空を見下ろす。
あぁ、落ちてるんだ。

5階建の校舎の屋上から落ちて生きていれるわけがないと諦めて私は目を閉じた。
願わくば、アナタのいるところへ……

自然と私は詩を口ずさんでいた
アナタが私にくれた詩を……

****

私は、死んだ。多分。

じゃあここは、どこ?
ソファから体を起こすと愛故にと書かれた額縁が視界に入る。

「あ、目が覚めたのね?シャイニー」

目の前の女性は一体誰?
見たことない。
私の知っている人では、ないみたいだ。

「目が覚めましたネー。ミーはシャイニング早乙女。ユーの名前は?」
「……御幸」
「Mr.御幸。ユーアイドルになりませんか?」

…アイドル?
アイドルってテレビに出て笑顔振りまく奴?

「嫌」
「…作曲家は?」
「音譜読めない」

早乙女さんが黙りこんだ。
さっき見た女性と知らない男性は溜息をつく。

「ユーに家族はいますカー?」
「いません」
「ユーのことは、拾いマシター」
「それで?」
「ユーの帰る家はどこですカー?」

…帰る家?
私はポケットにある携帯を開く。
ネットに繋いで、地図を出そうとすると見つかりませんの文字。

…あれ?確かに住所は間違っていないのに…
私の家は消えた。
…どうして?

「ない」
「……そんなユーにビックチャンスをあげまショウ!!ミーの学校でアイドルか作曲家を目指すナラバ、ユーの生活を保障してあげマース」
「いいです、別に」

私の言葉に3人がえ?と驚いた声を出した。

「Mr.御幸。ユー話きいてマシタ?」
「はい」
「身寄りのないユーをミーが救ってあげると言ったんですよ?」
「はい、先ほど言っていましたね。ですが、私はお断りしました」

早乙女さんが固まった。

「え?貴方、どうするの?家もないんでしょ?」
「はい。けど、別に…」

生きたいわけじゃない。
アナタがいないから…

「むむむっ!!!ユーに選択肢をあげます。死ぬか、この学園で生きるか。どちらにしマスカー?」
「所長!!それ、流石に酷いだろ!!」

してやったりという早乙女さんと慌てている男性。

一つの仮定でしかないが、死んだ私は別の世界に来てしまったのかもしれない。
消えた私の家…
電話帳に入ってる電話番号にかけても全て電子音が虚しく鳴り響くだけだった。
ここが、死後の世界…とは思えない。
だって、選択肢に死があるんだから…
ここに、アナタはいますか?

「さぁ、どっち?」

ニヤリと早乙女さんは笑った。

ここに、アナタがいる確率は低いだろう。
いたとしても、出会えるかだってわからない。
もし出会えても、アナタが私の知っているアナタである確証なんてない。
それなら、

「死を選びます」
「デスヨネー………えっ!!?」
「「「えええぇぇぇぇ!!?」」」

3人が、驚いたように叫んだ。

「お、お前わかってるのか!!?死ぬんだぞ??お前、自分の命を何だと思ってるんだよ!!」

男性が私の前に来て、両肩を掴んで前後に揺らす。
アナタが隣にいないなら、生きる意味なんてない。

「この命に価値も意味も、ありません」
「ふざけんなっ!!なんで、自分の命をそんな風に言えるんだよ!!お前にだって大切なもんがあるだろ」
「ありません」

私は彼の手を払う。

「…早乙女さんの言われた通り、私は死にます。それが、私の選んだ答えです」
「ちょっと待て!!俺は認めない。俺はお前を死なせるつもりはない。社長!!俺がこいつを引き取ります。それで、この学園に通えるように…育てます。」
「私も龍也に賛成。手伝うからね」
「おう、サンキュ。林檎」

…勝手に話が進んでる。

「ワカリマシター。龍也サンに任せまショウ!!アイドルか作曲家になれるように育てちゃってください」
「あぁ。行くぞ」
「あの、ちょっと!!」

龍也さん?が私の腕を引いてその部屋を出た。

「お前は、俺が育てる。音譜も読めるようにする。楽器も弾けるようにする。歌も教える」
「……貴方は勝手な人ですね」
「勝手だろうが、関係ねェ。死のうとしてる奴を放っておけるような人間じゃねぇんだよ」

随分と、勝手な人だ。
けど、きっと凄く真っ直ぐな人。

連れてこられたのは、多分彼の部屋。

「俺の部屋だ。お前はここに住め。…まず、風呂入って来い。お前が倒れてたのは公園だったし…」
「……はい」


****


御幸と名乗った少年は随分と冷めた瞳をしている。
彼の瞳には多分何も映ってない。
どこか、諦めたような彼をどうしても放ってけなかった。

「アイツが着れそうな服…あったか?」

タンスを漁って、何とか着れそうなサイズの服を見つける。

「おい上がったらこれ着とけよ」

脱衣所にそれを持っていくと御幸が浴室のドアを開けた。

「…わざわざ、どうも」
「……え?」

湯気の隙間から見えた、御幸の体に俺は固まった。

「お、お前!!!女!!!!????」
「そうですけど…何か?」

俺は勢いよく脱衣所のドアを閉じる。

「お前、女なら最初に言えよ!!」
「…勘違いしてるだろうな、とは思いましたけど…わざわざ指摘するのも億劫でした」
「はぁ…まぁ、いい。それ着たら出て来い」

女、だったのか…
つーか、女が俺みたいなのと一緒に住んでも平気か?
…林檎のところに預けるか…て、アイツも男だ!!!

まぁ…俺が一番安心か…多分…

「上がりました」
「おう。まぁ、服は少しでかいな…」
「…別に……」

御幸は目を逸らした。

「コーヒー飲めるか?」
「はい」

ソファに座った御幸の前にコーヒーを置く。

「まず、俺は日向龍也。早乙女学園に教師で、現役のアイドルだ。お前は?」
「…御幸礫。性別は、さっき見た通り女です」

めんどくさそうにそう言った御幸は砂糖も入れずにコーヒーを飲んだ。

「御幸には、入試までにいろんなことを学んでもらう。強制だ」
「……そう。強制なら、仕方ないですね。ただ、一つ」
「なんだ?」
「私は、男として生きたい。どうせ、女には見えないようだし…もう、同じことを繰り返したくない」

…変わった奴だな…ホントに…

「わかった、所長に伝えておく。明日にでも、服買いに行くか…俺はオフだし」
「…なんでもいいです、興味ないですし」
「興味ないって、お前なぁ…」



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