次の日の朝。
いつも通り礫を起こすと、礫は俺の前で私服に着替え始めた。

「だから、礫!!俺の前で堂々と着替えるな!!」
「え?あぁ…いい加減慣れればいいのに」
「慣れるわけないだろ!!たく…」

紅くなっているであろう、顔を隠そうと後ろを向くと背中に何かがくっつく。
あろうことか、礫が抱き着いてきたのだ…

「なっおい!!」
「頑張ってくるから」
「…あぁ、頑張れよ」

向きを変えて、礫の頭を撫でると胸元で光るリングが見える。

「…そのネックレスつけていくのか?」
「当然!!私の大切なお守りだからね」
「あっそ…なんかあったら電話しろ。じゃあ、いってらっしゃい」

男の服を完璧に着こなす礫に少し苦笑する。

「なんか、日向サンに送られるって新鮮だ。じゃ、行ってきます!!」

笑顔で家を出ていく礫を見送って、ため息をつく。

「もう、そんなところまで行くのか…」

礫と出会って、半年もたっていないだろう。
それは半年も音楽に触れていないということ…

「社長は礫の才能に気づいてたのか?」

ただ、気を失っていただけの少女にそんなものがあるなんて、気付くわけないか。
だが、もし本当にそうだったのだとしたらやはり、恐ろし人だと思う。


****


早乙女さんの大きな車に乗って都内のスタジオに行く。
そこで、ドラムやギターの合わせた曲を聞いて音を確認する。

「はい、大丈夫です」
「それじゃあ、歌を合わせます。入ってください」

個室に入ってヘッドホンをつける。
この感覚ももう慣れた。
いつも通り歌を歌って、自分で聞く。
気に入らないところを直して…を繰り返して何とか曲が出来た。

「お疲れ様でした」
「あ、ちょっと待ってくれる?」
「あ、はい」

スタッフさん呼び止められて、足を止めると学校に戻っていた早乙女さんも入ってきた。

「今度、HAYATOの出てるニュースにでないかい?」
「ソーリーソーリー。朱利は顔出しNGなのよー」
「すいません。俺は歌だけでやっていくつもりなので…」

そう言って、最初の車に乗り込む。

「ユーがあんなことを言うとは思ってなかったデース」
「俺は学生だから。それに、みんな頑張ってんのに俺だけってなんかヤダから…」
「卒業したら、顔だしOK?」
「まぁ、その時考えるよ」

CMは5月か6月から流れるとだけ伝えられて、私は家に帰った。

「ただいまー」
「お帰り、礫。どうだった?」
「楽しかった、かな…5月か6月から使うから聞いてね、だってさ」

日向サンはよかったなと私の頭を撫でる。
…凄く嬉しいけど…どこか、モヤモヤするのはなんでだろう?


****


朱利としてデビューしてからトキヤと過ごすことが多くなった。
なんとなくほかのみんなとは心の中で線引きされてしまった気分だったりする。

季節も変わり、夏服になったが…

私は相変わらず長そでのパーカーを着ていた。
半袖を着ると女だとばれやすいからね…

首には相変わらず日向サンがくれたネックレスがかかってる。

「そういえばさ、礫。そのネックレスいつもつけてるよな」
「ん?あぁ…これね…大切なものだから」
「あ、あれか!!かか彼女に貰ったんじゃ…」
「おや、礫には彼女がいるのかい?」
「初耳ですね」

いつの間にか2人増えた。

「彼女じゃないよ。これ、くれたのは…」
「怪しいねぇ」
「恋愛禁止じゃん?ここ。まぁ恋人いたことはあるけどね」
「「「ある(のか/んですか/のかい)!!?」」」

…何で3人とも驚いてんだ?
まぁ、まだ16歳だけど…それくらいするだろ…

「どんな奴!!?もしかして、日向先生!!?」
「違うよ。日向サンに出会う前に出会った人。てか、日向サン男じゃん」
「礫のそういう話初めて聞きましたね…」
「ん?わざわざ話すようなことじゃないからな」

胸元のリングを指先で弄ぶ。

「これは、入学お祝いだから…深い意味はないよ」
「誰から、貰ったんですか?」
「ん?それは、「おら、席につけー授業始めるぞ」…内緒」

これ言ったら、日向サン大変なことになるでしょ…


****


指先で俺があげたリングを弄る礫。
つーか、その顔反則だろ?

少し照れくさそうに微笑むその表情をついじっと見ていた。
視線を上げた礫がふわりと微笑む。

「っ!!…授業、を始める…」

…俺は随分と…アイツにハマってるみたいだな…

紅くなってるであろう顔を背けて、授業を始めた。


****


恋人か…そういえば…あの人に貰ったピアス…
携帯のストラップに付けてたよな?

授業中だがポケットに入ってる携帯のストラップを見る。

「やっぱり、ついてる。」

週末、穴開けてつけようかな…
そこについてるピアスは2つの穴を鎖で繋いであって、小さな十字架や小さな石がついている。

私は休み時間、翔の所に行く。

「なぁ、翔」
「なんだ?」
「ピアス、穴開けるの痛いか?」
「いや、そこまで痛くねェけど…開けるのか?」

私が頷くと翔は耳に触れた。
…顔が近い

「まぁ、開けられると思うぜ?」
「ん、よかった。てか、顔近い」
「え?わっ!!?ご、ごめん!!!」

真っ赤になった彼に私は笑いが堪えられなかった。

「女じゃないのに、その態度…おかしくね?」
「い、いや!!だって…礫顔綺麗だし…普通の女より…って、わーーーなんでもねぇ!!今の忘れろ!!」
「はいはい。じゃあさ、忘れてあげる代わりに…週末買い物付き合って」
「は?」
「ピアッサー買いたいんだよね、2つ。あと洋服欲しいし」

まぁ、トキヤでもいいんだけど…
あんまり人ごみ好きそうじゃないし…

「いいぜ、俺でよければ!!」
「ん、サンキュ」



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