと少しで麗奈の頬を捉えようとした時だ。

「なっ…!!」

「これだから躾のなってない雌猫は困るわね。……一ついいことを教えてあげるわ」

「はぁ!?んなのいいから手を放せよ!」

「私ね こう見えて手を出してくる人間には容赦ないの。だから先に謝っておくわ」

「だからわけわかんねー事言ってじゃーーっ!!!」

パシン!パシン!パシン!パシンッという小気味好い音と共に麗奈を叩こうとしていた女子生徒がよろめいてその場に尻餅をついた。

突然の出来事にまだ状況が読めていない女子生徒は放心しながらもジンジンと痛む頬に手を当てる。その様子から彼女はまだ自分が往復ビンタをされたという事に気付いていないようだった。

「今回は手加減してあげたけど次はないわ。ーーでもそうね、それでもまだ文句があるならいつでもかかってきなさい?返り討ちにしてあげるから」

麗奈は花咲くような笑顔でそう言うと呆然とする女子達を残してその場を後にするのだった。

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「ねえ 柳。今のって一条さんだよね…?」

「ああ 一条だったな」

麗奈が去った後、偶然その場に居合わせていた幸村と柳は少々驚き気味に顔を見合わせた。

「あの人数に囲まれても物怖じせず寧ろやり返すなんて……フフッ驚いたな」

「同感だ 振り下ろされた腕を掴み往復ビンタで応戦とは想像すらしていなかった」

「あははっ 確かに。平手打ちじゃなくて往復ビンタって所がまた面白いよね」

「笑い事じゃないぞ精市。……しかし俺達が出るまでもなかったな」

「仕方ないだろ?まさかあそこで往復ビンタが出てくるなんて思わなかったんだ」

柳は上品に笑う幸村を見ながら先程の事を思い出す。見ていて拍手を送りたくなるほど見事な往復ビンタだった。

赤也や丸井が見ていたら今頃横で興奮している所だろう。柳はこの一件で改めてまだまだ麗奈に関するデータが足りないと思い知らされるのであった。


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